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映画・演劇のレビュー

『BUDDHA2 手塚治虫 のブッダ-終わりなき旅』

2014-02-22 08:29:04 | 映画
 手塚治虫の傑作漫画の映画化シリーズの第2作だ。一作目を見たとき、こんな古いタイプの漫画映画を今の時代に作って、大丈夫か、と心配するほど、わが道を行くタイプの映画で、衝撃的だったけど、今回、ちゃんと続編ができてうれしかった。あれだけ、こけてしまったのだから、もう続きはないかも、と思った。今回も前回に輪をかけたほど、客の入りはよくない。まるでセールスの施しようにないような企画なのだから仕方ない。子供向けでも大人対象でもなく、ターゲットがわからない。というか、ない。当然僕が見た回は、観客は5人だった。レディース・デーにもかかららず、女性は2人。梅田の旗艦館なのに。きっとほかの劇場も推して知るべし、状態だろう。

 だが、映画は堂々たる作品で、85分という上映時間にもかかわらず、見事にまとまっている。この後の完結編がとても、楽しみな作品になっていた。冗長な大作ではなく、漫画映画としての矜持をしっかり厳守して、ハラハラドキドキしながらも、ゆっくり楽しめる作品に仕上がった。監督が代わっても大丈夫。これは作家主義の映画ではなく、職人芸なのだ。東映アニメーションとしての仕事なのである。

 シッダールタ(声は吉岡秀隆)が出家するまでの第1部を受けて、今回は彼の修行の日々を描く冒険篇である。そして最後は彼が解脱してブッダ(悟りを開いたもの)となるまで。話を必要以上に広げることなく、悠々たるタッチで、必要なことを漏らすことなく描いていく。だから、見ていて安心できる。特別な才気は感じられないけど、先にも書いたようにこれは職人の仕事なのだ。ちゃんと伝える部分さえ伝えたなら、もともと手塚治虫の原作がよくできているのだから、それだけで十分なのだ。

 きっと、昔初めて僕がこの漫画を読んだ時のような感想を、初めてこれに触れた人たちも感じてもらえるのではないか。手塚漫画の映画化としてはこのアプローチで正解だ。こうなると、一刻も早く完結編の完成を待つしかあるまい。(東映は威信を懸けて、ちゃんと、作ってくださいね)

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