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映画・演劇のレビュー

『希望の灯り』

2019-05-04 19:52:53 | 映画

GWに公開されている映画で一番見たいと思っていた映画をようやく見た。早く見たかったのだけど時間の関係で後回しになっていた。この10連休は10日連続で仕事なので、何もできない。さすがに1日は休みを入れなくては連休後の仕事にも影響が出るのでは、と思い、この日は生徒にお願いして付き添いなしで試合に行ってもらった。授業はないけど、クラブはある。しかも、連日試合だ。生徒もたぶん体がもたない。まぁ、生徒は自分の試合じゃない日は休みもあるけど、僕たちはそうじゃない。

その日、少しのんびりして、夕方からこの映画を見に行った。(母親の介護があるから、いつも通り、朝から食事を作り食べさせて、でも、久しぶりの休日なので丁寧に掃除とかもしたりして散歩や買い物にも連れていき、それだけで半日は過ぎていった)期待通りのすごくいい映画だった。ただお客さんが異常に少ない。僕の見た回は10人ほどだった。連休中にもかかわらず、である。否、連休中だからかもしれない。どれほどいい映画でも、こんなにも暗い映画を好き好んで見ないのかもしれない。

春の大会(インターハイ予選)が連続で入っている。試合会場は連日2か所で、同時並行して学校での練習も保証してあげなくてはならないから体はひとつでは足りない。もうひとりの顧問の先生やほかのクラブで出てきている先生にも頼んで10日連続をなんとか乗り切る。でも最初の団体戦はまだいいのだが、5月1日からスタートした個人戦がきつい。今の高校はあまり強くないから今のチームは1部の試合には参加してないのでまだましだが、前任校の時はこの比ではなかった。

まぁ、そんなこんなの1日の休養だったのだ。ほんとうにいい映画だった。心にしみてくる。でも、こんなにも寂しい映画もない。ライプチッヒ郊外にある巨大スーパーマーケットを舞台にして、そこで働く人たちの哀歓を綴る。27歳の新人がここに入ってくる。在庫管理の仕事に就く。彼がフォークリフトを自在に操りここで生きていけるようになるまでの物語だ。

何を考えているのか、わからない無口な男。口下手でうまくしゃべれないのか、しゃべる気がないのか。それすらわからない。ボイスオーバーで彼の心の声が語られるけど、周囲の人たちとの会話は、やばいくらいにない。そんな彼を周囲の人たち(職場の同僚)は優しく見守る。基本的には、彼らの優しさに触れて明るさを取り戻し、元気になっていく、というよくあるハートウォーミングのパターンなのだが、なんか微妙に違う。

彼の無表情は2時間の映画中一貫していて、変わることはない。試用期間から卒業して一応正社員になるのだが、それだってめでたしめでたしというわけではない。生活の安泰とか、それが映画の到達点になるわけではない。彼女との関係だって進展しないし、彼の指導に当たっていた先輩は自殺してしまうし、何もいいことなんかない。だけど、ほんの少し、この瞬間は幸せだなと思う。この穏やかな一時を大切に思う。そんな気分にさせられるラストシーンは素敵だ。

この先、何もいいことなんかないかもしれないけど、それはそれで仕方のないことだ。ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一されて30年近くの歳月が経つ。世の中はよくなったか、といわれると肯けない。この旧東ドイツの巨大スーパーマーケットのがらんとした暗さが象徴するもの。映画の2時間5分、スタンダードサイズのスクリーンの中にはずっと明るい日差しは射さない。薄暗いマーケットの中からほとんど出ないからだ。だけど、時々挿入される外の風景だってどんよりとしている。彼らがここを出るときは夜中だ。家に帰って目覚めるとまた仕事に行くだけ。ずっとスーパーのバックヤードにいる。でも、そこで休憩のためコーヒーを飲む時間はホッとする。

やがて、彼はそこで波の音を聴くようになる。(映画は最初から波の音をさせていたけど)静かな夜中のバックヤードでフォークリフトを操り、翌日の準備をする。心の安らぎを感じる。自分はここにいていいのだ、と思う。そんな瞬間にたどりついたとき映画は終わる。

映画が終わり、劇場を出たとき。なんだか幸せな気分だった。夜の闇の中で心が温かくなる。明日からの仕事もがんばろうと思う。そんな気分のさせられる。GWはまだ3日続く。

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