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映画・演劇のレビュー

角田光代 井上荒野 森絵都 江國香織『チーズと塩と豆と』

2010-11-29 22:47:23 | その他
食をテーマにした短編集。いずれも舞台はヨーロッパの田舎の村で、日本人は一切出てこないという条件のもと、書かれてある。この「土地」と「食べ物」という2つの条件は、作品にとって大きなくくりとなる。人が生きていく上で一番本質的なものであり、もちろん一番大切なものでもある。そこからすべてがスタートすると言っても過言ではない。だから、それは縛りではなくそれがあるからこれらの作品は生き生きとしたものになった。

今という時代を代表する4人の女流作家による競作である。いずれの作品も彼女たちの持ち味がとてもよく出ている。ポルトガルの片田舎を舞台にした江國香織『アレンテージョ』は、男同士のカップルのバカンスを淡いタッチで綴る。フランス西端の半島を舞台にした森絵都『ブレノワール』は母と息子の葛藤を重いタッチで見せる。

井上荒野はイタリアだ。年の離れた夫を亡くした女性のひとりで生きる日々を描き、角田光代『神々の庭』はスペイン。母を亡くした女性が田舎を出て都会で暮らし、お金をためては世界中を旅する。やがてNGO団体に入り、世界各地の紛争地に行き、そこでボランティアとして、食事を作る。やがて彼女は知る。母が死ぬとき、父たちがなぜ、食べるという行為を大切にしたのかを。(あれっ、森絵都と角田光代の作品がなんだかごっちゃになってる気が。まぁ、いいかぁ)

 いずれの話も同じテーマのバリエーションだ。描こうとする内容まで4つとも共通している。食べて、恋をして、生きる。それこそが、人生だ。ライアン・マーフィーの『食べて、祈って、恋をして』という映画を見たときの不満は、この小説によって解消された。あの映画はこの小説のように作られるべきだったのである。

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