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映画・演劇のレビュー

野中柊『昼咲月見草』

2010-11-28 21:25:35 | その他
 5つの短編連作。花の名前をタイトルに冠した。いずれも30代の女性の話。「あんまり好きで。好きだから、ひとりぼっちになってしまう。」という帯のコピーがなんとも秀逸。まさにそんな気分が描かれてある。最初の3つが好き。でも、だんだんつまらなくなる。4つ目からタイトルロールの5つ目はなんだか狙い過ぎているようで、そこが鼻につく。家出した妻からのメールの話になる『昼咲月見草』は、とぼけた感じが面白いとも言えるのだが、そこまでのさりげなさが、気に行っていただけにやはりこれではあざとい。

 銀杏をむきながら話す2人の女たち。ただそれだけなのに、なんとも愛おしい気分にさせられる『銀杏』。友だちが結婚の報告をしに来た。でも、そんなことよりただいつもと同じように取りとめもないことを話す2人。話しながら、恋人のことを思い出す。つい最近、別れしまった。ぎんなんを煎る。剥く。食べる。これは友情の物語なんだ、と思うとなんだか胸が熱くなる。こんな風にしてお互いを受けとめれたなら、と思う。

 娘のピアノの先生との不倫を描く『椿』。これも、なんだか最初から諦めているようなところがいい。好きになる、ということを、こんな風に描けるんだ、と思った。さらには、大好きな叔母さんのもとを訪ねる『羽衣草』。母の11歳下の妹である彼女は、自分にとって歳の離れた姉のような存在。今、30代の後半の達した自分にとって50になる彼女は自分のこれからの姿を投影できる存在。きっと自分も叔母さんのような生き方をしてしまう、だろう。でも、それは悪くはないことなのだ、と思う。ひとりで生きることも。

 ここまではとても快調だった。でも、ページ数は1作ごとにほんの少しずつ長くなり、その度に少しずつつまらなくなる。なんでだ? と、言うことで、4作目の『欅』には乗れなかった。叔母さんの死。その葬儀に出席した従兄姉たちと語るあの頃のこと。子どもの頃の夏休み。ここで過ごした日々の思い出が甦ってくる。思いだされるいくつもの夏の日々。この海辺での思い出。話自体は悪くはないのだが、それまでの3作とはタッチが異なる。これはあまりにありきたり。

 こういう小説って本当に微妙だ。描かれる気分と、今の自分の気分が合致したなら、とてもいい感じで身体に入ってくるのだが、そうじゃなければ、乗り切れない。もちろんそんな気分だけではないことは確かなのだけれど。

 

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