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映画・演劇のレビュー

『シングストリート 未来へのうた』

2020-03-26 12:05:24 | 映画

元気の出る映画が見たかった。音楽があればそれだけで生きていける、これはそんな高校生たちの群像劇だ。好きになった女の子に取り入るため、バンドを組む、なんていうベタの話なのだけど、それだけではない。彼らはまず、音楽が好きだ。女の子は後づけ。初めに音楽ありき。転校してきた学校でイジメにあう。これもまぁ、よくあるパターン。だけど、彼には音楽がある。そして、仲間がいる。もう書いていて恥ずかしくなるような設定だ。だけど、映画がそこから想像させるようなベタベタな映画にはならない。

1985年、大不況下のダブリン。14、5歳の少年たち。彼らがコピーバンドではなく、正々堂々とオリジナル曲で勝負する。カッコいいミュージックビデオも作る。もちろんビデオのヒロインには大好きな少女を迎える。お話はそこから始まったのだから、当然だ。彼女に「僕のバンドのミュージックビデオに出てくれないか?」と声をかけるところから映画は本格的に動き出す。しかも、彼はそのあとでバンドのメンバーを探すのである。あり得ない展開だ。でも、彼はどんどん話を進める。仲間が集まり、思い通りに動き出す。そんな簡単に事は運ばないよ、というような突っ込みは入れる暇もない。あれよ、あれよという間にどんどんお話は展開していく。夢のような展開だ。だけど、それが嘘くさくない。そんなこともあるのだろう、と納得させるのだ。ラストは彼ら二人(もちろん、主人公の彼と、その彼女だ!)の乗る小さな船でロンドンを目指す。

こんなにも荒唐無稽なお話なのに、実にここちよく受け止められる。それっていったい何なのだろうか。不思議だ。だけど、それはきっと、作り手が彼らを信じているからだろう。夢はかなう、という安直な映画ではない。これは夢見る力を信じる映画なのだ。子供の頃『小さな恋のメロディ』を見たときのように、十分大人になった今、この映画を信じた。『はじまりのうた」『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督の自伝的作品。主人公の少年は彼自身の夢だ。


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