習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

2019-07-10 20:27:00 | 映画

先週の木曜、テアトル梅田の最終上映で見に行った。満席で立ち見になっていた。さすがに3時間半の立ち見は無理、と思ったが、わざわざ時間休を取って来たので、それでもいいや、と思い劇場に入る。それにしてもよく入っている。こんな地味な映画にも人が集まるのか、と意外な気分。それだけではない。まるで予想した映画とは違うので、少し戸惑うことになる。

確かにこの図書館の舞台裏は描かれるけど、僕が見たかったものとはこれは少し違う。確かにこれは「世界でもっとも有名な図書館」の日々を描いたスケッチであり、それは図書館とは何なのか、ということを問いかけるものでもある。そして、この図書館で働く人たちの顔の見えるドキュメントでもある。でも、何かが違う。そんなこんなで

多面的にこの図書館の日常を捉えた映画を期待した。今の時代図書は時代遅れのものになりつつある。電子図書の台頭の中、それでも紙に図書の魅力とか必要性とそんなことのも言及するような映画なのか、と期待したけど、それは僕の勝手な想像でしかない。

目にした映画はまるで思い描いたものとは別物で、その裏切りはそれはそれで心地よい。ここにはあまり本は出てこない。本と触れ合うことの喜びではなく、この図書館の意義やありかたが描かれる。当たり前の話だ。これはあくまでも「ニューヨーク公共図書館」の映画なのだから。ニューヨーク公共図書館に象徴させて本の魅力を語りたいわけではない。一般論としての図書館を描くわけでもない。ここで人たちは図書と出会うのではなく、(もちろん、図書とも出会うけど)人と出会う。さまざまな人たちによる講演会やイベントが催される。映画はそれを丹念に追いかける。運営に関する会議にもカメラは入る。確かに興味深い。でも(少なくとも)僕はここだけの特別を見たかったわけではない。なんか終始乗り切らない違和感が残る。

ここにはドラマがない。ドキュメンタリーだからそれでいいのかもしれない。でも、なんだかもの足りないのだ。僕は図書館が好きだ。旅に出ると大きな図書館から小さな図書館までいろんな図書館を訪れる。パリでも、高雄でも(この2つの街の図書館は凄い)時間の許す限り図書館で過ごした。何をしに行ってるのか、と言われそうなくらいに。でも、それが有名な観光地巡りなんかより楽しい。図書館にはそれぞれそこにしかないドラマがある。この映画はそんな僕の感傷とは当然無縁だ。でも、それが僕にはなんだか寂しい。図書館を旅する映画だなんて、どれだけ素敵なことだろうか、とこの映画を見る前には妄想してしまったのがいけなかった。凄く面白い映画だという事は認める。そして確かに凄い図書館だ。立派な図書館だ。でも、なんだか気後れしてしまう。僕にはこの図書館は敷居が高い。

図書館はただ本を貸すだけの場所でいい。まずここで本と出会う。本と向きあう。そのための場所でいい。いろんな機能を持つ施設でなくていい。そんな志の低い人である僕にはこの立派さはしんどい。


コメント   この記事についてブログを書く
« 『ガラスの城の約束』 | トップ | 『COLD WAR あの歌、2つの心』 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画」カテゴリの最新記事