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映画・演劇のレビュー

超人予備校『ねこすもす』

2018-10-21 20:04:56 | 演劇

とても気持ちのいいファンタジーだった。今回は「猫」を巡るお話だ。猫はふたつの世界を行き来出来る存在でこの世の中には表と裏がありその両者は相似形を成している。その裏の世界から表の世界へとやってきてしまった男を巡るお話。たまたま乗ったタクシーに誘われて(運転手は亀)竜宮城(キャバレーかなんか)に行ってしまい、酒に酔って記憶をなくし、家に帰ったら、そこはまるで同じような環境の別世界の我が家でもうひとりの自分が猫たちと暮らしている。そんなところから始まる。白木原一仁演じるこの男の話を一応中心にして、犬のおまわりさんや、様々な猫たちのお話が描かれる。

ふたつの世界を行き来する猫たちと、そうはいかない不便な人間たち。彼らの右往左往するさまをほのぼのしたタッチで描いていく。自由な猫たちと不自由な人間たちの対比。表世界と裏世界の往還。表裏と言いつつも別にどちらがどうとかそういう話ではないようだ。人間にはこのもうひとつの世界へのトンネルを抜けることはできない。だけど、たまたま彼は向こう側に行ってしまう。そして、なかなか簡単には帰ってくることができない。

今生きている世界からもうひとつの世界への越境を描くお話なんか今までも数えきれないくらいある。この芝居が斬新なわけではない。だけど、それを描く魔人ハンターミツルギの、このなんともゆる~いタッチはなんだかとっても新鮮だ。このなんでもない、たわいもないお話が、こんなにも心地よい。なんだか気持ちのいいまどろみの世界をたゆたう気分で2時間弱の芝居を最後まで見ることになる。お話に寄り掛からないのが彼の良さだろう。お話はとりあえず用意しただけ。そんなことより、ネコたちとヒトたちのじゃれあうような小さなお話のひとつひとつに耳を傾けよう。

最後でむこうの世界から電車(いつもの通勤電車と変わらない。だけど、誰もそこには乗っていない)に乗って帰ってくる男の姿を捉えたエピソードがなんだか胸に迫る。また、いつもの日常に戻ってくる。でも、それでいい。アリスが不思議の国に行ったようにこの男もまたそんな感じの旅をしてきた。それだけ。これはたいそうなお話ではないのだ。ちょっとした夢のようなお話。

コスモス畑を電車の窓からみつめるシーンがいい。あんなにもきれいなのに匂いがしない。あれは現実ではない。夢の終わりの風景がなんだか切ない。

 

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