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映画・演劇のレビュー

劇団太陽族『トリビュート』

2018-11-02 20:57:58 | 演劇

 

「4つの楽曲から着想する短編集」というサブタイトルを敢えてつける。故意に作品を小さなものとして提示しようとした。上演時間も80分を予定すると最初の段階で説明している。なのに三田村さんが出てきて延々と前説をする。故意にしているのは歴然だ。「客演の自分がなんで前説なんかしなくてはならないのか」とか、作者の(岩﨑さんです)の悪口(?)をだらだらと言うとか。なかなか芝居に入らせない。この作品が従来のタッチから逸脱して、エッセイ風にスタートさせるための仕掛けなのだろうが、なかなか手が込んでいる。

 

ビートルズの楽曲をタイトルにして(もちろん楽曲も使用する)20分ほどの小さなお話が綴られる。4つの物語がひとつに繋がっていき平成の30年間を総括する。3話目を無言劇として地下鉄サリン事件を描く。実行から死刑になるまで。でも、ここがこの作品のクライマックスではない。

 

前半の2つは「淀川ビートルズ」(というバンド)のメンバーのその後を描く1話。95年に事故に遭って植物人間になったジョンが2015年に死んでから3年。あの頃のままで(32歳のまま)再びみんなの前に帰ってくる。50代になったメンバーたちが彼を迎える。自分たちがビートルズだった頃。

 

2話は3姉妹のお話。失踪した父親、残された3姉妹と母親、母の死から3年。家を売ってここから出て行く。姉妹はバラバラになる。

 

この2つの話とサリン事件を経て、最後のエピソードに至る。夜明け前、5つの新聞社が集まり、その日配達する朝刊の交換会をする。平成が終わった朝のお話だ。

バラバラの4話が作為的に、かつ象徴的に、さまざまなものを提示する。実に刺激的で実験的な芝居なのだ。

さりげなくいろんな符合がなされるように作られてある。95年を中心にして平成という時代がなんであったのかを考察する。しかし、そこに太陽族の旗揚げから36年という時代も重ねる。個人的なお話と、この国全体のこと。それを「ビートルズ」というパッケージングでまとめる。岩崎さんの個人的な問題をこの国や社会の問題として描く。20代から50代へと突入して落日を迎える悲哀のもと、平成を総括しうるか、それが本作の大きな課題で、それをどこにでもある小さなお話として提示する。庶民目線で時代を討つ。岩崎さんの新境地、とも言える作品。

 

 

 

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