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映画・演劇のレビュー

本上百貨店『キラキラ』

2011-12-14 23:31:08 | 演劇
 一見すると、ハートウォーミングのように見える。『めぞん一刻』みたいなアパート、その管理人さんと住人たちのお話で、ここは賄い付きだ。管理人は女子高校生で、彼女の母親が男と駆け落ちしてしまったので、彼女がここの人たちの面倒を見ている。みんなの食事を用意して、お世話する。ここに住んでいる人は、たった3人。小学教師の30代女性、20歳の大学生男子、そして、一世を風靡した女流小説家(たぶん、30歳くらいか)。その小説家の恋人で、無職のヒモ男も、ここに居着いている。この男がちょっとしたトラブルメイカーとなる。

 設定はあまりリアルではないけど、この状況を受け入れたなら、そこで展開していくこととなるお話はけっこうスリリングだ。それにしても、とても変な芝居である。主人公の女子高生の真面目過ぎるところに、イライラさせられる。ちょっと天然ではないかと思わせるが、彼女の一途さが作品に一本筋を通す。いろんなことを理解した上で、邪悪なものには染まらない覚悟のようなものを感じさせる。

 登場人物は彼女を含めて5人とも、個性的に色分けされている。このアパートで暮らす「おバカ」な人たちの姿を小説として綴っている作家の女性も含めて、みんななんらかの悪意がある。無意識であってもその悪意は伝わる。特にこの作家のヒモである男(2VS2の長橋秀仁)の突き放したような対応はちょっと怖い。

 カマトトぶっているようにも見える主人公と無邪気な大学生という若い2人と、それぞれがいろんな意味でずるい大人たち、という図式がきちんと描かれる。ここまで明確に子供と大人という区分けをされると、このドラマがリアルではなく、象徴的なものである意味がよくわかる。この対比からドラマは展開していくのだが、どこまでが作者の意図なのかよくわからない。本当なら、もう少し登場人物を増やしたほうが、いい気もするが、作者である本上さんは最小限の人数に絞り込むことで、この作品を一番シンプルな人間関係の縮図として提示したかったのだろう。

 みんなでささやかなクリスマスパーティーをしたいと願う少女の想いは実現することはない。それどころか、作家とヒモはここを去っていく。ここに住む人たちを小馬鹿にして、面白おかしく書いていた作家は自分が描いていることが表層的なことで、小説とはいえないレベルのくだらない物だと認識している。だから、彼らをモデルにして、連載していることがばれたとき、悪びれることなく素直にあやまる。自分の書いているものは、小説ですらない。(彼女はエッセイと言うが、本当はそれも違うだろう。本当のことをそのまま書いているように見えて、何も本当のことなんか書けていない。彼女には人の気持ちなんかわからない。

 とても緊張感のあるいい芝居だと思う。だけれども、全体の作りが中途半端で、これでは伝わらない。作者の意図もわかりにくい。どこまで確信を持って、作者がやっているのかもわからないから、微妙なところだ。でも、そこに可能性は感じる。この作者のちょっといびつな人間観察はおもしろい。


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