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映画・演劇のレビュー

『映像研には手を出すな』

2022-03-13 09:36:56 | 映画

ようやく配信が始まったので、さっそく見ることにした。昨年TVシリーズを見ている。主人公の3人のやり取りが楽しいし、この独特な世界観が笑える。こんな異常な高校があればきっと楽しいことだろう。近未来のお話なのだけど、ところどころ超アナログで、設定の異常さに引きずられることなく、彼女たちのオタクぶりを笑いながら、(心から共感し)暖かく見守る。特に主人公の斎藤飛鳥がすばらしい。ありえないような人見知り、そのおちょくったようなキャラクターが自然体で、笑える。大・生徒会とかいう生徒会の圧力に屈することなく、飄々と自分たちのやり方を貫いてしまう。そこが面白い。その後、アニメ版も見たのだが、こちらはこの実写が足元にも及ばない傑作だ。湯浅政明監督も絶好調。

と、こういう経緯もあり、劇場版を楽しみにしていた。(劇場公開時はまだTVもアニメも見ていなかったから、無視していた)いつもあほらしい映画ばかりを作り、時々あきれ返り腹立たしい思いを何度もしてきた英勉監督だが、この素材は肌に合うようだ。好調。

冒頭の黒澤明の『羅生門』のまねをして、激しい雨の降る夜、校門で、そこにやってきた男と、そこに佇んでいたふたりが「恐ろしいことだ」と話し始めるシーンでは大笑いした。つかみとしては最高の滑り出しだ。同時にここでかいつまんでこれまでの顛末も描く(TVシリーズの復習ね)

本編に突入しても、いきなりクライマックスのハイテンションで、引き込まれる。ただ、本来のクライマックスである文化祭シーンになると、いささか息切れがした。それにそこにはもう驚きがない。TVシリーズのラストと同じようなワンパターンで、がっかりした。ド派手に際限なくエスカレートさせて欲しかったのだが、そういう展開は思いつかなかったのか。生徒会との戦いというワンパターンだけでラストまで押し切ったのが徒になったようだ。


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