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映画・演劇のレビュー

うわの空・藤志郎一座『面白半分』

2012-02-14 22:28:44 | 演劇
 東京から初めて大阪にやってきた劇団だから、ちょっとドキドキしながら、見た。どんな新鮮な芝居を見せてくれるのか、期待させる。しかも、若手ではなく10年以上着実に実績を重ねてきた中堅集団らしい。なんだかそういうのっていいなぁ、と思う。自分たちのスタイルをしっかりと持ち、それがぶれることなく、マイペースで芝居を続ける。そんな劇団がわざわざ大阪で公演をしてくれる。有難い話だ。

 チラシにはこうある。「2011年秋上演の爆発的人気作品(ここまでは別にどうでもいいです。ただの宣伝だと思うし)、緊急公演(これはうれしい)ゆるくて激しい東京コメディー(ここ、ちょっと気になる)×いとおしい物語」この宣伝文句って、なんだかそそられた。「口立て」による芝居というのも、新鮮だ。エチュードで作るのは難しい。どうしてもゆるくなる。先の宣伝文句にはその緩さを自分たちの良さとしてピーアールしているようだが、そこは両刃の剣だ。バランスを誤るとただの独り善がりにしかならない場合がある。そんな風にして、身内受けに終始するつまらない芝居はけっこうたくさん見ている。さて今回はどうか?

 彼らの芝居は安易なアドリブに流されることなく、でも、かなり自由度も高く、自分たちのペースで作品をコントロールできているのは、さすがだ。ラストはちょっとしつこいのだが、あれはなんとかギリギリ限界でOKとしよう。ギリギリまで引っ張ってネタばれからラストまでは一気に、というのがこの手の芝居の定石なのだが、かなり危うい。作者はその危うさもまたきっと楽しんでいるのだろう。ネタばれからは2重人格にシフトを変えて、まだまだやるぞ、という芝居になる。

 この集団は村木藤志郎さんのワンマン劇団なのだろうが、彼を中心にしてみんなのアンサンブルが上手くいっているから心地よいのだ。彼と小栗由加さんの掛け合いが、とても楽しい。この掴みがうまくいったから、作品にノレる。きっと彼らは小さな芝居にこだわり、その小ささが心地よい、という芝居を目指しているのだろう。これぞ小劇場演劇、というべき作品だ。なんだかこれは先の宣伝文句通りに、確かに「いとおしい」芝居だ。とても上品なコメディーだし。こういうのを「東京コメディー」と呼ぶのだろうか。

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