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映画・演劇のレビュー

『幸福なラザロ』

2019-04-28 21:50:05 | 映画

なんなんだ、この不思議な映画は! 意味が分からない、と敢えて言うことにする。理屈で説明するとつまらなくなるからだ。「ラザロ」という名前から、このお話を説明してしまうとわかりやすいけど、つまらなくなる。何も考えないでこの不思議体験を唖然としながら受け止めるほうがいい。年を取らないでよみがえってきた彼に驚いた昔の村人たちのように。

映画は前半と後半でまるで違う世界を見せる。でも、どちらも現代とは思えない世界だ。小作制が今も続いている世界。彼らは伯爵夫人のもとで今も「小作人」として暮らしている。時代が止まったような世界のお話。ラザロはまじめで純朴な青年。でも、ちょっとふつうじゃない。彼には疑う心はない。すべてを信じて受け止める。伯爵夫人の息子の狂言誘拐事件から、ラザロが崖から落ちて死んでしまうという唐突な展開に唖然とする。主人公なのに、死んじゃうのか、というところで前半終了。

20世紀の終盤に入っても昔ながらの生活を続ける村人たちだったが、伯爵夫人の詐欺行為からとうとう解放され、めでたしめでたし。でも、この心地よい世界から出ていく(追い出される)ことになる。

都会で暮らすことになった彼らを描く後半戦。よみがえったラザロ、それは奇跡というより冗談、という感じで、そんな彼が解放されたはずなのに、幸せではない彼ら村人たちと再会する。寓話なのはわかるけど、あまりに唐突で先の読めない展開と、放り出されたようなオチ。

お話自体は怒濤の展開なのだけど、なんだかすっとぼけたような間抜けさ。このわけのわからなさに魅了される。頭の中を空っぽにしてただただこの不思議な世界を堪能すればいい。この気分には身に覚えがある。あれは昔々の話だ。そう、これはハル・アシュビー監督の『チャンス』を見たときのあの気分だ。ここにはあの傑作映画のような感動がある。監督は『夏をゆく人々』のアリーチェ・ロルバケル。ここには確かにあの気分がある。

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