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映画・演劇のレビュー

中村文則『去年の冬、きみと別れ』

2014-02-19 20:51:57 | その他
 これは凄い。読み始めて、かなりドキドキする。期待は高まる。この状態がどこまでそれが続くのか。200ページほどの分量なのはわかっている。では、こんな凄い話をたった200ページでまとめるのか? 興味は尽きない、はずだった。

 トマス・ハリスのというか、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』を思わせる。あるいは、昨年の白石和彌監督『凶悪』。あのテイストなのだ。というか、死刑囚とそれを取材する記者という図式が同じということなのだが、でも、これらの作品の孕む不穏な空気はただごとではない。この小説も冒頭から完全にやられた、と思う。死刑囚の語る話と、それを受け止めるライターの男のお話が交互に描かれていく。そこから、どこまで連れて行かれるのか。

 だが、すぐに、バランスは崩れてくるのだ。この2人の対決のはずが、なんだか様相はおかしい。死刑囚の姉の登場から、話はさらに不穏な見解を見せるのだが、それだけではない。人形師が出てきて、さまざまな人物が見え隠れするうちに、11章で(11)という異様な表記が登場し、(ここまででだいたい半分)そのあと、資料として、どんどん様々な情報が提示されていく。

 正直言おう。せっかくの小説がこれでは、もったいない。後半のどんでん返しは、いらない。読みながら、こんなつまらない話になぜするのか、と憤慨した。謎解きではなく、謎を深めるのが、この作品のやるべきことではないか。あんな安易な終息は三文小説に任せればよい。僕はこの終わらせ方を全否定する。前半は90点で後半は30点。残念でならない出来。


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