習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

山本文緒『アカペラ』

2008-09-25 22:57:21 | その他
 読み終えてちょっとため息をついた。やるせない気分になったからばかりではない。山本文緒、やるじゃない、という賞賛の気持ちからだ。今までのように自分の不幸をねちねち書いていくのではなく、対象との距離のとり方がとてもいいと思った。題材が恋愛とは少し違うところにシフトチェンジしたために、距離が取りやすかったのかもしれない。  3話ともそれぞれに面白かったが、表題作の『アカペラ』のラストの突き放し方が素 . . . 本文を読む
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虚空旅団『冬のトマト』

2008-09-25 22:45:41 | 演劇
 『野を焼く』以降高橋恵さんの作品には目を見張らされる。自分を見つめる厳しい目と、この世界をきちんと描いていこうとする冷静さ。そのバランスから、絶妙な緊張感を孕み持つ空間を作り上げていくのがすばらしい。前回、太陽族の岩崎正裕さんとの共同制作となった『フローレンスの庭』を通して、作家としてのキャパシティーをさらに広げた感のある彼女が再び自らのフィールドに戻って来た最新作がこの『冬のトマト』である。  . . . 本文を読む
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AI・HALL自主企画『パーマネント・ウェイ』

2008-09-25 21:44:00 | 演劇
 このリーディング・ドラマというスタイルにどうしようもない違和感を持つ。最初、役者たちの手にした台本が芝居に対する集中力を削ぐ。ストレートに芝居世界に入れないのだ。役者たちの肉体が芝居を損なっていくようにすら見える。これがラジオドラマだったなら、全く違和感なくすんなり受け入れられたかもしれない。出来ることなら目を閉じてドラマに集中したかったくらいだ。  錚々たる関西小劇場界を代表する役者たちが一 . . . 本文を読む
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浪花グランドロマン『風の亡骸』

2008-09-25 20:15:14 | 演劇
 9月のアトリエ公演『メイズ』は今までのNGRとは少しタッチの違う作品で、とても興味深く見た。あれは芝居がきちんと完結していかないまま宙ぶらりんになった作品で、かっての浦部さんはそういう芝居を作らなかったはずだ。(いつもきちんと決着をつけなくては終わらせない。)シンプルだけど、一筋縄ではいかない、というところもよかった。  あれは象徴としての機械を巡る物語だ。工場で働く女たちは繰り返し繰り返し同 . . . 本文を読む
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