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四谷 『かっぱ池』

私は、新宿区四谷で生まれ育った。四谷のほぼ中心に位置する、
舟町(ふなまち)という町だ。都会の新宿にあるにしては、
ずいぶん、古風な名前だ。古風というより、田舎風な・・・。
舟町は、外苑東通り、という割と大きな通りを挟んで南北に分
かれている。外苑東通りから南側は、商店街などがあり、
わりとにぎやかな雰囲気なのだが、私の生まれた北側は、静かな
坂の町だ。小さな家が立ち並び、いくつかのお寺からなる寺町。
そう、「舟町」の名ににつかわしい、都会の中の古い町。

よく、生まれは新宿区四谷です、と言うと、「ヘー、あんな都会
に住む家なんてあるの?」と言われるが、どころがどっこい、
四谷もにぎやかなのは大通りだけ。通りのひとつ隔てると、
舟町のような古くからの下町風情の小さな町がたくさんあるのだ。

ここ舟町や隣の荒木町は、狭い路地、石畳、昔の面影が、そこか
しこに残っている、いつ行っても「懐かしい」においのする町なのだ。
荒木町などは、かつての花柳界の雰囲気がいまだ少し残っており、
坂があり、すり鉢状になった町並みで、まるで迷路のように道が入り
組んでいる、とても不思議な、映画のセットのような町だ。

写真にあるのは、荒木町のすり鉢の中にある「かっぱ池」と呼ばれる
古池だ。今は、池の横の空き地が駐車場になってしまっているらしいが、
私が子供の頃は、「かっぱ池」は、ものすごい楽しい遊び場だった。
ザリガニを釣ったり、探検したり、池に落ちたり、小さい池なのに、
もうワクワクすることがいっぱいあったものだ。

そういえば、何で「かっぱ池」というのだろうか?
考えてみると、自分の生まれ育った町の歴史を、私はあまり知らない。
そんな話を聞くことのできる、おじいちゃんやおばあちゃんも死んで
しまった。もう少しきちんと聞いておくんだったな。
そうだ、今度、母にも聞いてみることにしよう。

舟町で石屋をしていたおじいちゃんが作った石畳や石の階段、石の壁
なども、舟町、荒木町のそこかしこにいまだ残っており、たまに四谷
の町をぷらぷら歩くと、胸がキュンとなり、涙が出てきてしまうのだ。

大きく町が変わってしまう前に、もう一度、自分の生まれた町を
見つめなおしてみようか。
そんな事を思うのは、私も年を取ったからなのかな?

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