「やわらかな針」に載っている3作目を読んだ。
この作品は、最初の2作より先に書かれたもののようである。
ここにきて初めて、これらの作品が一連の意味を持って並べられているらしきことに気づく。これらは日本語の題に続いて、「緑の手 gardening」「白桃 nursing」「ブイヤベース cooking」「洗う女 washing」・・・となっており、その他shopping, sewingなどもあって、この英語の部分はどれも主婦の家事に属するものであった。
そして、「ブイヤベース」を読んでみて、前の2作にもある一種の気味の悪さが、この作品にも同様に強く存在することを感じた。
そういえば、作品の中で必ず誰か死んでいる。そして、なまなましい生命体の描写がある。
「ブイヤベース」では、ブイヤベースを作る段階の魚やいかのハラワタをとったり切ったりする様とその対象物の様子が克明に描かれていた。
イカの吸盤・股の間の口・粘膜と贓物、パステルピンクに黄色いラインのある鮮やかな“いとより”、シーツから出ている白い脚のようなハマグリの舌。どれもが女の肢体を連想させる。
そして、飛び降り自殺をした、婚約者の元妻の姿がそれに重ねあわされている。
生きるものの肉体の生々しさと男女の日常生活の中に隠された残酷さが迫ってくる。
そして、それに衝撃を受けて、読後感ははなはだ気分が悪い。
できれば、そんなことには触れないで暢気に暮したい。
しかし、この作品は映像にしたらすごい芸術的な作品になりそうである。
すじ
美乃は年上の章生と婚約するが、後になって章生の妻が自殺をしていたことを他人から知らされる。妻の自殺の原因は女優になろうと必死になったものの適性や実力がともなわずノイローゼになったためであった。
しかし、友人夫妻を呼んでブイヤベースパーティーを開いた日に、美乃と章生の4年前の行動が妻の自殺の引き金になっていたことを友人の無意識の情報から知ることになる。自分が章生とオペラを見に行き、その肩を抱いている章生の様子を妻が知ることになったのが原因だった。それで、妻は誤解をしたらしい。
文には書いていないが、家事をほったらかしにして女優の道に夢中になり、うまく行かなければ愚痴をぶつけるという妻との生活に章生が焦燥感を抱いていたことは確かであろう。そして、本人も仕事が忙しい中で、ひと時、たいした関係もない若い女の肩を抱くくらいのあてつけをしたいという気になっただろう。
それが、妻が自身の命を絶つことにつながるということになったとしても、非難できることではなかろう。
美乃は自分がひとりの女の滅びに関わっていたという事実に気づくとともに、その男とともに生きることで、今度は同じ女である自分が滅びる可能性をも感じ、そうなるまいと決意している。
やはり残酷だと思う。
* * * * *
最近は、作品の中の衝撃やストレスに弱い。
テレビドラマの「白夜行」を見ていても、疲れ果ててしまう。
安らぎが得られないのだ。
精神が癒されるような作品を求めている。
この作品は、最初の2作より先に書かれたもののようである。
ここにきて初めて、これらの作品が一連の意味を持って並べられているらしきことに気づく。これらは日本語の題に続いて、「緑の手 gardening」「白桃 nursing」「ブイヤベース cooking」「洗う女 washing」・・・となっており、その他shopping, sewingなどもあって、この英語の部分はどれも主婦の家事に属するものであった。
そして、「ブイヤベース」を読んでみて、前の2作にもある一種の気味の悪さが、この作品にも同様に強く存在することを感じた。
そういえば、作品の中で必ず誰か死んでいる。そして、なまなましい生命体の描写がある。
「ブイヤベース」では、ブイヤベースを作る段階の魚やいかのハラワタをとったり切ったりする様とその対象物の様子が克明に描かれていた。
イカの吸盤・股の間の口・粘膜と贓物、パステルピンクに黄色いラインのある鮮やかな“いとより”、シーツから出ている白い脚のようなハマグリの舌。どれもが女の肢体を連想させる。
そして、飛び降り自殺をした、婚約者の元妻の姿がそれに重ねあわされている。
生きるものの肉体の生々しさと男女の日常生活の中に隠された残酷さが迫ってくる。
そして、それに衝撃を受けて、読後感ははなはだ気分が悪い。
できれば、そんなことには触れないで暢気に暮したい。
しかし、この作品は映像にしたらすごい芸術的な作品になりそうである。
すじ
美乃は年上の章生と婚約するが、後になって章生の妻が自殺をしていたことを他人から知らされる。妻の自殺の原因は女優になろうと必死になったものの適性や実力がともなわずノイローゼになったためであった。
しかし、友人夫妻を呼んでブイヤベースパーティーを開いた日に、美乃と章生の4年前の行動が妻の自殺の引き金になっていたことを友人の無意識の情報から知ることになる。自分が章生とオペラを見に行き、その肩を抱いている章生の様子を妻が知ることになったのが原因だった。それで、妻は誤解をしたらしい。
文には書いていないが、家事をほったらかしにして女優の道に夢中になり、うまく行かなければ愚痴をぶつけるという妻との生活に章生が焦燥感を抱いていたことは確かであろう。そして、本人も仕事が忙しい中で、ひと時、たいした関係もない若い女の肩を抱くくらいのあてつけをしたいという気になっただろう。
それが、妻が自身の命を絶つことにつながるということになったとしても、非難できることではなかろう。
美乃は自分がひとりの女の滅びに関わっていたという事実に気づくとともに、その男とともに生きることで、今度は同じ女である自分が滅びる可能性をも感じ、そうなるまいと決意している。
やはり残酷だと思う。
* * * * *
最近は、作品の中の衝撃やストレスに弱い。
テレビドラマの「白夜行」を見ていても、疲れ果ててしまう。
安らぎが得られないのだ。
精神が癒されるような作品を求めている。
このブログ読むと癒されますよ。
最近、気に入って読みに行ってます。
このブログ、心や脳のことが書かれているんですね。
これから、ゆっくり読んで行こうと思います。