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「ラ・ダンス」のラ・フォル・ジュルネ2017

2017年05月15日 | 日記
13回目のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャパン、今年のテーマは「ラ・ダンス 舞曲の祭典」だった。昨年は行けなかったがわたくしが見るのは、4回目である。わたくし自身はダンスにあまり興味がないので熱心にみるわけではないが、それでもたまたま通りかかったものも含めいくつかながめた。

まずピアノのルイス・フェルナンド・ペレスの「アーティストが語るラ・ダンス」。スペインには各地方にさまざまなダンスがあり、合計60-70種類にもなる。かつてスペインは南米を含め世界中に植民地を持っていたので、混合ダンスもある。いまではコレルリの「ラ・フォリア」として有名な「フォリア」は元はスペインの宮廷ダンスだった。ハバネラはキューバが有名だが元はスペインの舞曲だった。
バルセロナ(カタルーニャ)の伝統舞踊サルダナやマドリードの踊りは地味で退屈だ、という話に始まり、ハバネラや武骨なホタ・アラゴネサへと面白い話が始まりそうだったが、マスタークラスのチケット並びに行く時間になってしまい途中で退出せざるをえず少し残念だった。

地下のキオスクステージで丸の内フェスティバル・シンガーズがオペレッタ「こうもり」ハイライトをやっていた。合唱団のなかにかつて第九の合唱でみかけた人の顔を発見してびっくりした。合唱団はどうやらアマチュアのようだ。きらびやかな衣装の調達も大変だっただろうが、アマチュアでこんなことまでできるのかと驚いた。
また「栄華のバロックダンス」を少し見た。男性・女性、おとな・子どもを問わず20人ほどの客が参加し、バッハのメヌエット・ト長調のメロディに合わせて膝を曲げるプリエ、プリエから上に伸び踵を上げるエルヴェの練習をしていた。
近くの島村楽器のブースではピアスラの「リベルタンゴ」をピアノとバイオリンのインストラクターが演奏していた。

地上広場<プティ>でホルン四重奏を聞いた。グループの名は芸劇ウィンドオーケストラ・アカデミー。池袋の東京芸術劇場が2014年度に始めた音大卒程度の人への演奏家育成事業で 東京佼成ウインドオーケストラと上野学園大学が協力しているそうだ。男性1人、女声3人のグループでファリャの「三角帽子」やL.E.ショウの「フリッパリーズ」19番ジャズ・ワルツなど。ホルンは意外に低音が出ることを知った。他の金管楽器より音域が広いそうだ。
そんなこんなで、舞踊となんらかの関係のある選曲をしていることが多いようだった。

昨年から合唱サークルに入ったので、合唱曲を少し聴くことにした。
ローザンヌ声楽アンサンブル(ダニエル・ロイス指揮)
男声15人、女声14人とここまでは普通なのだが、後列は全員男性なのに、前列に2人だけ男性が混じっていた。よくみると他の男性は白いワイシャツに赤ネクタイなのに、その2人は黒ずくめの服でノーネクタイと、装いまで違う。いったい何なのだろうと思った。
それも前列の中ほどと右端に分かれていて、中ほどの人の左隣はソロを歌った女性だったので、おそらくアルトの左右両端が男性のようだった。あとで合唱に詳しい人に聞くと、おそらくカウンター・テナーではないかとのことだった。なるほど、そういうことか。この合唱団ではないが、男性のなかに女性が混じっていてパートはテナーということもあるそうだ。声域で決めるということでジェンダーフリーが進んでいる。なお中世の宗教曲では、もともと男性のカウンターテナー用に作曲されている曲もあるそうだ。
また2曲目から伴奏のピアノが加わった。2人だったので、おそらくピアニストと譜面めくりだろうと思ったが、連弾だった。女性が低音部、男性が高音部だったが、低音がしっかり音楽を支えていた。
演奏曲は3曲、ブラームスの「2つのモテット op.74」から“何ゆえ悩む者に光が与えられたのか”、「愛の歌  ワルツop.52」、「運命の歌 op.54」。
ドイツ語の歌詞と日本語対訳のパンフをもらった。器楽の場合は音楽に没入して聞いていればよいが、歌曲は意味がわかったほうがよい。ただしドイツ語がうまく聞き取れないので、どのあたりを歌っているのかわからない。2曲目「愛の歌」は「いってくれ、世にも愛らしい少女よ・・・」(第1曲)から「繁みがふるえている、一羽の小鳥が、飛び立ちながらかすめていったのだ・・・」(第18曲)まで18曲から成る。その3,4曲目あたりからやっと出だしだけ聞き取れるようになり、フォローできるようになった。

予想通りハーモニーはとてもきれいだった。考えてみるとヴァイオリン属とかサックス属以上に、人体の構造はサイズの多少の違い、男女の違いはあってもだいたい同じなので、声が調和しやすいのは当然といえば当然だ。
指揮者が愛らしいい曲のときには、踊るような感じで指揮していた(馬場管の森山さんほどではないが・・・)。
カーテンコールが2回あった。合唱ではおじぎはしないという話だったが、指揮者に促された場合は別のようで、何度かおじぎしていた。 

丸の内合唱団
丸の内合唱団はアフリカのズールーの民族音楽「ショショローザ」「ハンバルル」など4曲演奏した。ズールーは南アフリカ共和国からジンバブエ南部にかけて広い範囲に約1000万人が居住している、とある。男性20人、女性40人ほど、おそらく丸の内のサラリーマン中心の合唱団なのだろう。楽しそうに歌っていたが、珍しい分野なので、わたくしには芸能山城組の合唱のほうが迫力を感じた。

いつも楽しみにしているマスタークラス。今年はちょうどいい時間にピアノがなかったので、はじめてヴァイオリンのレッスンを見た。
講師はオリヴィエ・シャルリエさん。1961年2月生まれ、ミュンヘン国際音楽コンクール第3位、ロン=ティボー国際コンクール第2位に入賞し現在パリ国立音楽院教授。生徒は伊藤翔太さん(東京音大3年)課題曲はヴィエニャフスキファウスト幻想曲」、わたしははじめて聴く曲だ。
初めにコンサートのように一度通して演奏させた。音がきれいで重音も美しかったが、激しさに欠け盛り上がりも小さかったように思った。先生からはエレガントな演奏という褒め言葉があった。ただ初めて聞く人にストーリーがわかるようにコントラストを付け、もっとパワーをきかせ、響きの奥行をつけたほうがよいとのアドバイスがあった。このときは抽象的でよくわからなかったが、具体的な指摘とともにだんだん意味がわかってきた。
出だしの部分はこれから何を聞かせるか、どういう広がりにするか方向を定めるべきである。客が退屈しないよう、常に動きをつくる、たとえば同じモチーフが3回でてきてフェルマータがある場合、違いをどうつくるか、またリズムの形もクレシェンドをドラマチックにし緊張感をつくるには、その前にディミヌエンドさせることが重要、
以下、シャルリエさんの教えを一部再録する。
不協和音は強調し、立体感がもっとわかるようにきかせる。上向のメロディのとき、強調する音はどれか、モチーフを引きずり出すように弾く。休符も大事、作曲家の意志であるから。
最後は上のほうにアップしていく感じ、2拍目は問いかけるよう、3拍目は蒸発していくように、香りが立ち上がるような感じで。逆にいうと、君のようにアクセントを付けるのは間違い、間違ったアクセントだ。
ピアノのハーモニーをよくきいてダイアローグ(対話)をする、たたみこむように弾きピアノに割り込んでいく、など。
教えとともに、通訳の方も音楽に乗って体を動かし、またピアノ伴奏の方もダイナミクスがついてきた。この方も東京音大の方だったが非常勤講師で、生徒よりキャリアが長いので敏感に反応されたのかと思われた。
全体に曲をドラマチックに作り上げる細かいテクニックの教えが多かった。演奏家は職人でもあるということを実感した。
よくしゃべり、よく体を動かす先生で、1時間の予定が少しオーバーするほどだったが短く感じた。

2年前にこのコンサートは若手音楽家の育成がメインで、発表の場としての無料コンサートが聞きものと書いた。国際フォーラムの無料コンサートは地下のキオスクステージと地上広場<プティ>がメインだ。しかしキオスクの場合、1時間前に行っても座席は完全に満席になっていた。スタッフの人は「キオスクステージなら地下1階の渡り廊下からでも見えるから」というが、見えるといってもそれは広場の大道芸を遠方からチラッと目にするようなもので、音楽を堪能するにはほど遠い。
では近隣のエリア・コンサートに出かけようかとも思ったが、開始時間が重なっているミニコンサートがいくつもあるし、遠距離だったりして、どうしても聞きたいというものでないと行きにくいことがわかった。島村楽器、ローランド、クラシカ・ジャパンといった出展社ブースにまで目を広げたほうがよいかもしれない。
クラシカ・ジャパンは、日本唯一のクラシック音楽専門チャンネル。ティーレマン、2016年ゼンパーオーパーのローエングリン第3幕を4Kの装置を使って放映していた。4Kの画像は間違いなくよい、ただNHKで見たときも思ったが映画とどちらがよいかはわからない。また音が柔らかかった。

徳島の阿波おどり会館 
踊といえば日本にも、日舞、能の舞、雅楽などさまざまある。いちばん多いのは盆踊りなど民謡に合わせたものだろう。
徳島の阿波おどり会館で阿波おどりをみた。20人ほどの男女が鳴り物を演奏し踊りの実演を見せてくれた。100年前、70年前(昭和20年代)、現在の3つのスタイルの違いが踊られたが、100年前のものは
手や指の動きが優美だった。また10人ほどの観客もいっしょに参加して阿波おどりの基礎を教えてもらった。ややもすると分析的に観察してしまうことが多いが、「踊る阿呆に見る阿呆」なのだから、何も考えず体を動かすと、気分も上気する。こういう体験もよい。阿波おどり会館という名前を聞いたとき、15分もあれば見学が終わるのではないかと思ったが、踊りの効能を体験でき、入館料+見学1000円は安いくらいだった。
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