あめ~ば気まぐれ狂和国(Caprice Republicrazy of Amoeba)~Livin'LaVidaLoca

勤め人目夜勤科の生物・あめ~ばの目に見え心に思う事を微妙なやる気と常敬混交文で綴る雑記。
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雨場毒太の気まぐれ書評75

2007-12-12 22:28:17 | 雨場毒太の気まぐれ書評
紡がれるは栄光の影
沙高樓綺譚
浅田次郎 著
徳間 2002年


「お話になられる方は、誇張や飾りを申されますな。お聞きになった方は、夢にも他言なさいますな。あるべきようを語り、巌のように胸に蔵うことが、この会合の掟なのです・・・」
都心の高層マンションの最上階。そこに、各界の名士が夜毎集う「沙高樓」はある。女装の主人のもと、参加者達は、今まで様々な事由で心の奥底に封印していた秘密を、静かに語り始めるのだ・・・

「沙高樓」で語られる話五つを収めた短編集。短編連作ではあるが、話は一つ一つ語る人間が違うためそれぞれ完結している。

それぞれの語り部は、刀剣鑑定士(「小鍛冶」)、精神科医(「糸電話」)、撮影監督(「立花新兵衛只今罷越候」)、庭師(「百年の庭」)、ヤクザ(「雨の夜の刺客」)。職業が違うように、一つ一つの短編は全く違う味わいがある。

五編とも短編でありながら、重厚さを兼ね備えているのが特徴で、一話一話が違った重みを持っている。それでいて読みづらさが無いのは、さすが浅田次郎と言うべきところであろう。

私としては「小鍛冶」と「立花新兵衛只今罷越候」が特に気に入ったが、Amazon他のいくつかのレビューを見るに、好みはかなり割れているようだ。各話の方向性の違い故であろう。

手を変え品を変え様々な切り口の小説で読者を楽しませてくれる浅田次郎の、引き出しの広さがそのまま小説として結晶したような短編集と言える。


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