インドネシア語の中には「国家」という意味を持つ“Negara”と “Negeri”という2つの単語がある。基本的には同義であり、慣用で若干の違いがあるという程度と認識している。当初受けた説明では、“Negara”は「共和国」という意味を含むということであったと思う。もちろん、「インドネシア共和国」と言うときは当然、“Republik Indonesia”でもいいのだけれど、そうでなければ “Negara Indonesia”と言い、通常は“Negeri”を使用しない。また、「外国」と言う場合は、逆に“Luar Negeri”と言い、通常“Negara”という単語は使用しないが、「見知らぬ」と言う意味の“Asing”を使用する場合は、“Negara Asing”“Negeri Asing”のいずれも使用可能である。ところで、インドネシアやマレーシアにおける国家の次のレベルの行政単位は「州」であり、インドネシア語では“Propinsi”という単語を使用しており、これは明らかにオランダ語からの借用で、英語で言えば“Province”に由来する単語である。インドネシアの場合は「州」に“Propinsi”という外来語を借用したために“Negara” と“Negeri”が「国家」を意味する「単語としての地位」を「慣用」の名のもとに維持される形となっているわけである。一方、マレーシアではこの「州」という行政単位に“Negeri”という単語を使用しており、「ジョホール州」のことは“Negeri Johor”ということになる。従って、マレーシアでは“Negeri”という単語に「国家」と言う概念と「州」という概念が共存しているわけで、個人的にはちょっとスッキリしない感は否めない。これは恐らく、マレーシアという国家が歴史的に“Negeri” としての「小国家の連合体」=「連邦」であり、語義的には “Negara”>“Negeri”というニュアンスが確立されていると推察されるわけである。マレーシアには州の数は13あるけれど、その中に“Negeri Sembilan”という州があるが、何故、この州だけ“Negeri”をダブらせるのかということにもちょっと疑問を感じている。ここでインドネシアの行政単位についてみてみると、インドネシアは上から“Propinsi”(州),“Kabupaten”(県), “Kecamatan”(郡),“Kota”(市)“Kelurahan”(村)となっているが、マレーシアのほうは“Negeri”,“Jajahan”,“Daerah”, “Mukim”,“Kampung”と言うことになっている。“Negeri” が「州」であり、最小単位の“Kampung”が「村落」であることは理解できるのであるが、その他の単位についてはもう1つスッキリしないのである。“Jajahan”はインドネシア語的には「植民地支配」的なニュアンスであり、個人的にはあまり使用したくない単語である。また、次の“Daerah”についても、インドネシア語的には、「地方」とか「地域」とかいう意味であり、ここでは「地区」というくらいの意味になるのだろうか。また、“Mukim”についてもインドネシア語で言えば、“Bermukim”で「居住する」という意味であり、 “Permukiman”で「居住地」という意味になる。従って、この “Mukim”単独で行政単位としての地位を主張されると、やっぱり違和感があるわけである。いろんな書類の訳文を見ると、 “Jajahan”を「郡」と見做しているもの、“Mukim”を「郡」としているものなど様々であり、これもやはりスッキリしないのである。個人的にはマレーシアの“Mukim”がインドネシアの“Kota”に相当するように思える。観光地として有名になっている“Kota Kinabaru”は、書物などでは「市」として取り扱われており、この“Kota”の概念もやはりスッキリしないのである。
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