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大野和士/都響:トゥーランガリラ交響曲

2018年01月24日 | pocknのコンサート感想録2018
1月20日(土)大野和士 指揮 東京都交響楽団
第848回 定期演奏会Cシリーズ
東京芸術劇場

【曲目】
1.ミュライユ/告別の鐘と微笑み~オリヴィエ・メシアンの追憶に(ピアノソロ)
2.メシアン/トゥーランガリラ交響曲

Pf:ヤン・ミヒールス/オンド・マルトノ:原田節

メシアンの、更には20世紀音楽の代表作とも言えるトゥーランガリラ交響曲だが、特殊楽器を含む大きな楽器編成と長い演奏時間のために演奏される機会は多くない。ライブ以外で音楽を真面目に聴くことがあまりない僕にとってちゃんとこの曲を聴くのは2008年のメルクル/N響以来10年振り。

このシンフォニーは、桁外れに大きなダイナミックレンジ、多彩な音色、オンド・マルトノを伴ったエキゾチックで不思議な響きなど魅力はたっぷりあるが、それらをうまく聴かせるだけでは足りない。規模の大きさと同時に、極めて緻密に書かれたこの作品では、常にスコアを徹底的に深く読み、緻密に演奏を組み立てて行く大野和士の姿勢が、この曲の真価を伝えるうえで普段にも増して功を奏する結果となった。

それは、この音楽の特徴の一つで、ともすれば冗長な印象を与えかねない、同じフレーズの度重なる反復が全く退屈にならず、1回ごとに新たな感銘が呼び覚まされたり、息の長いフレーズの先端に至るまで、小さな生き物が集団行動をしているような表現を感じたり、どんなに激しいシーンでも常に音を丁寧に扱っていることが感じられたり、といった、音楽の全体と細部を知り尽くしていてこそ可能な表現がそこここで聴こえてきたからだ。

これには、都響のプレイヤーの高いクオリティーでの貢献を忘れてはならない。柔軟で懐の深い弦、難しいパッセージが連続する金管セクションの妙技、木管のソロの豊かな表情、それに加えて、演奏会冒頭にミュライユの小品で透明で結晶のようなピュアなピアノソロを聴かせたミヒールスが、ここでも終始雄弁に、鮮やかな色彩で申し分なく音楽を彩った。激しいパッセージでの活躍もさることながら、第6楽章「愛の眠りの庭」での、静寂感を益々際立たせる神聖な音の佇まいが絶品だった。

周到な準備でこれらが総動員されたからこそ、得も言われぬ陶酔感や、光り輝く無限の高みに達することができたのだろう。この音楽は、官能的なエクスタシーを呼び覚ますとも云われる。恐らくメシアンは、超自然的な宗教体験を表そうとしたのだろうが、分かりやすく言えば、愛に溢れた細やかな準備(前戯)の積み重ねがあったからこそ、最終盤でどこまで持って行かれるのかと思うほどのエクスタシーが実現したとも云える。

法悦の絶頂に達して演奏が終わり、静かに余韻を味わおうとしていたときに拍手が入り、こともあろうにブラボーの罵声!この壮麗な響きを汚したヤツの犯罪度は大きい。思い出しても腹が立ってくるが、大野/都響の充実ぶりは、昨年秋の「天地創造」と言い、今日のこの演奏といい、改めて目を見張る出来で、聴いている方まで誇らしくなった。

大野和士指揮 都響&スウェーデン放送合唱団:「天地創造」2017.9.11 サントリーホール
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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