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ノトス・カルテット

2019年07月07日 | pocknのコンサート感想録2019
7月5日(金)ノトス・カルテット
transit vol.11
王子ホール


【曲目】
1.バルトーク/ピアノ四重奏曲ハ短調Op.20,Sz9(日本初演)
2.ブライス・デスナー/エル・チャン
3.ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番ト短調 Op.25
【アンコール】
♪ クライスラー/愛の悲しみ

Vn:シンドリ・レデラー/Vla:アンドレア・ブルガー/Vc:フィリップ・グラハム/Pf:アントニア・ケスター

ピアノ四重奏の編成で活動するノトス・カルテット。活動歴はすでに13年目になるそうだが、今回の来日公演のチラシで初めて存在を知り、聴いて来た。

最初は、このカルテットのメンバーが最近譜面を発見したというバルトークの作品。マーラーのピアノカルテット(断章)に通じる熱いパトスを秘めた音楽だ。4つの支流が次々と合流しながら水量豊富で激しい流れを作るシーンを、音でリアルに体験させる感じ。バルトークがまだ17歳の作品は、ブラームスやシューマンのスタイルを汲んで情熱的なロマン派の顔を呈していて、メロディーもハーモニーもバルトークらしくない。様式も堅実で、研さん途上のバルトークの真面目さが表れているが、激しさ、熱さ、食らいつくような執念、リアルな表現力といった点ではバルトークだ。

そんな熱い音楽をノトス・カルテットはほとばしるパッションで熱くアクティブに、アグレッシブに攻めあげた。骨太でダイナミックに、良く鳴り響く音で聴き手をグイグイと引き付け、有り余るほどの若いエネルギーを浴び続け、少々食傷気味になったほど。

次はガラリと趣きを変え、現代アメリカの作曲家、ブライス・デスナーの作品。クリスタルでファンタジックなテクスチャーで彩られ、祈りの呪文が器楽演奏から聴こえてくる神秘性も秘めた音楽。デスナーはロックの世界でも活躍しているそうで、この組曲にもロック調の楽曲があるとプログラムに書かれていた。それは感じなかったが、ジャンルを超えたクロスオーバー的なフィーリングを宿し、ノトス・カルテットはまるで耳元で鳴っているようなリアリティーの高さで、作品のスピリットを伝えて来た。

後半はブラームス。これは前半の2作品での演奏の特長が合わさり、更に全体を俯瞰するスケールの大きさも加わった素晴らしい演奏だった。ノトス・カルテットは常に能動的で、熱くて切り込みが深い。各メンバーはそれぞれの個性を放って魅力的。グイグイとイニシアチブを握るヴァイオリンのレデラー、内声ながら攻めの姿勢を前面に出してくるブルガーのヴィオラは濃厚な音色も耳を引く。チェロのグラハムは抒情的で味わい深い歌を聴かせ、ケスターは冷静にアンサンブルを俯瞰し、知と情のバランスが取れたピアノを聴かせる。

若いエネルギーの炸裂がこのカルテットの魅力ではあるが、力任せに突き進むのではなく、緻密さも具え、綱渡り的なバランス感覚で名人芸のアンサンブルを展開。それが各パートの役割を鮮やかに浮かび上がらせ、生き生きとしたムーブマンと推進力を生み出す。最終盤の驚くばかりの猛スピードは、しくじれば大転倒となるようなギリギリのところでバランスを取り、一気果敢に疾走し、聴き手を興奮の渦中へ引きずり込んだ。スゴイ演奏!このアンサンブルで、他の作品もみんな聴きたくなった。
アンコールの「愛の悲しみ」は、その興奮をカームダウンさせるような、心に沁みる演奏だった。

♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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