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N響 2022年2月B定期(尾高忠明 指揮)

2022年02月19日 | pocknのコンサート感想録2022
2月17日(木)尾高忠明 指揮 NHK交響楽団
《2022年2月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.ブリテン/歌劇「ピーター・グライムズ」~ 4つの海の間奏曲 Op.33a
2.バーバー/ヴァイオリン協奏曲 Op.14
【アンコール】
 ♪ ディープリバー
 Vn:金川真弓
3.エルガー/変奏曲「謎」Op.36

先月のB定期は直前に中止となってしまったが、今月は無事に開催された。但し、指揮者はパーヴォ・ヤルヴィから尾高忠明に、ソリストはヒラリー・ハーンから金川真弓に変更となった。プログラムは予定通り。尾高のイギリスものはとりわけ楽しみだった。

アメリカのバーバーの作品も含め、尾高/N響は期待通りの充実した演奏を聴かせてくれた。両者の組み合わせによる演奏は安心して聴くことができる。尾高の指揮はデリケートで、作品の隅々まで丁寧に描いてゆく。そして要所はしっかり締め、肝心な場面ではエネルギッシュに盛り上がる。アンサンブルの精度もハイレベルで艶やかなサウンドを生み、完成度が高い。いい意味での良い演奏のお手本のよう… と云うと誤解を与えそうだが、その演奏にはハートが投入され、心に響いてくる。

最初のブリテンから、冴え、艶、輝き、勢いに溢れていたのと同時に、豊かな詩情を湛え、漁村を舞台に繰り広げられる屈折した人間模様を描くオペラの深層を覗き見るようなリアリティーが伝わり、オペラの上演でこんな演奏を聴けたらいいなと思った。

続いてバーバーのヴァイオリン協奏曲。ここでは金川真弓の強烈な存在感が突出していた。ステージで独りスポットを浴びているような存在感を放ち、ある時は妖艶に歌い、ある時は鋭くスリリングに作品に深く切り込んでいく。一つ一つの音が研ぎ澄まされ、香りを発している。速いパッセージでも一音一音がそれぞれに多彩な色を発し、心を射止めてくる。

オーケストラにも堂々と、かつ緻密に対峙する。オケが大きな音を鳴らすときも金川のヴァイオリンはそこから浮き立って聴こえた。金川のヴァイオリンは去年、メシアンの「世の終わりの四重奏」などを聴いたのが初めてで、その時にすっかり魅せられたが、今夜はその思いを益々強くし、注目度が一層高まった。

そして後半はエルガー。尾高/N響はどの変奏曲でも緻密で丁寧にそれぞれの楽曲の特徴を捉えつつ、全体を大きな作品として印象付けた。有名なニムロッドでもことさら感情を煽り立てることなく静かに盛り上げ、あくまで変奏曲の1楽曲として扱う。抒情と優しさを湛え、ヴィオラやチェロ、管楽器らの名手達による室内楽的魅力も存分に堪能させてくれ、落ち着きと節度を保った美しい演奏が展開した。驚きや刺激がもっと欲しいと思わなくもないが、愛情が大切なんだよ、と静かに語りかけてくるような「エニグマ変奏曲」。尾高の熟練した匠の技とN響とが調和した美しい演奏に、心も体も温かくなった。

尾高はN響にとって大切な指揮者。代役や1プログラムだけでなく、定期的にまるまる3プログラムを担当して蜜月を深めてもらいたい。

尾高忠明 指揮 NHK交響楽団 2021.2.7 NHKホール
小菅優プロデュース :武満、メシアンの室内楽(Vn:金川真弓)2021.6.11 ブルーローズ
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