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小曽根真 60TH BIRTHDAY SOLO

2021年04月03日 |  pocknのコンサート感想録2021
3月25日(木)小曽根真
OZONE 60 CLASSIC×JAZZ
~サントリーホール~



セットリスト
ガッタ・ビー・ハッピー
ストラッティン・イン・キタノ
モシュコフスキ/20の小練習曲Op.91~第20番変ト長調
ニード・トゥ・ウォーク
オールウェイズ・トゥゲザー
モーツァルト/アイネ・クライネ・ジーグ(小さなジーグ ト長調K.574)
プロコフィエフ/戦争ソナタ~第3楽章
♪ ♪ ♪
ザ・パズル
チック・コリア/スペイン
耳を澄ませて…(リスン...)
オベレク
アンコール
誰かのために(フォー・サムワン)


還暦の誕生日に行われた小曽根真のソロライブに夫婦で出かけた。サントリーホールの客席は100%使用。コンサートによって半分しか入れないことも少なくないが、問題がないことは検証済みだし、アーティストと聴衆双方のためにもこれはいい手本だ。

「OZONE 60」を映した赤い照明で染まったステージに登場した小曽根さんの衣装も赤尽くし。そしてピアノを弾き始めるや、たちまち会場は小曽根カラーで染め上げられた。小曽根のピアノは多彩だ。「ガッタ・ビー・ハッピー」で華やかなバラード風にオープニングを飾ったあと、「ストラッティン・イン・キタノ」ではご機嫌なデキシーランドがはじけ、巣ごもりでの体重超過に自戒を込めて書いたという「ニード・トゥ・ウォーク」ではブルースが熱く語りかけてきた。

クラシックでもジャズのセンスを取り込んで冴えまくる。「音楽的なことはノーサンキュー、ただテクニックを教えてほしい」という条件でついたピアノの先生が与えてくれたというモシュコフスキのエチュードはインスピレーションに溢れ、モーツァルトでは原曲とアドリブの境を楽々と行き来してお洒落なテイストに仕上げ、プロコフィエフの「戦争ソナタ」は、重くガンガンと畳みかけるのではなく、俊敏なリズムの饗宴で踊りだしたくなる気分になった。

小曽根のピアノは、指先に敏感なセンサーが付いているように一音一音がセンシティブに反応し、それらが生き生きと繋がり、華麗で、エキサイティングで、色気があって、チャーミングで・・・全く異なる情景や心象を次々に描いて行く。そのどれもが魅力に溢れているのだが、小曽根さんのトークを聞きながら演奏を聴いていて、これはどれも人間小曽根真から滲み出る人としての魅力なんだと感じた。

最近の小曽根の活動と云えば、コンサートが全て無くなった昨春の緊急事態宣言中、53日間に渡って連日、自宅から自らの演奏を世界に向けてライブ配信したことを思い出す人が多いだろう。そんな凄いことを「多くの人たちと心が繋がった大切な時間」と話す小曽根真という人間の器の大きさ、包容力、細やかさ、熱さ、そして何よりも聴衆への愛が、今夜の演奏に如実に反映されていると思わずにはいられなかった。

そんな魅力が更にパワーアップしたのが、白い衣装に着替えた後半。本来はトリオで演奏するところを一人でこなした「パズル」、先月訃報が届いた、小曽根とも親しかったチック・コリアへのオマージュとして演奏した「スペイン」に込められた深い思い… 隣で聴いている人は涙を拭っていた。「耳を澄ませて…」は、静寂のなかで聴いて初めてその繊細さを感知できる心のささやきが、大きく心の琴線に触れた。手拍子も加わった熱くて濃厚な「オベレク」のあと、アンコールとして「みんなのために」と弾いてくれた「フォー・サムワン」の溢れる愛で会場は最高潮に達し、満場の喝采とスタンディングオベーション。

小曽根真が、音楽、そして聴衆に対して、常に真摯で誠実に愛を込めて、抜群のセンスとテクニックで天才的な演奏を生み出す世にも素晴らしいミュージシャンであることを思い知った幸せな2時間だった。

尾高忠明指揮 読売日響/Pf:小曽根真 ~2020.9.8 サントリーホール~
小曽根真&ゲイリー・バートン デュオ ~2013.6.22 サントリーホール~

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