『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

星空ロック!気づき&興味の入り口に

2017-12-06 17:31:31 | 日本文学


『星空ロック』(2013年)那須田敦著 あすなろ書房

今日の一冊は、2014年度中学生の部の課題図書だったコチラ。YA(ヤングアダルト)と呼ばれる思春期向け小説。

【ここがポイント】

■ 現代っ子の一人称語りで、会話も多く、本が苦手な子でも読みやすい

■ 様々な家族像を知るきっかけになる

■ 異文化理解への入り口となりうる

■ 老人と子どもの交流がよい

■ ナチスを含むドイツの歴史も垣間見れる

■ 重くなりがちなテーマを軽やかに書いてるので、押しつけがましくない



さら~っと読めちゃいます。ドラマを見ている感覚。
ケチな大家さんなので、ケチル(本当はタケル)と呼ばれている90歳を超す老人と、14歳の主人公レオの交流がいいんだなあ

でも、ケチルが亡くなっても、レオが全然悲しんでいる様子がないのが、ちょっとだけ気になる。思春期の男の子がこんなにもすんなり異国の地で、同年代と打ち解けるか?とか、流行り言葉の多様など引っかかる点もある。でも、こういう読みやすくて、何かの気づきの入り口になるような本は、今の子にはよいのかも。やっぱり、異文化に身を置くと、普段考えないことを考えて、自分を客観的に見つめ直すのでよいな~。

≪『星空ロック』あらすじ≫
エレキギターに夢中な14歳中学2年のレオ。夏休み、家族3人でドイツを旅する……はずだった。ところが、諸事情により、一人で後からベルリンに向かうことに。ベルリン在住の従妹のマリちゃんのシェアハウスの住人、ユリアンやその義理の妹リサなどに出会い、レオは成長していく。そして、レオにはもう一つ、ケチルと呼ばれたケチな大家さんとの間の秘密を探す目的が・・・。


ケチルのね、物語がよいんだなあ。第二次世界大戦後に生きてた世代のことが、読むと少ーしだけ身近になるのです。おじいちゃんたちにも青春があったのか、っていうのがね。

この物語には家族・移民・ナチス・音楽など様々なテーマが盛り込まれているのだけれど、気になることがあったら、ここから興味を広げられる、広げてほしい、そんな物語かも。例えば、もし、この物語を読んで、移民って大変なんだあ、と思う子がいたら、ぜひこういう本を手渡してもらいたいなあ↓



移民の苦労、いかに差別を受けているかがとてもよく分かる。


ところで、イントロダクションで、ケチルはピタゴラスの宇宙の音楽について語ります。

「宇宙の星々は、ハーモニーと法則をもとに動き、壮大な星の音楽というべきものを奏でているー」(P.7)

って。
これ読んで、わあってなる子がいるといいなあ。古代ギリシャから音楽は天体と関係していたこと。ケプラーも惑星の「天空の音楽」の楽譜を書いていたこと。音楽と物理って昔は密接だった。そんなこと私の中高時代は思いもよらなかったし、シラナカッタ。文系と理系が結びつくだなんて(笑)。
いろんな‟つながり”が分断されて、専門バカばかり生産している今の教育に、疑問を持つ子が・・・生まれたらいいな。

読了後は、カノンロックが無償に聞きたくなります!で、聞きまくっていたら、エアギターでノリノリの三男(4歳)でしたが、次男には「もう飽きた」と言われてしまいましたとさ



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