『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

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『たんぽぽのお酒』

2016-04-15 21:25:57 | アメリカ文学



『たんぽぽのお酒』レイ・ブラッドベリ作 北山克彦訳 晶文社


谷戸は今たんぽぽでいっぱいです。柔らかくておひさまの匂いのするたんぽぽは見ているだけで、心がなごみます。たんぽぽを見るたび思い出すのが『たんぽぽのお酒』。こちらは、なごむというよりも、感受性の強さゆえにきゅうっと胸がしめつけられるようなお話。
イメージの魔術師レイ・ブラッドベリによる少年ファンタジーの永遠の名作・・・と言われていますが、いわゆるファンタジーを想像するとちょっと違うかも。とても幻想的で、題名だけでも魅力的

脇明子さんをはじめ、いろんな人から大絶賛されているこの物語・・・個人的にはいやあ、読みづらかったです。正直、珍しく読むのを挫折しかかりました、ハイ。引き込まれたのは70ページ目くらいからでしょうか。好みか好みでないかと問われたら、苦手な部類ですが、読み終えた後にじわじわと来るものがあり、心に引っかかる忘れられない物語ではあります(ん?結局は好み!?)。

≪『たんぽぽのお酒』あらすじ≫
輝く夏の陽ざしのなか、12歳の少年ダグラスはそよ風にのって走る。その多感な心にきざまれる数々の不思議な事件と黄金の夢…。夏のはじめに仕込んだタンポポのお酒一壜一壜にこめられた、少年の愛と孤独と夢と成長の物語。「イメージの魔術師」ブラッドベリがおくる少年ファンタジーの永遠の名作。
12歳からみんな。


あらすじを書くのが難しい物語なので、BOOKデータベースの説明をそのまま拝借いたしました

イメージの魔術師とはよく言ったもので、言葉の一つ一つに魂が込められているような、詩的表現を味わう、そんな感じです。ストーリーを追いたい派の私にとってはその詩的表現がおなかいっぱい気味なところがあったので読みづらかったのかも。

主人公の少年の感受性の強いこと。これだけ強いと生きるのがつらいだろうなあって思います。不気味な話しもところどころ盛り込まれていて、それは苦手だったのですが、出てくる老人たちが魅力的でした。最後に主人公が病気になってしまうところで弟のトムがこの夏が兄さんにとってどんなにひどかったかを述べるところも印象的です。

「それにお誕生日のお祝いに欲しかった奇術の本がもらえなくて、かわりにズボンとシャツをもらったのさ。それだけでもこの夏はすっかりダメになってしまうに十分だよ」

ハッとさせられます。大人にとって大したことでないことの数々がいかに少年たちの精神、内面を破壊させる要素を持っていることか。最後に回復した主人公が恩返しするのではなく、恩送りする場面は感動しました

ところで、日本語版の表紙ですが、全然イメージと合ってない!!!と個人的には思います。荒井良二さんは好きだし、この絵自体はとっても素敵だと思うんです。でも、この不気味で繊細で美しい内容のイメージとは違うんだよなあ・・・。海外版も表紙はたあくさんあるのですが、その中で私の中のイメージと合ったのはこんな感じ。小さめ画像でずらずらっと並べてみます。内面の絶望や感受性の強さゆえの苦しみ、でも暗さの中に見えるきらめき、二度と戻らない夏、そんなイメージです↓

    

たんぽぽのお酒(dandelion wine)、作ってみたいなあ。黄金の一壜一壜にひと夏の思い出をこめて。
でも、私の場合はこの主人公のように胸しめつけられるような美しくも苦しい思いではなく、ひたすら幸せで美しい思い出だけをこめて・・・。

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