『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

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離婚したらどちらについてく?『シロクマたちのダンス』

2017-02-25 06:50:08 | 北欧文学

『シロクマたちのダンス』 ウルフ・スタルク作 菱木晃子訳 偕成社
269頁 1986年(原書初版)1996年(翻訳版復刊)


今日の一冊は、スウェ-デンの人気作家スタルクによる『シロクマたちのダンス』。
テンポよく進み、映像が目に浮かぶなあ、と思っていたら、やっぱり!スタルクの作品は次々とドラマ化されているそうです。

母の裏切りだったり、劣等生の自分だったり、両親の離婚による自分のアイデンティティの問題だったり・・・と内容は重いハズなのですが、主人公ラッセの一人称で語られるのは、悲劇ではなく、なんとなーく明るいんですよね。クリスマス・イブの夜にお母さんがよその男の人の子どもを妊娠しているという衝撃の事実が明かされるというのに!ハリウッドだったら、絶対ドラマチックにしちゃうところが淡々としてる。原書の絵もポップな感じ↓

 

んまあ、いたずらっ子でしてね、このラッセ。でも憎めない。学校からはすごく問題児扱いされているけれど、読者はラッセの目線で読むので、それほど悪いこととも思えない。そっか、そっか、疎まれている問題児たちの中身ってこういうこと考えてるのか、なんてことも分かったり。

あがき、もがいてはいるけれど、どことなくヒョウヒョウとしているんです、このラッセって子。両親からちゃあんと愛されて育っていて、自己肯定感が高いからなのかな。こんな状況なのに、誰かを恨んだり、誰かのせいにしたりしないんです(←これって実はすごく難しいこと)。もちろん、もがきますよ?でも、それは自分自身のアイデンティティをめぐって。改めて、何が起きたかではなく、自分がどういう眼鏡をかけて見るか、が自分の世界を作ってるんだなあ、って感じます

シロクマそっくりのお父さんはもっさりしていて、でも誠実で愛情深い。一方お母さんの再婚相手は歯科医で、校長先生とお友だちで住む世界が違う感じ。新しいお父さんもラッセと分かり合おうとする良いお父さんなのですが、ラッセを品行方正に変えることに燃えてしまうんですね。校長先生とそのことで賭けをするんです。ラッセもがんばったら成績もどんどんあがる、服装をきちんとすれば別人になったみたい。・・・でも、それって自分なの?今まで仲良かった友だちは離れて行く・・・。

う~ん、難しい。以前のラッセは行動だけ見るとほっんとヒドイですからね。私が親でも品行方正になって成績が上がったら、思わず喜んじゃうかも。でも、それが実はその子らしさを殺していたら・・・?

ラッセのお母さん、あんないいシロクマみたいな父さんを裏切るなんてサイテー!と思ってたのですが、このお方、見るところはきちんと見てた。そして、自分で自分の道を決めたラッセが爽やか

個人的には、スウェーデンでは学校でラズベリージュースが出てくるのね~、学校で出されるバターケーキどんなのかしら?なんてところにも文化を感じ(←単に私が食いしん坊なだけ)面白かったです。読みやすい文章なので、高学年から本が苦手な子にも。

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