気温の上下動がはげしい4月ですけど、いまさらながら春らしい爽やかでちょっと肌寒い気候になりました。
怒涛の15連戦は、いよいよリーグ戦もミッドウィークを強いられます。社会人には辛いところ。
本日は、ミッドウィークにはちょっと惜しいビッグマッチ、鹿島です。You’ll Never Walk Alone♪
みんな味スタに集まったかいがあったスリリングな好試合を逆転で制し、4連勝です。
東京はモリゲが大事をとってお休み。シフトはスクエア型の4-4-2。GKは彰洋。CBはヒョンスとまる。SBは室屋と諒也。ボランチは洋次郎と拳人。メイヤは右に晃太郎左に慶悟。2トップはディエゴと永井です。
鹿島は怪我人続出のスクランブルです。シフトはスクエア型の4-4-2。GKはクォン・スンテ。CBは植田と犬飼。SBは右に伊東左に修斗。ボランチは三竿と永木。メイヤは右に土居左にレアンドロ。2トップは夢生と優磨です。
試合開始早々、アクシデントが起こります。ディエゴとのコンタクトで足を負傷した修斗が下がります。代わって大伍が同じく左SBに入ります。
このアクシデントは、結果的に鹿島に大きな影響をおよぼします。大岩鹿島は、標榜するとおり攻撃に重点を置いたチームのようです。試合開始からの鹿島に少し違和感を覚えました。とても上手いのだけど、鹿島っぽくないと感じたからです。
鹿島といえばサイドアタック。サイドにしっかりした基点を作り、人数をかけて数的優位を作る、どちらかというと局面に重点を置くサッカーです。かつSBの攻撃力が高く、ゴール前で攻撃参加することも特徴。これにより守備バランスを崩す意図です。修斗や大伍のシュート力、試合の構成力がチームとしてもストロングポイントとなっています。
いまの大岩鹿島は、昌子や康、PJ、ウッチーなど離脱者が多く、本来のサッカーを披露できているのかはわかりません。でも主力がいないからといってサッカーのスタイルそのものを変えるとは思えませんから、違和感の理由は離脱者が影響したものではないと思います。
大岩鹿島のサッカーはポゼッションスタイルです。個々の選手の広範囲なムービングによるスペースメイクを基調とします。パスはワンタッチを基本とし、スペースに人もボールもどんどん入っていきます。いわば、少し前に席巻したオシムさんスタイルです。強者を標榜する鹿島にして、ずいぶん無個性なサッカーをするなと思ったのが違和感の原因です。
さすがに鹿島ほどのクオリティの高い選手がこれをやると、チームプレーがとてもエレガントです。人もボールもスムーズかつ効果的に連動し、まるでダンスを見るかのようです。一方でこのスタイルのウィークポイントは、鹿島にして乗り越えられないものなのだなと確認できました。パスを回すことを優先するわけではないのだけど、フリースペースへの意識が高すぎるあまり、結果的にコンサバティブなプレーになってしまいます。鹿島の選手の意識は縦にあり、それは客観的にも明らかなのですけど、ペナルティエリアがひとつの壁になっていて、肝心のシュートが有効となるスペースを使えません。このため、シュート数が激減します。
東京も、今日は試合の入りがこれまでと少し違いました。様子を見たのか、鹿島のイニシアチブに対し受動的なスタンスを取ります。これも鹿島のパス回しをスムーズにさせた一因だろうと思います。
ただ、4+4の守備網を維持する大根本はブレません。なのでアタッキングサードに入ってからのタイトなマークで、鹿島の攻撃のギアアップを許しません。鹿島は優磨を右サイドに流して、高い位置で基点を作ろうとしていました。土居と伊東を有効にする意図だと思います。優磨への対処は諒也が担います。結局諒也は優磨を完封します。コンタクトで負けないどころかむしろ優磨がコロコロ転ぶシーンが目立ち、この勝負は諒也が勝ちました。
優磨がサイドに流れるため、最前線は必然的に夢生の一枚になります。夢生はけして目立ってまるを狙ったわけではないと思いますけど、まるは夢生との 1on1の局面でも安定していました。失点はアクシデントがからんでいたので、まるとヒョンスのコンビは実質夢生を封じたといっても良いと思います。
東京はチームの重心が下がるため、攻撃の基軸となるプレーができません。まず、トランジションの起点となる中盤の圧倒的な支配力はかげをひそめます。鹿島のパス回しが巧みだったが故です。今後、鹿島より意志があり、かつ威力の高いポゼッションを基調とするチームと対戦する日を迎えるにあたり、課題がみえたと思います。
もうひとつはディエゴ。ディエゴをターゲットとしたフリックプレーは、そもそもディエゴにロングフィードを送れませんからまったく機能しません。仮にパスを送れたとしても、ディエゴに連動するべき永井、晃太郎、慶悟のスタート位置が低く、フリックは繋がらなかったことでしょう。総合的に見て、あえてコンサバティブな作戦を選んだ東京は、守備の安定を得つつも攻撃のかたちを作れず、劣勢を強いられます。
とはいえ鹿島のポゼッションに試合を決するほどの威力がないのは前述の通り。アクセントマンがいたら手強いなと思っていたら、案の定、現状で唯一の鹿島のストロングポイントとなる強力ドリブラーがにわかに牙をむきます。
29分。伊東のスローインから。鹿島は最終ラインでパスを回し、サイドを変えます。大伍から前方のレアンドロに渡ります。レアンドロは、拳人と室屋を背負い、体重を預けながらターン。二人の間を抜け出します。攻撃スイッチを自ら押します。レアンドロはそのままドリブルで持ち上がり、アタッキングサードに入ります。レアンドロは前方の夢生にパス。夢生はレアンドロのアタックでバランスが崩れた守備網のバイタルエリアに入り、フリーです。夢生はそのまま上がるレアンドロにタベーラのイメージでパスしますけど、レアンドロよりはやく慶悟がカット。でもこぼれたボールが不運なことに夢生に渡ります。ルックアップしてゴールを確認した夢生は、ゴール右隅に決めました。東京0-1鹿島。
受け身に回りながらも失点してしまうシチュエーションは、昨年までの東京であれば少なからずの影響がありました。でも今年は、ファイティングポーズを崩さないどころか、むしろモチベーションに変えることができています。東京はモードをあらため、重心を上げて攻撃姿勢を取りはじめます。
これにより、ディエゴにポストがおさまるようになります。アタッカーが積極的にスペースを狙うようになり、SBも攻撃に目を向けられるようになります。とくに局面において、それぞれの選手がそれぞれの役割を果たす意欲を表すプレーを見せます。ディエゴはチャンスメークと積極的なシュートアテンプト、永井はスペースへの仕掛け、慶悟はペナルティエリア内での最終局面の仕事、諒也は相手陣への切り込みとフリーキッカー、晃太郎はアクセントマン、洋次郎は攻撃ルートの選定、拳人は狩人。守備においては全員が献身性を宿す。なかでも室屋は、雑念のない超アグレッシブな仕掛けで右サイドでオンステージを仕切ります。そして、室屋が魅せます。
39分。ディエゴのシュートが鹿島に阻まれたボールを夢生が拾い、攻撃に転じますけど、これをまるがカットしてヒョンスに渡します。ヒョンスは前方右ライン際の室屋に渡します。室屋は大伍との1on1でチャレンジ。ワントラップで大伍を置き去りにして抜け出します。永木のプレスをスピードでかいくぐった室屋はそのまま鹿島陣深くに進入し、ルックアップ。このときゴール前には永井が飛び込んでました。室屋は高速クロスをゴール前に送ります。このボールは永井には合いませんけど、永井の背後にいた植田にピタリと合いました。オウンゴール。東京1-1鹿島。
マコの活躍は、あきらかに室屋のこころに火をつけました。室屋はデビュー以来、ずっと攻撃面での個性を見つけられずにいましたけど、欠場期間のなかで、超アグレッシブという個性に目覚めたようです。もともと個で勝負できるパワー、スピード、技術を持っていたと思うのですけど、雑念を捨て個性を際立たせる整理のプロセスと結論としての覚悟がまだ至らなかったのでしょう。明確なライバルとしてマコと競り合わせるという荒療治で、健太さんは室屋をモチベートしました。もちろんマコのこころにも同時に火がついたことだと思います。
東京躍動の予感を漂わせながら、前半はイーブンのまま終了。
後半から、東京のギアがまた一段上がります。おそらくハーフタイムで健太さんが煽ったのだと思います。前半とは見違えるような、積極性と献身性を具有するチームに変身します。失点後に一度上げたギアは、まだまだ余力がありました。まずプレッシングがハードになります。コンタクトが強くなったというよりか、ボールホルダーをマークするべく執拗にスプリントを繰り返します。まるでサーキットトレーニングのようなスプリントの繰り返しは、観る側に感動すら覚えさせます。これこそが東京の想いをサポ全員が感じたと思います。
加えてゴールに向かう積極性もギアアップします。チャンスが訪れるとアタッカー全員がシュートアテンプトを狙ってゴールを目指します。なので攻撃のスピードと迫力が前半より数段上回るようになります。チャンスシーンで迷いなくゴール前にアタッカーが顔を出しますから、かならずといっていいほどチャンスはシュートで終われるようになります。そして、ついに逆転ゴールが生まれます。
55分。スンテのGKを拳人と優磨が競ってこぼれたボールを自陣で晃太郎が拾います。晃太郎は室屋に戻します。室屋は前方の拳人にパス。拳人は出し処を伺いながらキープ。鹿島はまったく拳人に寄せずスペースを消します。チャンス無しと見た拳人は一度ヒョンスに戻します。このとき、室屋がやにわに自陣からロングスプリントをスタートします。ふたたびヒョンスからパスを受けた拳人はターン。右ライン際のスペースにロングスルーを送ります。攻撃スイッチが押されました。このスペースに走り込んだのは永井。永井は犬飼を引きつけながら室屋の上がりを待ち、おしゃれハヤブサヒールで前方にスルー。室屋はトップスピードのまま大伍を振り切り、アタッキングサードに入ります。ボールに追いついた室屋はペナルティエリアに入り、植田が寄せてくるのを見て長めのトラップで勢いをつけ、そのまま右足を振り抜きました。ゴラッソ。東京2-1鹿島。
圧倒的な距離とスピードでピッチを一気に駆け抜けた室屋は、絶対的な今日のMOMです。
これを受け、大岩さんが動きます。レアンドロに代えて満男をボランチに投入します。伊東が左メイヤ、大伍が右SB、永木が左SBにそれぞれ回ります。停滞するチームに方向性を与える意図だと思います。それでも満男にして状況を変える起爆剤にはなり得ません。
健太さんが動きます。永井に代えて敬真を同じくトップに投入します。もしかすると守備のスプリント回数でチームNo. 1の献身性を見せた永井ですから、おつかれさまのコンディションの考慮でしょう。敬真も同クオリティのスプリンターですから守備強度は揺るぎません。そろそろ敬真も初ゴールが期待されましたけど、永井のみならずチーム全体のコンディションが落ちていたので、今日は守備に専念です。
大岩さんが動きます。伊東に代えて金森を右メイヤに投入します。土居が左に回ります。東京のプレッシングの圧力が弱まりつつあったのを見て、フレッシュなアタッカーで掻き回そうという意図だと思います。
直後に、洋次郎に頭部接触があり、大事を取りつつクロージングのため、健太さんはクローザーヨネを同じくボランチに投入します。
さらに健太さんが〆ます。晃太郎に代えて遼一をトップに投入します。敬真が右メイヤに回ります。
鹿島は猛攻を仕掛けますけど、結局ペナルティエリアにすら入ることができず、有効なアタックは皆無でした。このまま試合終了。東京2-1鹿島。
勝利至上主義を明るく仲良く楽しむサッカーが粉砕した、歴史的な一夜になりました。勝利への執着とそれを実現するチームへの献身性は、なにもガチのストイックからだけ生まれるものではありません。信じてはいたけど、ゆるくても強くなれるものなんだということをはじめて実感できたかもしれません。室屋のシュワッチ。WE ARE TOKYO♪。眠らない街♪。
シーズン前に、新体制の一体感は勝利によってもたらされると思ってました。根本からブランニューしたスタイルに対する信頼と自信は、結果でしか得られませんから。開幕直後の低空飛行でざわついたむきが一部サポにはあったけど、健太さんと選手たちにはゆるぎがなかったのですね。ぼくらはあらためて、チームにひっぱってもらってることに感謝です。
やはり心配なのは、連戦のコンディションです。週末は調子を上げてきたセレッソ、さらに今月は絶好調ヒロシ広島との対戦も控えています。今日は不可抗力でモリゲを休ませることができたけど、鹿島を倒すために計画無視のエネルギーを出力した気がします。上手にターンオーバーしていってほしいとの思います。