ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

マッシモ・フィカデンティ監督に感謝の想いを込めて

2016-02-07 16:40:32 | FC東京

Grazie di cuore. ミステル。マッシモ・フィッカデンティ監督、今日は、もう一度ミステルと呼ばせてください。心いっぱいの感謝の想いを込めて。

2013年の秋に、新シーズンの新しい監督がイタリアから来られると知り最初に興味が沸いたのは、最先端のサッカーに触れられるかもってことでした。そしてミステルは、ぼくらの期待を真摯に叶えてくれました。最近はテレビでヨーロッパのサッカーをまったく見なくなったので、ミステルがもたらしてくれたサッカーが最先端なのかどうかはわからないけど、少なくともぼくらにはとても新鮮で、なんていうかこれまでのサッカー観戦とは脳みその使う部位が違うような感覚を覚えることができました。

自分はサッカーのプレー経験がないので、サッカーの基本的なメソッドを実践で学んだことがありません。なんでも同じですけど、学習経験がないと、見聞きしたことを頭のなかで整理できないので、たとえば何故勝ったのか、何故失点したのか、理由を知ることができないんです。サッカーはある点でとても単純なスポーツですから、起こっている事象を素直に感じることも楽しいのですけど、自分と同じようにプレー結果の因果関係を知りたいというかたも、なかにはいらっしゃると思うのです。ミステルは、そんなぼくらにとって、教授でした。

ミステルが教えてくれたことを振り返るために、ミステル東京の二年間の足跡を、リーグ戦中心ですけどたどってみたいと思います。タイトルは、今更ながらですけど結局ありませんでした。2016年のACL出場権が唯一の実績と言えるかもしれません。リーグ戦68試合31勝18分19敗勝点111。得点92失点66。最高順位が4位なのは、第一次原体制のときと並びました。いわずもがなですけど、歴代の監督のなかで単年度平均の勝点、勝利数。敗戦数、失点数、得失点差で最高の成績です。象徴的なのは、二年連続33点の失点数。歴代のなかで圧倒的に少ない数字です。印象通り、東京に堅実な守備のメソッドをもたらしてくれました。

ここから2014年と2015年を比較してみたいと思います。勝点で15、勝利数で7アップし、総合順位も5つ上がりました。単純に戦力で見ると、よっち、エドゥー、千真と前線の主力、しかも闘いかたの鍵となる最重要プレイヤーがいなくなった2015年ですから、難しい闘いを強いられることも予想されたのですけど、結果的には好成績を残すことができました。その理由を探ってみたいと思います。

順位の推移をみると、まず特長というか癖というか、低調なテイクオフは、就任期間を通じて同じでした。その意味で、2ステージ制になった2015年は、テイクオフが二回あるということで、結果的にシーズントータルへの影響は少なくなかったと思います。所以は熟成だと思います。結論めいたことを言いますけど、ミステルのサッカーは熟成期間が必要だったのだと思います。

2014年に比べて2015年は1st少しはやく上昇気流をつかみます。第3節神戸戦の勝利できっかけをつかみ、広島戦の敗戦はありましたけど、苦手なGWもまさかの4連勝で突破して、第10節を終えて7勝2分1敗。第5節では、2005年以来10年ぶりに首位も経験しました。2015年は、2014年の14試合無敗記録があれば4試合連続未勝利が4回もあったような、大きな波がなく、比較的安定していたと思います。年間順位も第7節以降は4位以内をキープしました。最終的に4位になりましたけど、直前まで3位を守っていましたので、トップ3まであと一歩というところまで近づいてきてるといえると思います。

ただ、終盤にタレる傾向は2015年も続きました。1stも2ndも大事な首位争いに入る直前に連敗し失速してしまいました。加えて2ndは、秋口に首位に肉薄するところまで行きましたけど結局振り切られてしまったのは、終盤の失速だけでなく、テイクオフ期に川崎と鹿島に敗れたことがあとを引いたと思います。2016年は体制変更で闘いかたも変わると思いますけど、ここぞの局面で力を発揮できない体質のようなものが伝統的にあるので、課題のひとつだろうと思います。

ミステルサッカーの象徴は、なんと言ってもシフト。3センターですね。シフトのチョイスには柔軟になってきています。2014年は3トップか2トップかの差異はありますけど、基本的に全試合3センターでした。2015年は3センターで臨んだ試合が74%に減っていて、4-4-2を採用する場合もありました。むしろ、守備固めのために積極的に使い分けていた印象がありますね。ちなみに主戦の4-3-1-2よりも、勝率で23.3%、平均得点で0.53点、4-4-2のほうが上回っていて、見た目の印象とは違って、実は攻撃特性もあったのかもしれません。成績は6勝1分1敗。とは言え攻撃はどんぐりの背比べで、4-4-2も平均得点は1.75ですからけして高くはありません。一方全体の平均失点は0.97。1を切ったのは史上初。やっぱり守備のチームと言えると思います。

というわけで、もうひとつミステルを象徴するウノゼロ、すなわち1-0の試合の傾向を見てみたいと思います。対象は1-0、0-1、0-0、1-1です。2014年は2勝9分5敗勝点15。2015年は8勝5分3敗勝点29。両年の勝利数の差7のうち実に86%がウノゼロによってもたらされています。2014年から一気に飛躍した最大の要因は、印象通り、あるいはミステルの代名詞通りにウノゼロにあると言っていいと思います。2015年当初の課題は、強力な守備力をベースに攻撃力の改善だと思っていたのですけど、ミステルの選択の方向性は違っていたようです。むしろストロングポイントである守備力を益々強化することだったのでしょう。ただ、ウノゼロとタイトルとの因果関係は、1st優勝の浦和が7勝0敗ですので無いわけではないと思いますけど、年間王者の広島が意外にも1勝4敗で、闘いかたの違いでかならずしも粘り強さだけがタイトルを呼び込むわけではないようです。

ウノゼロを勝ち切れるようになった要因は、1-1が5試合から1試合に減っているので、1点を守り切る守備の安定にあると思います。これを表す良いデータがないのであくまでも印象ですけど、守りかたそのものには両年で大きな違いはないと思います。変わっている部分は、CBのモリゲの相棒と、1stは梶山の復帰、2ndは拳人です。安定感は試合を重ねるごとに増していました。2014年の当初から2015年最終戦まで、ミステル在籍期間を通じて見ると常時出続けた選手は案外限られていて、なかでも最も成長を感じたのは、秀人です。2014年3月から5月にかけて、傍目にも迷いと悩みを感じられました。象徴的なのが第4節川崎戦でしょう。夏場は相太のフィットでチームは上昇気流に乗っていましたけど、攻めるのか守るのかのコンセンサスが取れていないように見えて、浦和戦の激戦以降、守備が不安定になっていました。リセットして臨んだ2015年も、秀人の出場は安定せず、序盤の好調を支えたのは梶山でした。でも、外からチームを見る経験が秀人のなかで蓄積され、舵取りとしてのプレーのツボをどこかでつかんだのかもしれません。梶山が離脱するまでダブルボランチを組むことが多かったですけど、梶山との役割分担を整理するなかで、むしろ秀人自身の特長を客観的に見ることができたんじゃないかと思います。2ndの3センターは、秀人がマンマーク気味でヨネがバランサー、拳人がチェイシングを担うことが多く見られました。秀人がプレーを整理できたことが、守備陣全体のバランスを整えることにつながり、それが守備の安定を生み出したのではないかと思います。

失点の傾向を見てみると、パスからの失点が12%減と改善されています。これは中盤での守備バランスの良さ、つまりスペースギャップを適時に埋めるマネジメント力の高さを表しています。一方で課題もあります。逆にクロスからの失点が12%増えています。全消しカズの出場が減った影響かもしれませんけど、中央のバランスを整えるかわりにサイドエリアがSB任せになる傾向があったのかもしれません。それと、2014年から言われていたセットプレーの守備の甘さは、両年とも12失点と変わっていないので、依然課題だろうと思います。

守備から見てきましたけど、今度は攻撃を振り返ってみます。2014年と2015年の比較で攻撃面を象徴するのは、なんと言ってもよっちです。ポストよっちとなった2015年の2ndは、実は勝率、平均失点、平均勝点で2014年と2015年1stを上回っています。1st24点、2nd21点と予想通り得点力は落ちましたけど、平均得点ではわずかに0.15の違いですから、それほど落ちてはいません。総合力でポストよっちを乗り切ったと言えると思います。むしろ印象では、ポストよっちのほうがチームの完成度は高くなったような気がします。

2014年と2015年の攻撃パターンを比較してみます。シュート数、ゴール数とも微減です。顕著なのはポジション別のスタッツです。FWがシュート数で19.1%、ゴール数で17.7%減少しています。この差は、エドゥーと遼一の成績に拠ります。遼一は2014年のエドゥーの約半分のスタッツでした。もっとも加入一年目ですからフィットに約半年の時間が必要だったことを考えれば、実質半年分の成績ですので、遼一復活の狼煙としては十分だと思います。

逆に改善されたのは、中盤から後ろの選手のスタッツです。とくにDFのゴールが9.4%アップしています。一番の伸びはモリゲです。シュート数で18本、ゴール数で6本上回っています。チームのゴールパターンでは、パス起因が14%減ったのに対し、セットプレーが22本(49%)で、15%のアップです。宏介の直接FKゴールが増えていることもありますけど、数的に一番は、やはりモリゲです。ウノゼロのウノの部分をセットプレーに活路を見出そうと取り組んだことがうかがえますし、成果も残しました。

中盤では、途中離脱がありながらも慶悟がフィットしてきました。シュート数で14本、ゴール数で4本上回っています。さらには、よっちと入れ替わるようにニューヒーローの胎動を感じたのが2ndステージでした。2014年にスタッツがゼロだった拳人、翔哉、バーンズ、容平は、チーム全体のシュートの17%、ゴールの13%を占める活躍を見せてくれました。ここでも総合力でポストよっちに取り組んだ痕跡が見てとれると思います。

2015年のミステル東京をまとめると、セットプレーと総合力で得た最小得点を、完璧にオーガナイズされた守備網で守り切るという基本的な闘いかたでした。たらればはいろいろあるけれど、編成を考えるとこの闘いかたでは、年間順位4位は妥当だったろうと思います。その意味では、ウノゼロの精度を高めるという基本方針は、所期に臨んだ成績を得るためには不十分だったということになるのかもしれません。厳しいようだけど、2015年以上の成績を得るためには、やはり前線のタレントを望むほかなく、そうすればもはや指揮官の選択肢は幅広くなるとしか言えません。2016年の東京が新しい体制を望んだことは、きわめて本質的なところで有り得る判断だと思います。

2014年は、ついに味スタ入場者の平均年齢が40歳台を超えたそうです。Jリーグ平均も2014年に40歳台に入っているのですけど、東京は大幅に平均を押し上げています。よっち、モリゲ、宏介の活躍で若い世代のかたも味スタで多く見かけるようになったなと思っていたのですけど、固定ファンの高齢化を目立たなくするほどではなかったのですね。Jリーグが新規ファンの獲得に舵を切っているので、東京の経営としても、ミステルの玄人ウケする地味なサッカーではなく、もっとわかり易く華やかなサッカーを目指す必要もあるのでしょう。

でも。ミステルはぼくらに本当に多くを残してくれました。技術的なことはもとより、とても紳士でそれでいてフレンドリーな姿勢は、東京のチームカラーにホントにぴったりで、なんていうか癒されました。自分も一度だけですけど、仁賀保で緊張しながらお声がけしたら、「こんにちは。元気?」と笑顔で気さくに握手してくれました。大きくてあったかい手を忘れません。だから、こころのなかでは、先生としてのミステルにまだまだ学びたいことがあるし、人としてのミステルに包まれていたい気持ちがあって、やっぱりさみしいです。

自分にとってのミステル東京の究極形は、2015年2ndステージ第12節山雅戦と第13節広島戦の連勝です。そう2試合連続1-0。なかでも、現地観戦はできなかったのだけど、アウェイ広島戦は、首位広島に対しあるいは結果的に2015年の王者広島に対し、完璧にオーガナイズできた試合でしたから、勝てる大人のチームに成長したんだなと遠い目をしながらテレビを観ていました。広島戦で極まった守備については、こんな印象を書いてます。「東京は広島の前線3人をマンマーク気味に守ります。ドゥグラスにはヨネ、晃誠には拳人をつけます。それぞれ犬ポジ最適任者ですから、ドゥグラスも晃誠もほぼ自由を失います。それに、先にも言いましたとおり、ドゥグラスと晃誠の動きは単調ですから、ヨネも拳人も守りやすかったと思います。横の動きをする寿人は、秀人、モリゲ、まるがゾーンで守ります。このマークの受け渡しも完璧でした。さらには、広島唯一かつ絶対の中盤の中継点である青山にも、河野が密着マークでケアし続けます。自らの意志で両翼を閉じ、東京の作戦で心臓部を止められては、広島の攻撃が活性化しようがありません」。そしてこの記事は、こんな賛辞で閉じています。「山雅戦もパーフェクトだと思いましたけど、今日はなにしろ首位広島が相手ですから、パーフェクト オブ パーフェクトですね。ミステルのプランとそれに答える選手のワーク。これがガッチリと噛み合いました」。

ミステルはぼくらに、守備の美しさを教えてくれました。守備をオーガナイズすることの具体的な形を見せてくれました。かつてなかったことですけど、東京の完璧な守備網を前に相手の攻撃が手詰まりになったとき、味スタで拍手が起こるようになりました。これこそが、ぼくらが守備美を鑑賞できるようなった明確な現れです。ほぼすべてのアウェイの地に行きましたけど、守備で拍手が起こるのは、広島、ガンバ、浦和くらいです。サポが守備の審美眼を持つクラブこそ、優勝争いに資するのかもしれません。だからミステルは、タイトルこそなかったものの、近い将来に東京が戴冠する礎を残してくれたのだと思います。東京とぼくらは、この財産をしっかり受け継いで行く使命があると思います。

最後になりましたけど、もう一度ミステルにいっぱいの感謝を贈りたいと思います。鳥栖での再会を楽しみにしています。Grazie di cuore, Mister!


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