ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

息をひそめて -シリア革命の真実

2013-11-16 13:26:55 | アート・文化

東京の紅葉が始まりましたね。東京大学正門の銀杏並木も、黄色と緑色のシンメトリーなコントラストが綺麗です。

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初観劇から5日たちました。演劇は後を引く効果があるのでしょうか?。それが普遍性なのかこの作品に限るのか、なにしろ初体験ですから、いまはまだわかりません。もし演劇が普遍性を持つのであれば、個人的にセンセーショナルな出会いをしたかもしれません。

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ワンツーワークスの「息をひそめて -シリア革命の真実」を観ました。赤坂REDシアターです。

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おそらく珍しいのではないかと思いますけど、ドキュメンタリー作品です。登場人物はすべて実在で(または、実在した)、台詞もインタビューに基づくもので、翻訳と演出上のアレンジはあると思いますけど、ほぼ発言を忠実に再現しているのだそうです。

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タイトルで推察される通り、テーマはシリア情勢です。登場人物は20人。萩原流行さん演じるクリスチャンのサミー以外は反体制側のインタビューで構成されます。はじまりは、2010年10月に起こったジャスミン革命と2011年のムバラク政権崩壊に刺激を受けたスンニ派のシリア国民が、非武装の平和的抗議活動をアンダーグラウンドに展開するところから始まります。抗議活動の拡大と表面化、組織化に対して、アラウィー派のアサド政権の圧迫が次第に激化。軍による実力行使がシリア国内で始まります。これに対し反体制側の一部は自由シリア同盟、アル・ヌスラ戦線などを組織。やがてシリア内戦に至り、現在も解決の端緒すら見えず、争いの構図が複雑化し泥沼状態が続いています。2012年8月の山本美香さんの銃殺事件。2013年8月には、政府軍による化学兵器の使用が報じられました。日本でもメディアが取り上げはじめます。つい先日も、国連の仲介による話し合いの提案に対し、一部の反体制側が同意せず、実現に至ってないというニュースがありました。

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ドラマはこの流れをインタビューと時々流れるフイルムだけで表現します。その他の演出は効果音くらいです。とてもシンプルなんだけど、背景と言葉が強烈ですから、強いメッセージが直接こころに響きました。この作品は、イギリスの劇作家3人が、実際にシリアに入って取材した地元の人のインタビューで構成されています。台詞の端々にも、イギリス人に対して語っている様子が伺える箇所が何度か出てきます。作者の意図が反体制側に寄っていることもあって、アサド政権側の意見は、比重が少ないです。サミーとデモ参加者くらい。なので、真実、シリアの複雑さをレポートするものではないと捉えたほうがいいと思います。それでも、この作品のメッセージは、シリアの現状に対するポリティカルな意味での真実追求ではなく、つまり体制やイデオロギーの是非ではなく、人道的な意味でシリアで起こっていることの事実を伝えることがテーマなんだと思います。多くの場面は反体制側の被害を描写しますけど、時々、政府側の住民や軍人の被害を伺わせる台詞もあります。自由シリア軍にアルカイダがついていたり、そのアルカイダが自由シリア軍を攻撃したり、もはや事態は、誰が何のために争っているのか、わからなくなっていることが想像されます。それでも、そこでとてつもない数の人が無残な死を被っています。今年7月の国連発表では、軍人民間人を合わせ、国内の死者数が10万人に及んでいるとのことです。

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日本に暮らす自分には、現実感がありません。ニュースでしか見聞きしなかった以前も劇を見た今も、やはり肌身に実感することはありません。正直に言うと、被害規模が大きければ大きいほど、現実感が喪失されます。これは、東日本大震災でも経験しました。実際に現地を見ないと、その空気から伝わる質量に比する実感はありません。それでも、ただ「シリア情勢」と大雑把に括る固有名詞ではない、何か名状し難い憤りと悲しみを、劇を通じて感じることができました。「シリアで今まさにこの時も、普通ではない理由で普通ではない数の人が死んでいる」。それこそが、この作品に関わる人のメッセージなんじゃないかと思います。

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初観劇にして、めっちゃ濃い作品でした。萩原流行さんと松田洋治さんというテレビや映画でおなじみなキャストを間近で見れたのも感激でした。形桐レイメイさんが印象に残りました。若い俳優さんらしいナイーブな青年の雰囲気があって、ひょっとしたらこれからメジャーメディアでもお見かけするんじゃないかと思います。

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観劇後、こちらも初のガレットをいただきながら、いろいろ問題はあるけどやっぱり普通の暮らしを普通に送れる我が国を想いました。


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