ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

愛された時間のなかで

2016-12-21 20:45:43 | 加賀さん

2015年1月13日。加賀さんは少しまぶしそうな目で、澄み渡った空を見上げていました。いつになく遠くを見ているような表情は、あの日の空の美しさとともに、期待と希望を想わせました。

この2年間のスタッツを振り返ってみます。トータルで11試合出場プレー時間は473分。スタメンフル出場は2回。ゴールはゼロ。受けた警告は3。年度別に見ます。2015年は、リーグ戦の4試合出場はすべてサブで計108分。ACLは3試合出場で、スタメンフル出場が1試合の計180分。残りの2試合は悔しい前半での交代でした。天皇杯は1試合のみでしたけどスタメンフル出場。一年間合計378分間で4.2試合相当です。サブは11回。2016年はわずか3試合の出場に留まりました。リーグ戦はスタメンで出場した6月のガンバ戦で71分間。ルヴァンカップは8月の神戸戦の途中出場1分間と10月の東京戦23分間です。一年間合計で95分間。サブは14回。

あえてデータを持ち出すまでもなく、レッズでは、ことプレーについては間違いなく、加賀さん自身にとってもぼくらファンにとっても、とても満足できるものではありません。結局、加賀さんがレッズのなかでどんな化学反応をもたらすのか分からないまま時が過ぎました。その意味では、加賀さんは御簾の向こう側の麗人のごとく、ミステリアスな存在だったといえるかもしれません。

でも、だからこそ、加賀さんは眩しい光彩を放っていたと思います。ぼくはレッズの加賀さんを観念として捉えています。存在としてのひとつの到達点に達していると思います。加賀さんはレッズで大きく進化しました。それはプレーでもキャラクターでも、そしてルックスでも。この二年間で、成熟した大人の魅力を纏いました。

一番嬉しいことは、長年悩まされ続けた怪我から解放されたことです。2016年は、二週間を超える長期の離脱が一度もありませんでした。加賀さんのターニングポイントとなった2010年の頚椎骨折以来、東京に来てからも頸や足の怪我で、毎年のようにシーズン後半はリハビリをしていました。晩秋の長い影を写して、小平で黙々とリハビリをしていた寂しげな姿が目に焼き付いています。ようやくトレーニングマッチに参加できたのはもう木枯らし吹く時期で、別人のように痩せた頬に切ない想いをした記憶がいまも鮮やかです。その苦しみから解放され、ふたたびサッカーに集中できるようになったことは、加賀さんのリニューアルのためにとても大切な時間だったと思います。それどころか、むしろ体がひとまわり大きくなり、筋肉質になってきたと思います。いくたびの怪我を経験して、純粋な肉体を補強する科学的なアプローチに取り組んだのではないかと思います。年間を通じてフルに動けたのは、2011年以来5年ぶりです。その真の成果をプレーで十分に表現できなかったことは残念でなりません。

プレー面は、さすがにサンプルが少なく、正直進化の確認は困難です。でも、進化は確かです。貴重なサンプルはとても象徴的でした。今年唯一のスタメンとなった2016年6月のアウェイガンバ戦です。レッズ加賀さんのキーワードは、クレバーです。より具体的に言うと、局面での様々な選択肢のなかで、加賀さんに求められる最善をとてもクイックかつスムーズにチョイスできるようになりました。スピードとコンタクトに安定感が加わったイメージです。レッズに入って18ヶ月の苦心の果てに掴んだニュースタイルです。加賀さん自身のプレーイメージ、フィジカルコンディション、ミシャのチームプレービジョンと加賀さんへのオーダーが調和されず、かなりの時間をもどかしさのなかで過ごしたのではないかと思います。苦しんだ時間のなかで、内面への問いかけやサッカーの学びを経て今があるのでしょう。それは、レッズの環境にいたからこそ得られた財産だと思います。

レッズのチームカラーは外から見ていた印象とは違い、サポーターを含めてファミリー性の強いクラブです。それが、もともと仲間を大切にする加賀さんのキャラクターに合っていたのだと思います。とくにレッズのなかでの居場所を見つけてからは、明るい笑顔が印象的になりました。ミシャと選手たちが作る家族的な雰囲気のなかで、個が先立つ選手も気持ち良さそうに自然に過ごすことができているように見えます。加賀さんは、若手やチームを支える現場のスタッフにも目が届くアニキ肌のムードメーカーでありながら、けして輪の中心にいたがらないひとですから、レッズの環境は、加賀さんにベストなポジションを与えてくれたのかもしれません。

でもそれが、客観的には戸惑いでもありました。試合に出られないフラストレーションをトレーニングで表現しないことは、加賀さんが大人になったと受け取っていいのか、それとも加賀さんから野生を奪うものなのか、分からなかったからです。けしてプロプレイヤーとしてのプライドや競争心を失ったわけではないと思います。レッズの環境のなかでは、それを内に秘め、自分の向上に専念していたんじゃないかと思います。その成果が、コンディションの向上であり、プレーの安定なのでしょう。

加賀さんがチームにもたらしたことは、独特のツンデレな間を持つ触媒としての効能と、真摯でストイックなトレーニング方法だろうと思います。とくに、サッカー選手のなかでは格別に美しいランニングフォームは、基礎的なトレーニングがプレーの向上に繋がることをチームメートに気づかせたことでしょう。たとえば食事や睡眠、フィジカルなどの繊細なケアは、意識を持った選手が触媒となり、チームに浸透していくのだと思いますし、そのようなチームは強くなっていくと思います。

ぼくが加賀さんを好きなホントの理由は、もちろんルックスです。レッズでの加賀さんは、コーディネーションで遊んでみせてくれました。ぼくが一番好きな加賀さんは東京の新入団会見のころで、まだ磐田時代のやんちゃな雰囲気を残して、とんがり気味で襟足が長めのヘアスタイルです。東京では、衝撃の坊主事件はともかく、だいたい似たようなヘアスタイルで通していた印象です。加賀さんを象徴するプーマも、ほぼ黄色か白でした。この二年間は、なにがどうなったのか、毎月のようにヘアスタイルを変えていて、時折公式やファンのかたから送っていただく画像でチェックするのが楽しみでした。スパイクも、新入団会見の衝撃の赤から始まり、モデルも二度変わりました。アップシューズも黄色以外に青や白もありました。ほばストレートだった印象が強いヘアスタイルはウェーブ基調になりました。前髪パッツンのときはまるでヘルメットです。それが、あのソリッドなルックスに可愛らしさを加えることになるのですから、まったく罪なものです。

2017年、加賀さんはモンテディオ山形に移籍します。正直言うと、もう少しだけJ1で勝負する姿を観たかったです。レッズ独特のチームオーダーで出場機会が限られ、パフォーマンスのイメージがあまり良くないことが残念だけど、アデミウソンや翔哉と対峙しても安定していたので、J1チームからリクエストはあると思っていました。J1とJ2ではサッカーのスタンダードそのものが違いますから、レッズの二年間で培ったクオリティを発揮する場に資するのか、心配です。またゼロからのスタートだとさすがに辛いですから。

それからモンテは2017年シーズンからガラッと体制が変わることも不安要素です。石崎さんが引かれ、木山さんが新監督に就任されました。石崎さんのサッカーは既知なので、加賀さんもフィットし易いと思うし、石崎さんのライトバックは加賀さんに合っていますから。木山さんのサッカーは観たことがありません。過去加賀さんとの縁もないようですから、やはりゼロから信頼を作る必要があります。

さらに言えば、加賀さんは首都圏に来て5年。札幌も合わせると7年間を都会で過ごし、すっかり都会の人の雰囲気を纏うようになりました。こだわらないことに対しては徹底的におおらかなキャラクターは変わらなくて、その意味では大きくて広い空の下が似合うのだけど、他人、とくにファンとの適度な距離感がある都会のクラブのほうが、過ごし易くはあると思います。ご家族にとっても、お子さんも大きくなってくるので、就学環境の選択も悩ましいと思います。

でも、そんな心配ごとをぜんぶひっくるめて包み込んでしまうほど、嬉しいことがあるんです。加賀さんはついに東北に帰ります。15年ぶりの帰郷です。秋田ではなくお隣の山形です。お隣といっても、ふるさと潟上から天童までは、男鹿線から奥羽本線に乗り換えて片道5時間半。羽越本線から陸羽西線経由の奥羽本線でも同じく片道5時間半。東京-天童が山形新幹線一本でちょうど3時間ですから、東北の時間的空間的な広さを実感します。そんな広大な東北の地にこそ、加賀さんの伸びやかなランニングフォームが似合うことでしょう。そしてふたたび、あの野武士のごとく野生的なスプリントを取り戻してくれると思います。

そして、きっと加賀さんは、モンテをJ1に戻すために働きたいのだと思います。新しい目標は、自身の復活もさることながら、チームを大切にする加賀さんのことですから、東北にもっと高いレベルのサッカーをもたらすことだと思います。Jクラブこそ、ベガルタ仙台、グルージャ盛岡、福島ユナイテッドFC、そしてふるさと秋田のブラウブリッツと、青森以外の全県にありますけどトップカテゴリーは仙台だけ。より高い目標を東北の子どもたちに見せてあげることが大切です。選手では小笠原満男選手や芝崎岳選手が活躍されてますけど、お二人とも秋田県外人。残念ながら秋田出身のJ1選手がいなくなってしまいましたから、東北を、そして秋田のサッカーを盛り上げるため、モンテのJ1復帰は加賀さんにとっても大きな願いとなっていることでしょう。

山形は夏が暑くて冬が寒い盆地気候だそうです。天童でのトレーニングで、加賀さんの光る汗と輝くふともも、そしてタイツ姿がますます艶っぽくなりそうです。

末筆になりましたけど、レッズの加賀さんファンのみなさんには大変お世話になりました。大原での様子を教えてくださいましたし、写真をお送りいただいたり、公式グッズを分けていただいたりしました。なかでも、手作りの加賀さんグッズを作っていただいたり、このブログを見つけてご紹介いただいたときは、本当に嬉しかったです。有志のかたで横断幕を作っていただいたときは感動しました。東京サポでありながら加賀さんを追うことは想像以上に苦しくて辛いこともありましたけど、クラブの垣根を越えた加賀さんファンのファミリーに入れていただいた気持ちがして、とても嬉しかったです。なによりも、ほとんどプレーする姿を見せられないにも関わらず加賀さんを受け入れ応援していただいたことは、アカの他人が言うのもおかしいかもしれないけど、とてもありがたかったです。二年間、本当にありがとうございました。

ぼくは加賀さんを追い続けます。ちょっと遠くなるけど、東京と山形はJ1とJ2で袂を分けますから試合に行き易くなるかもしれません。それに山形は大好きな地ですから。モンテサポーターのみなさんにも、加賀さんが愛されるといいなと思います。

2017年が加賀さんにとって素敵なときになりますように。