かくれて咲く花

~凛として~

白と黒、あるいは最高と最低

2009-06-09 18:22:53 | Weblog


お休み明けの月曜日の朝は、どんなにいまの境遇が辛かったころに比べて格段に快適であっても、やはり思う。「あー、行きたくないなあ・・・」イジワルな顔ぶれを思い浮かべ、こういう人たちと同じところで働いているということがすごく恥ずかしい、とすら思う。

そんな気分で出勤した昨日、資料づくりを命じられ、苦手なエクセルと悪戦苦闘。やっとこさ完成し、上司からOKもらって、ふーひと休みとホッとする間もなく部署の打ち合わせへ。見たくない顔がいるから、軽々に顔を上げられないほど緊張する会議だ。だいたい始まる5分前を目安に会議室に到着するようにしている。それより早すぎても、始まるまでの1分1秒が重苦しく、これより遅すぎたら「遅い」という視線が突き刺さって痛い目に遭う。端っこの末席に着席するが、「見たくない顔」による、恒例の「上から下まで服装等のチェック」にさらされていたたまれない。「見たくない」というよりも、「目が合うと石にされる」というギリシャ神話に出てくるメドゥーサ並みの妖気を発しているので、目を見てはならない、という描写が正しい。会議が始まれば、いちいちうるさいことを除けば無視していればいいのだが、ぼんやりしていたら悪意の矢が飛んできた。とっさのことで、うまく身をかわせなかった。なんであんたにそんなこと言われなあかんねんと内心思いながらも、すごくイヤな気持ちになった。そのときの悪意だけじゃなくて、「ああこうして、この人は私のいないところでも、私の印象を悪くするようなことを言ったりしてるんだな」、とピンとつながることがいくつか思い出され、イヤな思いが増幅し、久々にこうした人種の悪意にやられて、元気が出ないままとぼとぼと帰った。

ああいう人っているんだなあ、この世からそう簡単に絶滅することはないんだろうなあと、いささか絶望的な気分に苛まれつつも、一方では上司は私の仕事ぶりを評価し、理解してくれていることが救いであった。さらにその上の上司になると、これまた素晴らしい人格者で、こういう立派な人が世の中にいるということを知っていることで、人間全体に対して絶望しなくてもいいなと思わせてくれる人のひとりである。愚痴を言わない、悪口を言わない、誠実でまじめで穏やかで。たとえば最近、彼がとても裏で尽力したことで結果に結びついた仕事があった。だけどそれを自分の功績だなどと誇るようなことをしない。自分がやったわけでもないことを「あれはオレがやった」と言い散らす、「自分が自分が」タイプが多い中で、この美点はひときわ輝いている。だけどその光は、穏やかでやわらかなので、あまり多くの人は気がつかない。だけど接した人の心に、必ず感銘というインパクトをのこし、信頼される。悪意を受けたその直後に、この上司の穏やかな知性とやさしさにふれて、なんだか涙が出そうになった。ああ、今日私は最低と最高を見たと。

理由のあるなしにかかわらず、人から憎まれたり悪意を向けられたりするのは悲しいことであることには違いない。だけどさんざんダークな人たちを見ているおかげで、素晴らしい人たちの美点がより輝いて見えるし、気付くこともできる。悪意の攻撃を受け、心が暗い方に支配されそうになっても、「ああいう人のように立ち居振る舞い身ぎれいにいたい」と切り替える力をくれる。人間、見たこともないようなことはなかなか真似できないが、目の前で「人としてこうありたい」と思わせてくれる人を見たら、「やっぱり真・善・美って素晴らしい」と思えるものである。こんな素晴らしい上司に仕えているのだから、同僚に多少イジワルな人たち(←複数形)がいるくらいでバランスが取れてるのかもしれないとも思う。

白がより白く見えるために、黒があるとどこかで聞いたことがあるけれど、オセロゲームでいえばほとんど黒に支配されそうなところで、輝くような白さを持った人たちがポツポツとだけどいる。劣勢かもしれないけど、真黒になってしまわないために、白を増やさないといけないし、自分も白くいたいと思う。最低のあとに最高にふれて、しみじみと思った。やっぱり人間っていいな。どんなにいやな目にあっても、人間のすごく美しい部分を見ると、感動して涙が出てしまう。今朝はテレビで、日本人のピアニストが米国のコンクールで優勝したというニュースをやっていた。「全盲の」ということももちろんだけど、彼がすごくピアノが好きで、一生懸命努力して、才能を開花させたことは本当に称賛されるべきだ。優勝者に贈られるメダルを授与するアメリカ人が、彼を2度、ぎゅっとハグするのを見て涙が出た。素晴らしいものに対して素直に素晴らしいと称賛を惜しまず、ハグという形で彼に気持ちを伝える。自分は全然努力もせず、文句ばっかり言い、人を陥れるようなことをする人たちがいるなかで、本当に美しい人たちもこの世にはいるんだと思って、ぐっときた。

もうひとつ、とっておきの美しい人のお話。
私があるプロジェクトに応募して、合格したと聞いて、よかった、おめでとうと涙を流してわがことのように喜んでくれた、私の大好きな先輩。「のび太の結婚前夜」での、しずかちゃんのお父さんのことばを思い出しました。


「のび太くんを選んだ君の判断は正しかったと思うよ。 あの青年は人の幸せを願い、 人の不幸を悲しむことのできる人だ。 それが人間にとって大事なことなんだからね。彼なら、まちがいなく君を幸せにしてくれると、僕は信じているよ」


こんな心の美しい人がこの世にいることが嬉しかったし、いつも励ましてくれて、仲良くしていただいていることの幸せで心が熱くなりました


「ドラえもん」には感動するお話がいっぱいあるのですが、こちらの名言集を見てまた泣いている私であります。