先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

時代遅れでポンコツのアメリカ大統領選挙はこう変えよ?!

2020年11月09日 08時48分47秒 | 日記
 
 
 
ニューズウィークがアメリカの大学のサム・ポトリッキオ教授の『時代遅れでポンコツのアメリカ大統領選挙はこう変えよ』という記事を載せていたが、確かに演説が上手くて当意即妙の受け答えが出来る政治家が優れているとされる傾向は大いにある。「本当の勝者を選ぶにはスポーツとサバイバル番組の要素が必要」というのは確かだと思う。
 

<お祭り騒ぎの選挙集会や瞬発力がものを言う討論会でリーダーの資質は見抜けない。本当の勝者を選ぶにはスポーツとサバイバル番組の要素が必要>

11月3日のアメリカ大統領選投票日は、アメリカ現代史の中で政治的主張が最も激しくぶつかり合った日として歴史に記憶されるかもしれない。

しかし、この政治的論争と対立の時代に、大半の人の意見が一致することがある。それは、アメリカ大統領の選考方法が大統領の重責と釣り合っていない、という点だ。現在の選挙システムでは、大統領が有権者の失望を買うことが避けられない。アメリカは大統領選びの方法を考え直すべきだ。

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現在の選挙プロセスは、候補者の統治能力とは全く関係のないことをめぐる争いに終始している。大統領選を勝ち抜いて大統領の座を手にするのは、選挙運動を最も上手に行った候補者だ。それが「よい大統領」になる資質を持った人物だとは限らない。アメリカ大統領は、軍の最高司令官、行政機構の最高責任者、国民の声の代弁者、与党の指導者、世界のリーダーなど、実にさまざまな重い責務を担っている。

しかも近年、大統領が対処しなくてはならない課題は、より手ごわく、より多くなっている。それなのに、現状の大統領選びのプロセスでは、こうした難題に対処する実務能力の持ち主がホワイトハウスの主になる保証がない。

大統領選の仕組みを変えるべきだといっても、有権者が国のリーダーを選ぶ権利を否定し、政治学者に人選を任せろと言いたいわけではない。むしろ、イデオロギー対立の影響を弱めることにより、一般市民が担う役割を強めるべきと、私は考えている。

有権者は資質を軽視?

2017年にドナルド・トランプが大統領に就任した9カ月後、ワシントン・ポスト紙とメリーランド大学が共同で実施した世論調査は、政治リーダーに対する国民の根深い不信感を浮き彫りにした。この調査によれば、政治家の倫理観と高潔性について好ましいと評価をしている人は14%にすぎない。

71 %の人は、アメリカの政治は落ちるところまで落ちてしまったと考えている。しかも、大多数の人は、この状態が一時的な現象ではなく、ずっと続くとみている。最近の世論調査によれば、トランプとジョー・バイデンのどちらが今回の大統領選で勝っても、アメリカ人のなんと40%はその人物を正当な勝者と認めるつもりがない。

どうして、こんなことが起きているのか。大半のアメリカ人は、自分と異なる政党の支持者が生きている世界を想像することすらできなくなっているのだ。直近2人の大統領に対する野党支持層の支持率は驚くほど低い。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長よりも人気がないくらいだ。

アメリカの政治的二極化が進んだ結果、大多数の国民は政治的イデオロギーに基づいて選挙で一票を投じるようになっている。最も有能な候補者に投票したと主張するかもしれないが、実際には低レベルの党派的選択をしているにすぎない。

では、単に選挙が上手な人物ではなく、真の統治能力を持った人物を選ぶために有効なシステムを設計するには、どうすればいいのか。それは難しくない。大統領選のプロセスに、スポーツ選手のランキングのような仕組みと、テレビの無人島サバイバル番組のような設定を取り入れればいい(いずれもアメリカ人の大好物だ)。

その上で2段階の選考過程により、候補者をふるいに掛けることを提案したい。選考プロセスの第1段階は、大統領選投票日の3年近く前に始まる。大統領を目指す候補者たちはこの期間に、スキルを競い合う大会に参加し、マネジメント手腕の査定を受け、コミュニケーション能力も採点される。

 
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まず、スキルに関しては、テレビのクイズ番組のような形式で内政と外交に関する知識量を競う大会や、未来のことを予測する能力を競う大会など、いくつかのトーナメントを行う。大統領を務めるためには、豊富な知識が不可欠だ。日本の外相の名前やNATO(北大西洋条約機構)の設立理由を答えられない人に、大統領になってもらっては困る。

400万人超の職員を擁する行政機構のトップ

それに、大統領には為替相場や株式相場の動向について平均以上の予測能力を持っていてほしい。少なくともその程度の予測能力を持っていない人に、国のリーダーは務まらない。高い予測能力は良質な意思決定の土台だ。経営コンサルタントたちが有力企業の経営チームの力量に目を光らせるのと同じように、大統領を目指す人たちのマネジメント手腕も厳しく点検されるべきだろう。

何しろ、アメリカ大統領は400万人を超す職員を擁する行政機構のトップなのだ。その人物は、正しい問いを発することができているか。部下に適切なフィードバックを行っているか。本当に優秀な人物をスタッフに登用しているか。組織づくりはうまくいっているか。こうしたことを確認すべきだ。

さらに、大統領を目指す人は、高度な説得力を持ち、国民の心を動かせなくてはならない。人々に思わず耳を傾けさせるようなコミュニケーション能力を持っている必要があるのだ。その人物は、高い言語運用能力と即興での対処能力を併せ持っているか。聞き手の五感に働き掛けると同時に、客観的なデータに基づいて話すことができるか。このような点を見極めたい。

この第1段階は、約18カ月間にわたって行う。スキルを精査するためにも、予測能力を試すためにも、これくらいの期間が必要だからだ。最終的にそれぞれの候補者に点数を付け、スポーツ選手のようにランク分けを行う。

例えば、その年の大統領選に名乗りを上げた候補者が20人いたとすれば、上位5人がリーグA、次の5人がリーグB、その次の5人がリーグC、最下層の5人がリーグDという具合に振り分けられる。

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パフォーマンス 選挙集会で支持者の歓声に応えるトランプ(10月28日、アリゾナ州)

 

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ここで、選挙戦は第2段階に進む。その後の選挙戦でリーグAの候補者はメディアで大きく取り上げられるし、リーグAのテレビ討論会は視聴率が高くなり、候補者の発言も厳しくチェックされるだろう。その結果、派手なキャッチフレーズやツイッターで毒舌を発する人物ではなく、大統領として成功するために重要な資質の持ち主が高く評価されることが期待できる。

ただし、そのためには、テレビ討論会の在り方を変えなくてはならない。とっさに簡潔で効果的な言葉を発する瞬発力を問うような討論会ではなく、候補者の知性と知識を問い、意見が異なる人たちを説得する能力を試すような討論会にすべきだ。

「中国と国境を接している国の中で、アメリカの外交政策にとって最も重要な国はどこだと思いますか。その国のリーダーは誰ですか」「あなたは、医療保険改革法の延長に賛成票を投じました。それが正しい判断であると、反対意見の持ち主をどのように説得しますか」。例えば、このような問いを候補者に投げ掛けてはどうだろう。

テレビ討論会での振る舞いが有権者にどのように評価されたかに基づいて、候補者は上位リーグに昇格したり、下位リーグに降格したりする。第1段階の終了時にリーグAに位置付けられていた候補者でも、討論会で失態をさらせばリーグBに降格する可能性がある。逆にリーグDだった候補者も、討論会で目覚ましい成果を挙げれば最終的にはリーグAまで上り詰めることもあり得る。

大統領選でこのようなプロセスを採用すれば、有権者が大統領を選ぶ権限を一切奪うことなく、候補者の資質をもっと厳しく審査できる。これにより、大統領に必要な能力を最も十分に備えた候補者が選挙戦で有利になる。メディアで大きく取り上げられて、有権者の注目を集めやすくなり、リーダーとしての信頼性も高まる。

アメリカ人は、勝者を好む傾向が強い国民だ。派手な政治パフォーマンスが得意な人物でも、第1段階で下位のリーグにランク付けされて、その後のテレビ討論会でも精彩を欠けば、有権者からまともに相手にされないだろう。一方、知名度や資金力が乏しい候補者でも、高い資質と手腕を持っていれば、その能力を評価されて最有力候補に躍り出ることができる。

大統領選のプロセスは、このように「よい大統領」になり得る資質の持ち主を選び出すものであるべきだ。選挙の達人が幅を利かせるものであってはならない。

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新型コロナ死亡患者、肺に重度の損傷。また、新型コロナウイルスが多数の種類の細胞に残り続ける!

2020年11月09日 08時13分07秒 | 日記
 
ニューズウィークによると、『新型コロナ死亡患者、肺に重度の損傷 症状「長期化」の原因か』という。

 

英国の科学者などが行った研究で、新型コロナウイルスに感染して死亡した患者の大半で肺に治りにくい広範な損傷が見られたことが分かった。写真は新型コロナウイルス感染者の肺のレントゲン写真。テキサス州ヒューストンの病院で7月撮影(2020年 ロイター/Callaghan O'Hare)

英国の科学者などが行った研究で、新型コロナウイルスに感染して死亡した患者の大半で肺に治りにくい広範な損傷が見られたことが分かった。

新型コロナはごく一部の患者で症状が数カ月も続く「長期コロナ感染症(long COVID)」と呼ばれるケースが知られており、今回の発見が原因の解明につながる可能性がある。

研究を行った科学者らは、新型コロナ感染症を引き起こすウイルスに特有の特徴も発見した。

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共同で研究を指揮した英キングス・カレッジ・ロンドンのマウロ・ジャッカ教授は「今回の研究結果は新型コロナ感染症が、ウイルスに感染した細胞の死滅によってもたらされる単純な疾病ではなく、こうした異常な細胞が肺内部に長期間残り続けるために引き起こされている可能性が大きいことを示している」と述べた。

研究チームは今年の2月から4月にかけてイタリアのトリエステ大学病院で死亡した患者41人の肺、心臓、肝臓と腎臓の細胞サンプルを分析した。

ジャッカ氏によると、肺以外の臓器にはウイルス感染ないし長期の炎症の明白な兆候は見られなかった。しかし「肺の構造は非常に広範にわたり破壊され」、正常な細胞は「ほぼ全てが瘢痕組織に置き換わっていた」という。

また今回の研究では、新型コロナウイルスが多数の種類の細胞に残り続けることも明らかになった。研究結果は医学誌「ランセット・eバイオメディシン」に掲載された。

ジャッカ氏は「新型コロナウイルスに感染したこのような細胞の存在が、肺に見られる大きな構造変化を引き起こし、数週間から数カ月も続く症状の長期化を招いている可能性がある」と指摘した

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スマートフォンの値下げが止まらない?

2020年11月09日 08時10分27秒 | 日記
 

TechTargetというIT系サイトが、『スマートフォンの値下げが止まらない、新型コロナ以上に深刻な理由「iPhone 12」が流れを変えるか』というレポートを載せている。低価格モデルの投入や発売直後の値下げなど、デバイスベンダーの間でスマートフォンの価格を下げる動きが広がっている。パンデミックによる影響は否定できないが、アナリストはより根本的な問題があるとみるとしている。 

一番の理由として、機能が十分になって、新しいスマホに買い替える必要がなくなっているとしている。5Gでも速度や通信料が大幅に増しているが、スマホ消費の主力である一般ユーザーにとっては、4Gでも、十分と判断しているユーザーが大半思われる。やはり、通信費が大きく安くならない限りは、スマホ市場は勝手のような活気はない。最近、4Gの通信費も安くなっているような印象が受けるが、ソフトバンクの値段を見ると、月のデータ量が50Gが8千円は変わらず、その代わり20Gを半額にしているが、実態は、値段は下げていない。少量のデータしか使わない、ユーザー向けの10Gとか5Gは変えていない。ずる賢いように見える。

 

デバイスベンダーは近年かつてなく価格が高騰していたスマートフォンの値下げを強いられている。例えばSamsung Electronicsは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まった2020年3月、北米で「Galaxy S20」を999ドルで発売したが、数週間で値下げしなければならなかった。「Samsung Electronicsは非常に高額な価格設定に打って出たが、計画した台数のごく一部しか売れなかった。彼らの賭けは失敗に終わった」と、調査会社IDCのアナリストであるライアン・リース氏は説明する。

 Appleは2016年に、主力モデルの他にローエンドの選択肢も必要だと考え「iPhone SE」を発売した。Huawei TechnologiesとXiaomiも、300~500ドルながらも機能豊富なスマートフォンを市場に投入している。

 調査会社Gartnerは2020年8月に発表した2020年第2四半期(4~6月期)の市場調査結果で、スマートフォンの世界販売台数が前年同期比で20.4%減少したと説明している。同年第1四半期(1~3月期)も前年同期比で20.2%減だったことから、スマートフォンの需要が依然として弱いことを示す。IDCが2020年8月に発表した報告も同様で、2020年第2四半期のスマートフォンの需要は前年同期比17%減となった。

 COVID-19のパンデミックが直近のスマートフォン販売減をもたらし、それが価格低下につながったことは容易に想像できる。だが価格低下の原因は、スマートフォンそのものにあるとアナリストはみる。

スマートフォンを値下げせざるを得ない“あの理由”

 「スマートフォンの新製品を急いで買う理由がなくなっている」というのが、アナリストに共通した見解だ。Gartnerのアナリスト、テュオン・グエン氏は「最新の高機能モデルでも、手持ちのスマートフォンから乗り換えたいと思わせるほど魅力的ではない」と指摘する。すぐにアップグレードしたいというニーズがあったのは、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンへの移行期までだという。

 新機能の追加だけでは、高価な最新スマートフォンの購入を促す動機付けとして十分ではなくなっている。「デバイスベンダーと通信事業者は、目を引く仕掛けに頼るのではなく、どうすればエンドユーザーに恩恵をもたらす魅力的な使い方を作れるかを見つけなければならない」と、独立系アナリストのエリック・クライン氏は語る。

 IDCは2022年までにスマートフォンの販売が増加に転じると予想している。値下げがさらに進み、消費者が古くなったモデルから新モデルに買い替えると同社はみる。デバイスベンダーは世界市場の中でスマートフォン普及率が低い地域を狙い、販売を伸ばす見通しだ。

5Gの影響

 「5G」(第5世代移動通信システム)は米国のスマートフォン販売の好転に大きく寄与する可能性がある。ただしアナリストは、その事態は通信事業者が5Gサービスを大幅に向上させるまでは期待できないだろうと予想している。今のところ消費者は、LTE(Long Term Evolution)を含む現行の4G(第4世代移動通信システム)サービスより少しましな程度の5Gサービスに、高い料金を払おうとしない。

 調査会社Opensignalは「米国の5Gサービスの通信速度は世界の主要市場で最も遅い部類に入る」と評価している。同社の調査によると、米国の5Gユーザーが5Gに接続している時間の割合は、平均20%弱にとどまっている。「5Gは、まだあまり整備されていないことに留意しなければならない」と、グエン氏は指摘する。

 IDCは、5G接続可能なスマートフォン(以下、5Gスマートフォン)を開発するデバイスベンダーが、消費者を引きつけるために価格を下げ続けるだろうと予想している。同社によると2023年までに5Gスマートフォンの世界平均価格は、現在の約600ドルから495ドルに低下する見通しだ。

 2020年に登場した、5Gが利用可能な「iPhone 12」が、Appleの顧客を5Gサービスに引きつける可能性がある。Appleはこれまで、同社製品の熱心なファンに新技術を売り込むことに成功してきた実績がある。「Appleが技術のメリットをアピールする力は、決して侮れない」(リース氏)

 Appleの2020年第2四半期のスマートフォン販売実績は、競合他社ほど落ち込まなかった。Gartnerによると、Apple製スマートフォンの販売台数は前年同期比0.4%減にとどまった。これに対して、Googleの「Android」を搭載するスマートフォンを手掛けるSamsung Electronicsは、販売台数が27.1%減少した。

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日産、国内2年半ぶり新車 HVで小型SUV市場に挑む

2020年11月09日 07時41分37秒 | 日記

 

日経が、『日産、国内2年半ぶり新車 HVで小型SUV市場に挑む』と報じていた。やはり依然、日産は経営が厳しいようで、国内の売上順位も、5位で、勝手の勢いを取り戻すのは並大変のようだ。折角、EVで先行しているのだから、先が真っ暗というわけでは無いかも。

日産自動車が6月30日に国内で発売する新型「キックス」

日産自動車が6月30日に国内で発売する新型「キックス」

日産自動車は24日、新型ハイブリッド車(HV)「キックス」を日本で30日に発売すると発表した。軽自動車を除くと国内での新型車投入は2年半ぶり。同社初のHV専用車として電動車戦略の中核を担う。新型コロナウイルスの影響が残るなか、経営再建を占う試金石となる。

「電動技術と自動運転技術で、世界で人気の小型SUV(多目的スポーツ車)市場に満を持して戦いを挑む」。日産の星野朝子副社長はオンラインでの発表会で意気込みを語った。新型キックスの大きな特徴は、独自のHV技術「eパワー」を搭載したHV専用車である点だ。電気自動車(EV)なども含めた電動車を世界で拡販し、2023年度までに販売台数を足元の5倍の100万台に増やす計画を進める。

eパワーはモーターのみで車を動かし、エンジンはモーターを駆動するための電気を発電する機能に特化する。EVのような素早い加速が可能で、通常のHVに比べて静音性も高い。これまでに搭載した「ノート」や「セレナ」はガソリン車との併用で売り出していた。そんな虎の子の技術を小型SUVに搭載し、HVに絞り込んで電動車重視の姿勢を鮮明にする。

新型キックスは小型SUV市場を開拓する世界戦略車でもある。独調査会社スタティスタによると、小型SUVの世界市場は14~19年の5年間で年平均16%伸びた最大の成長分野のひとつ。「マーチ」と同じくタイで生産し、日本に輸入する。タイでは日本に先駆けて5月に発表会を開き、東南アジアなど海外展開を進めるとみられる。

 

 

日産は元会長のカルロス・ゴーン被告の指導下で、販売奨励金を使った海外拡張戦略を推し進めてきた。11年度に488万台だった世界販売台数はピーク時の17年度には約2割増の577万台まで伸びた。だがその裏で新車の開発・投入は滞りがちになっていた。

その象徴が国内だ。19年度に国内で発売した新型車はトヨタ自動車ホンダがそれぞれ乗用車を含む6車種、3車種だったのに対し日産は軽自動車の1車種のみだった。日産の国内販売台数は19年度には53万台と、過去10年間で2割弱減った。

国内でのポジションは低下し、14年度以降はトヨタやホンダはおろか、スズキやダイハツ工業を下回る5位が定位置になった。系列販売店からは「2年半も新車を出さないなんて、もはや車メーカーと言えない」などと不満も噴出していた。

「失敗を正しい軌道へ修正し、選択と集中を一切の妥協なく断行する」。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は5月下旬の決算会見で改めて拡大路線との決別に言及。23年度までの新中期経営計画で、年700万台規模に膨れ上がった生産能力を540万台まで減らす方針を示した。

代わりに今後1年半で新型車を世界で12車種投入し、商品ラインアップの魅力を高める。全販売台数のうち電動車の割合を示す「電動化率」を日本では足元の25%から23年度末までに60%に、中国と欧州はそれぞれ23%、50%まで高める。

中国政府は今後、HVを新たに「低燃費車」と位置づけて優遇する方針で、日産にとっても追い風になりそうだ。年内にはSUVのEV「アリア」を投入する。これまで「リーフ」だけだったEVの品ぞろえにSUVが加わる。アリアには高速道路では手放し運転ができる運転支援技術も搭載するもようだ。電動車と並ぶ日産の看板である運転支援技術も新型車に矢継ぎ早に採り入れる。

 

 

一方、新型コロナの逆風下での新車投入には懸念も残る。自動車業界団体によると、5月の国内新車販売台数(軽自動車含む)は前年同月比4割減まで落ち込んだ。新車需要が低迷し、日産は7月も国内3工場で生産調整を余儀なくされる。

ライバル車との競争も焦点だ。新型キックスの価格は約280万円から。ある国内販売店の担当者は、HVのSUVで同価格帯の「トヨタの『C-HR』やホンダの『ヴェゼル』と競合しそうだ」と指摘する。

小型SUVはもともと日産が10年に発売した「ジューク」が先駆けだ。初代キックスはその後継車として16年に海外で投入した。だが市場を開きながら、新型車を投入できずに顧客を奪われた。

小型SUVでの存在感を取り戻し、「技術の日産」ブランドを復権できるか。HV専用車の売れ行きは、経営再建の行方を左右しそうだ。

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