プラムフィールドからのお便り

プラムフィールドでの出来事などを紹介していきます。                            

カッチョさん・・・(むか~し、昔)

2010-04-28 | 社長のつぶやき
以前の記事「愚か者よ」で・・・。

少年エッシャがポルノ映画館で遭遇したという先生は、生徒達から「カッチョ」と親しみを込めて呼ばれていたそうです。
小柄で、漂々として、穏やかで、英語の教師で、なお且つ柔道部の顧問をされていました。


カッチョさんはエッシャを筆頭に英語ができない同じ学年の柔道部員を、練習が終わった後に、特別補習授業を部室で開いてくれたりもしてました。手書きのプリントをわざわざこのためにだけ刷ってきて、

「はい、ここば読んでみて。」
「This is a pen.」

それでもエッシャは英語が出来ませんでした。

高3の時、実力テストの答案を返してもらった時の事です。
エッシャはすぐ前の席の穴田という奴の答案を
「見せろ・・・・ブァッハッハ。ニテン!100点満点でたったの2点。でたらめ書いても10点ぐらいとるやろ。なさけなかー。」
エッシャはクラスに響き渡るほどの声で、しごくもっともな事を彼に言い放ちます。
当然カッチョさんの耳にも入っています。

すぐエッシャの番がきました。



彼はこの時の答案を返すカッチョさんの悲しそうな顔を、今でも思い出すそうです。
席に悄然と戻るエッシャ。

「エッシャ!お前も見せろ。」
穴田が振り返って覗き込みます。
「あっやめろ。」
「だあーはっはっは、イッテン!100点満点でたったの1点!こりゃなんかあ。でたらめ書いても・・・」

100点満点でたったの2点しか取れない奴に、優越感がこもった罵声を浴びせかけられるエッシャ。
そのやり取りを聞く、他の生徒らの嘲笑の渦。

「・・・・・・・・・・・・。」

まったく、お前はのび太か!。

もちろんエッシャはふざけてテストを受けた訳ではありません。彼の脳髄を絞り出して考えた結果です。

でもここで、あのカッチョさんの顔を忘れる事が出来ない少年エッシャは奮起します。
次の中間テストの時は、初めてといえるほどに試験勉強(英語だけ)を猛烈にしたようです。
中間テストは実力テストと違って範囲が限定されますからね。完全丸暗記と徹底した傾向の研究とその対策(この能力だけは結構あったかも)です。

試験が終わり、答案を返してもらう時・・・・

カッチョさんは、エッシャに返す前に
「今回はお前がクラスで一番じゃった。ほとんど満点たい。」
とエッシャの名を挙げ、普段した事がない試験結果の発表をしてくれたのでした。

「おーーーー」

クラスに動揺が走ります。
近くの女子生徒らの、
「きっと・・・カン・・・」
あのバカがそんなはずはない、といったひそひそ話が聞こえてきます。

でもここで、カンニングなど決してしてない事をエッシャの為に証言してやらねばなりません。

エッシャに答案を渡すカッチョさんの喜ぶ顔。
「よーがんばったな。」
頑張ってよかったと思うエッシャでした。

でもカッチョさんを一度喜ばせた事に満足したエッシャは、次のテストから以前のエッシャに戻ってしまった事も付記しておかねばなりません。




このカッチョさんの息子さんも同じ柔道部の先輩で、後輩を可愛がる正義感があふれる先輩でした。
エッシャが卒業したその年に、その正義感からか久留米の文化街という飲み屋街でチンピラに刺されて亡くなってしまいます。

先生の嘆きようは察するに余りあります。
あんなにいい先生が、いやあんなにいい人がそんな晩年を送る事とになろうとは・・・。

この事を思うと今も胸が痛くなるエッシャでした。