【FiiO】
■家でも外でもこれ一台。USB-DAC搭載ポタアン新モデルを試す
「外でも自宅でもどっちでもお気に入りのイヤホン&ヘッドホンからできるだけ良い音を引き出して存分に楽しみたい。でも面倒なのと邪魔なのとお値段が高いのは却下なっ!」
…という方におすすめのアイテムが、ポータブルヘッドホンアンプとUSB-DACを一体化した“USB-DAC搭載ポタアン”だ。外出時は普通にポータブルプレーヤーとアナログ接続で使え、自宅ではPCとUSB接続することでよりベターな音質を得られる。
自宅でPCとUSB接続で使っていれば、そのUSB経由で勝手に充電されてくれるところも便利。またポタアンなので当然コンパクトだから、自宅で使うときもデスク上で場所を取らず邪魔にならない。そしてお値段であるが、当然、外用と自宅用にそれぞれ別のヘッドホンアンプを買うよりはぐっとお安くなる。
■96/24ハイレゾ対応! 出力はE-07の約3倍
USB-DAC部分は96kHz/24bit対応に進化した。いわゆるハイレゾ対応だ。
筐体はヘアライン処理、ボタンもスピン加工されていて、コストパフォーマンスの高いモデルながら安っぽさはない。
アンプのプリとパワーのチップはAnalog Device社のAD8692とTexas Instruments社のTPA6130Aを使用している。これはE7からそのまま引き継いでいる仕様だが、それでいて出力はE-07の約3倍に引き上げられており、より余裕を持ってヘッドホンを駆動する。
ただしその代わりなのか、内蔵バッテリーでの駆動時間は、E7が80時間だったところがE07Kでは24時間に短縮されている。とはいえ、僕としては24時間も確保されていれば十分だと感じる。
イコライザー機能は、E7では3段階の低音ブーストのみだったが、E07Kでは高音と低音それぞれ10段階(±5段階)の調整が可能。好みに合わせてより積極的かつ微妙に追い込める。
イコライザー。高音と低音を+10から-10まで2ずつ調整可能。つまり高音と低音を上下それぞれ5段階で調整できる
さらに2人での同時リスニングが可能なデュアル・ヘッドホンアウトの搭載も特徴的である。…リア充の方はせいぜいラブラブで活用してくださいっ! どうぞご自由に二人の世界を作ればいーんじゃないですか!?
ヘッドホン出力端子×2。ヘッドホンを2個つないで聴き比べ、スピーカーも同時接続など、ぼっちでも活用できないことはない
下部にはUSBのmini-B端子、オプションのドックE9との接続用のドック端子、ライン入力端子が用意されている
…失礼、少々取り乱してしまった。気を取り直して説明を続けよう。そのほか、電源を入れ直してもボリュームを記憶する設定、最大ボリュームを制限して耳を守る設定、スリープ機能など、細かな設定や機能も充実している。各設定は画面のメニュー項目をボリュームボタンで上下してメニューボタンで決定するという要領で行うが、説明書を見るまでもなく簡単に操作できた。
さて、次はお待ちかねの音をチェックだ。ポタアンとしての使い勝手とUSB-DACとしての使い勝手、両方をガッツリ試してみた。
■iPhone 5と組み合わせてポタアンとして使う!
まずポタアンとしての機能をチェック。iPhone 5とSHUREの「SE535」を組み合わせて聴いてみた。
iPhone 5のヘッドホン出力の特徴であるカチッとした硬質さを和らげて、アナログ的な馴染みの良さを出してくれることが本機の持ち味と感じる。
上原ひろみの「MOVE」では、冒頭のピアノの艶やかさでiPhone 5直結との違いをいきなり感じる。ライドシンバルをあまり薄刃にせず、厚みもある音色にすることも特徴的。ベースとドラムスは少しもこっとするのだが、暖かみのあるもこっとなので、好ましくも感じられる。音色の押し引きの幅が広がるおかげか、音場の立体感が増すのも嬉しい。
相対性理論「ミス・パラレルワールド」も、ほどよい柔らかさで描き出す。この曲のハイハットシンバルは荒く強い音色なのだが、それを少し優しく整えることがポイントだ。ロック的な荒いキレは弱まるが、聴きやすい音になっている。ベースのスタッカートも、スパスパッとは切らず、スタッカートではあるけれどつながりを少し残した、滑らかなフレージングに聴こえる。ボーカルもシャープな成分は強く出さずにソフトタッチだ。
宇多田ヒカルの「Flavor Of Life -Ballad Version-」との相性は特に良好。声の輪郭を適当にほぐして、ふわっと優しく耳に届けてくれる。
■続いてMacと組み合わせてUSB-DACとして使う!
続いてはMacBook Air+再生アプリ「Audirvana Plus」を再生ソースとして、USB入力時の実力をチェック。
iPhone 5からのアナログ入力と比べるとやや硬質で、音色の艶やクリアさをより強く感じられる。それでいてやはりカチカチとした感触にはしておらず、良質な硬質さだ。
上原ひろみ「MOVE」の冒頭のピアノは、その心地よい硬質さを特に感じられる部分。高音をキンと響かせながらも耳障りではない。アナログ入力時と印象が異なる部分としては、ライドシンバルはより薄刃でシャープ、ベースはアタックのゴリッと来る成分もほどよく引き出す。一方で全体としては、解像感を確保しながらも強調はせずに馴染みの良さが印象的という、アナログ入力時と変わらない持ち味を備えてもいる。
相対性理論「ミス・パラレルワールド」でも、ベースはゴリッと来る成分もほどよく出してくれる。またアナログ入力時には少しおとなしくなっていたハイハットシンバルのズシャッと濁点の効いた荒さもこちらでは生かされる。ボーカルもアナログ入力時よりはシャープで明るい印象。
宇多田ヒカル「Flavor Of Life -Ballad Version-」では、柔らかさも生かしつつの、声の張りと透明感がポイント。歌に勢いとクリアさがあり、耳に気持ちよく飛び込んでくる。
なお両環境でイコライザーの効き具合も確認したが、高音も低音も段階ごとに滑らかに自然に調整できた。イコライザーの帯域や増減幅がうまくチューニングされていることに加えて、土台となる基本の帯域・音質バランスが整っているからこそだろう。特に+2~+4(+2段階)程度のイコライジングだと、本当に自然にその帯域を軽くプッシュしてくれる。
というわけで、Fiio E07K。USB-DAC搭載ポタアンとして、手頃な価格と十分に納得できる音質と機能を兼ね備えた製品だ。USB-DAC搭載ポタアンに興味を持ち始めた方はチェックして損はなし!
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