絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語(逸話) 浦島太郎に?! 1/18

2019-02-05 08:05:01 | 仮想はてな物語 

     
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 * 浦島太郎に?!(053)



 あれは、紀伊半島の何カットめのことだったのだろうか?


 私は、紀伊半島一周走破を計画していた。
 土曜日だけのツーリングだとそうそう走れるものではない。
 そのため、何回にも分けて紀伊半島を走った。


 42号で黒い普通車に後を付かれたので横道に逸れてやった。
 ヤツは、私がスピードを緩めると緩め、
速めると同じように速めて、後に付いてきた。
 時間にすれば、10分間ぐらいだったろうか?


 うるさいので逃げたのだ。
 黒い車は要注意車だ。
 概してまともな走り方をしない奴が多い感じを受ける。
 しょっちゅう、ブレーキを踏む車も要注意車だ。
 そういう車に会えば、即、私は離れることにしている。
 事故に巻き込まれる可能性が大きいからだ。
 難は排す。
 事故から遠ざかるには、この一語に尽きる。


 脇道でも道があれば、またどこかで国道にぶつかるだろうと、
 安易な気持で走っていた。 
 目的は太平洋岸沿いに進むことだから、それで十分なのだ。
 太平洋は左に広がっていた。



つづく


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 海はいい。
 傍で生活するのとは違い、たまに見るからいいのだ。
 私は海の傍で育ったが、今は盆地のど真ん中で暮らしている。
 だから、海などこうしてツーリングでもしないと見られはしない。
 同じ環境で暮らし続けていると、たまには変ったこともしてみたくなる。


 その点バイクでツーリングに出掛けるのは、私にとっては、
 まさに持って来いの気分転換になっている。


 その道は海岸沿いの小道だった。
 最近では、どんなに細い道でも舗装が為されている。
 そこに住む人々にとっては、そうなる方のメリットが大きいのだろうが、
 私のような通りすがりの者には未舗装の方が望ましい。
 とは言いながら、自分の生活道は舗装されている方を好むのだから
 何とも身勝手な話だ。


 未舗装の道は、特に雨降りの日にその本性を現わす。
 水溜りやぬかるみ道となって反撃してくるのだ。
 車社会にとっても大敵となる。
 風の強い日にも似たような迷惑を人にかける。
 泥や砂埃が人家や洗濯物を襲うのだ。



つづく


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 舗装は彼らの武力を弱める手段の一つでもあるようだ。


 道を広げた名残りの雑草が真ん中に数列も生えている田舎の小道。
 そんな道に出会うと、たまらなく懐かしくなってくる。
 小さい頃、朝露や雨の日に苦しめられた苦い記憶は薄れ、
 良い思い出のみが顔を出す。
 けれども、そういう道には中々会えない。


 そのあたりも過疎地とは呼ばれるものの、
 道だけは都会並みになっていた。
 ただ少し金のかけ方が少ないのか、
 痛みはかなりのものではあったのだが。


 車の通りはほとんどなかった。
 砂浜がずっと続いていた。
 波が大きく押し寄せているところで、サヤカを止め一休みする。


 砂浜に打ち寄せる波は、日本海も太平洋も似たような塵を運んでくる。
 洗剤の容器、ビニール袋、釣り糸、雑誌、空缶、ぬいぐるみ、
 スリッパやズック靴など、数えあげたら限りがない。
 遠くに目を走らす分には気持がいいのだが、
 人間との接点の部分では、
 陰湿な戦いを繰り広げているようだ。



つづく


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 お互い要らないもの同士を押しつけ合っている。
 もちろん悪いのはどちらか判りきっている。
 私自身もその一員なのだろうが、
 気がつかないという事は恐ろしいことだ。



 あの塵ラインの中で、私が昔、
 何気なく、奈良県のS市の小川に投げ捨てた
 煙草の吸い殻が、寺川、大和川を通り、
 大阪湾に出て波に乗り、
 この紀伊半島の名も知らない砂浜で、
 からからに縮みきった黄色のフィルターと
 なって睨みつけているかも知れない。



 そんな事を思うと一人で居るのが恐くなってくる。
 軽く体操をして、また走り出す。
 しばらく走っていると、砂浜で犬が2匹、
 何かに吠えかかっているのが見えた。
 吠えながら、時々、前足でチョッカイを掛けている。
 サヤカを止め観察する。



つづく


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 海亀みたいだった。
 クラクションを鳴らしてやる。
 けれど、ヤツらは逃げなかった。
 かなりの大きさの犬コロである。
 まともに2匹も相手にしたら、細身の私は負けそうだ。


 サヤカから降り小石を拾いあげて、立て続けに投げつけてやった。
 肩の筋肉がギクッと音をたてる。
 まともに飛んではいかない。
 それでも有り難いことには、犬は逃げてくれた。
 低く唸り声を上げて、面を切りながら離れていった。


 私は、仲間を引き連れて仕返しにくるのではないかと恐れた。
 こんな場所から早く離れようと、サヤカに跨がった。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




つづく


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 ふとその時、海亀が気になったので目をやった。
 犬に脅されて隠していた首を出しきって、上下に振っている。


 あれは、お礼を言っているのか?
 それにしては、回数が多すぎる。
 よく見ると、右手も出していて、オイデオイデをしているではないか!


 私は、また例のサヤカの力を借りる事にする。
 すぐさま、ガソリンの給油口を開け耳を当てる。


 {オッさん、ありがとう。助かりました}

 私を、オッさん呼ばわりする奴がここにも居たのか!


 有り難いと言おうか、情けないと言おうか、
 とんだ有名人になってしまったものだ。
 これも元はと言えば、すべてはサヤカの所為だし、お陰でもある。


 {お礼にいい所へ、ご案内しましょう。
  海に潜る道具は持っていますか?}


 そんなもの、ツーリングに持ってくるわけない。
 それに趣味ではない。
 かといって、いい所と言われると行きたくなるのが、私の性分。


 その上、助けた亀といい所、これは浦島太郎に違いない。
 しかし、何とも安上がりな太郎なのだろう。
 石つぶて、たったの10個足らず。
 もう、これは運だ。



つづく


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 海亀が苛められていた。
 たまたま、私が通りかかった。
 石を投げる。
 犬が去る。
 何とも単純なストーリィ。


 でも、宝くじを買って当たるよりは、込み入った筋にはなっている。


 このチャンス、何とかならないもんか!
 ない知恵を絞り出す。


 ああ、そうだ。
 ここは太平洋だ。
 鯨のクジクジをサヤカに呼んでもらって、
 彼奴の口のなかに入れば何とか潜れそうだ。


 {オレは、人間なので酸素がいる。
  何分ぐらいで行けるのかい?}


 {15分とかかりません。
  着けば空気の心配はいりません}


 ここから、15分の所に竜宮城があるなんて、
 とてもじゃないが信じられない。
 そんなに近いのだったら、
 もうとっくに話題になって、
 マスコミを賑わしているはずなのに。



つづく


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 またまた、20世紀末のお粗末な知識が邪魔をするが、
 信じる者は救われるだ。
 この際、信じてしまおう。


 サヤカに、クジクジを呼んでもらった。
 いまデイトの最中なので、30分ぐらい待ってくれという。


 (人の恋路を邪魔する奴は、
  野犬に襲われて噛まれてしまえ!)


 そんな言葉が浮かんでくる。
 何とも心細い。
 人っ子ひとり通らない。


 そのうちに、クジクジがやってきた。

 {ご厄介かけます}

 {おう、オッさん、久しぶりじゃのう}



つづく


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 サヤカを通して話しかける。
 訳を話すと気持よく、口をぱかーっと開けてくれた。
 OKサインである。


 {気をつけてね。鼻の下にもね}

 サヤカの見送りのきつい一発が聞こえた、ような気がした。
 そんな短い言葉でも純情な(?)私には堪える。
 ビィーンと心に射い入るのだ。
 海亀がのっそりと進み始める。


 口の中は真っ暗だった。
 ぷーんと魚の腐ったような匂いが押し寄せる。
 心細いので懐中電灯を点けた。


 クジクジはマッコウクジラだ。
 最大時速、約36km。
 ということは、10分では5~6kmも進む。
 平地での1kmはたいしたことないが、
 海底や山の高さとなってくると、
 その桁は何万倍にも読み換えなければならない。
 元来、気の小さい私は、不安に襲われていた。


 クジクジの鼻の穴あたりがわずかに白い光を放っている。
 私は尖った歯にしがみつき急降下に耐える。
 ジェットコースター並みだ。


 海亀のヤツ、
 騙したりはしないだろうな、
 ちゃんといい所へ案内してくれるのだろうな、
 そんな事を思いながら身を任せていた。



 しまった!!!



つづく


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 しばらくして、重大な忘れ物をしたのに気がついた。
 サヤカのマフラーだ。
 あれは、海亀やクジクジとオレを繋ぐ言語翻訳機なのに・・・
 もう彼らと言葉を交わせない。


 ダメだ。
 「引返してくれえー」と叫ぶが通じない。
 どうしよう。
 二度と地上へは戻れなくなるのか?


 クジクジが止まった。
 パカーッ。
 口が開く。


 まぶしいーっ。
 さわやかな晴天。
 見たことのあるような、なつかしい風景。


 あれっ! 

 後を振りかえると、
 クジクジと海亀が、ニヤニヤ笑っているようだ。


 海亀が、これから起こる事を、
 クジクジに、教えたに違いない。


 後は薄暗い砂浜、前はM市のT町だ。
 M市は地方都市だ。
 T町はそのはずれにある。
 少なくとも海からは大分離れている。


 おかしい!



つづく


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 人が全然いない。
 ゴーストタウンか。


 だが、前が明るいのと 
 クジクジと海亀が、後に控えているので恐くはない。
 海亀が、行け行けと、手で合図しているようだった。


 私は、右、左をゆっくり見ながら歩いた。
 20数年前そのまま。
 川があり、柳が青々と生えている。


 あの曲がり角を曲がると、
 青い屋根の、マッチ箱のような家が、あるはずだ。


 8畳の部屋とトイレ・炊事場つき、家賃6,000円。
 Oさんと結婚して、
 一緒に暮らし始めた、私たちの原点のような場所だ。


 今は結婚して20年は悠に越えている。


 曲がり角を曲がる。

 アッ、Oさん!




つづく


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 「居たの?」

 家の前にOさんが立っている。 若い!!

 「私、Oさんではありません」

 「じゃ、サヤカかい?」

 首を横に振る。
 Oさんでもなく、サヤカでもない。

 では、一体この人は何者なんだ!

 「わ た し は 、 あ な た の こ こ ろ の せ い」

 心の精だって! 何だ、それは! 

 心に精まであるもんか。
 しかも、このオレの、だって?

 それにしても、可愛い。
 しかし、Oさんでもない、サヤカでもない。
 どう対応したらよいのか分からない。

 「お入りなさい。アナタのおうちじゃない」

 そう言われても、もう頭の中は、メッタンタン。
 {いい所}の意味が分かった。

 分かりはしたがどうしたものか。
 Oさんそっくりとはいうものの、
 Oさんとは違う、若くて可愛い女の子。
 私は、中年のオッさん。


 頭の中では、
 140億もあるという、
 脳細胞の特定部分が、上へ下への大騒ぎ。


 スーパーコンピュータ以上の処理速度で、
「入る」、「入らない」を判定をしている。


 エエィ、この人を、O’さんにしてしまおう。
 会心のキータッチで、「入る」ボタンを押す。
 うまく「入る」で止まったみたいだ。


 「お邪魔します」

 部屋の中はそっくり、そのまま。
 二人で初めて買った14インチのカラーテレビ。
 折り畳み式の卓袱台。
 小さい冷蔵庫。
 すべてが、昔のまま。




つづく


あ@仮想はてな物語 浦島太郎に?! 13/18


 

     
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 「テレビでも見ていてね」

 O’さんは台所に立つ。
 薄汚れたコンクリート剥出しの流し。

 「トイレ使っていいですか?」

 「いちいち、そんなこと、何故、聞くの?」

 O’さんは、Oさんそのままの口の聞き方。
 もちろん、声もそっくり。

 トイレは汲み取り式だった。
 匂いが漂っている。
 これも同じ。
 変っているのは、この私だけ???

 テレビをつけてみる。
 わぁ、ダサイ、コマーシャル!

 しかしながら、
 その頃は、
 それが最先端の流行品ばかりだったのだ。

 あれあれ、
 スカートの短い事。
 あの化粧の仕方!


 いちいち目につく。





つづく


あ@仮想はてな物語 浦島太郎に?! 14/18



 

     
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 といっても、その時代は、
 それが一番いいと思って、
 皆が真似したのだから滑稽だ。

 また、そうしないと、
 周りも納得しないのだから、余計に質が悪い。


 さらに喜劇的なのは、その流れを追わない者を、
 田舎者呼ばわりするのだから、
 何をか言わんやである。


 今から見返すと、50歩100歩、
 同じ穴の貉の毛比べのようなものなのに、だ。


 「もうご飯食べる?」

 うなづく。
 狭い卓袱台の上に、O’さんの手料理が並ぶ。
 決して誉められた味ではない。


 しかし、料理など心で食うものだと、私は思っている。


 レストランのブランド品の「コシヒカリ」より、
 Oさんの手で研いだ「標準米」の方が、はるかにうまい。


 狭いレパートリィの中から、
 必死になってm毎回違ったものを作ろうと
 努力してくれる姿勢が、味付けになるのだ。


 主婦し始めの頃のOさんを思いだす。
 何ともいじらしい。
 久しぶりに旨いものを食った感じがした。


 最近では、何を食っても、そう旨くはない。
 確かに口あたりは旨いのだろうが、
 心は、そうとは受け取らない。


 小さい頃、農閑期に作って貰った、
 母の手作りの、
 蒸しパンの味を超えるものは、
 そう多くはない。



つづく


あ@仮想はてな物語 浦島太郎に?! 15/18



 

     
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 味は味を求めて螺旋階段を駆け上ってゆく。
 しかし、頂上へはどこまで駆けあがっても辿りつけない。


 当たり前のことである。
 頂上自身がないからだ。
 頂上があると錯覚する感覚に問題があるのである。
 頂上が見えない努力は、結局は要求不満に結びつく。
 殿様がサンマに涙する心境がよく分かる。


 「コーヒー入れようか?」

 「お願いします」

 コーヒーを飲みながら、取り留めもない話をする。
 誰に何を話かけているのか、わからないので話題に苦労する。
 が、相手がOさんだと思うと気が楽である。
 気を使わなくてもいいからである。


 あっという間に時間が過ぎた。
 部屋の中がだんだんと暗くなってくる。


 ここは紀伊半島の近くの筈だから、
 家まではバイクで3~4時間は掛かる。


 あの曲がりくねった169号を、
 夜中に走るのはコリゴリだ。


 ずっと居たいのだが、
 夜は家を空けないのが、私のツーリングの鉄則。


 必ず帰ることにしている。
 Oさんに、余計な心配をかけたくないからである。



つづく


あ@仮想はてな物語 浦島太郎に?! 16/18



 

     
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 「帰ります。ありがとう。心がさあーっと晴れました」

 「喜んでいただけて、よかったわ。
  亀を助けて貰ってすみませんでした」


 「いいえ、大したこともしていないのに、こちらこそスミマセン。
  アノー、それと帰りはどうしたら、いいんでしょう?」

 「心配は要りません。
  クジクジさん?
  でしたか?
  呼んであげますわ」


 玄関を出ると薄暗い砂浜だった。
 クジクジが口を開いて待っていてくれた。
 O’さんの可愛い笑顔に送られて乗り込む。
 海亀も居たので、頭を撫でて、お礼を言った。


 「ありがとう、さようなら」


 「さようなら」



つづく


あ@仮想はてな物語 浦島太郎に?! 17/18



 

     
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 クジクジから出ると砂浜は明るかった。
 クジクジにも世話になった。
 オキアミ入りのエビ煎餅でも、
 コロに持たせて、お礼に来させよう、
 そんな事を思った。


 サヤカ、サヤカは? と。 


 ああっ、サヤカが居ない!
 盗まれたのか!




つづく


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 ガバッ! 

 跳ね起きた。
 あれ、夢?
 夢だったのか。


 サヤカは傍にいた。
 砂浜にある松の木の下で、私は居眠りをしていたのだ。
 海風が心地よい。
 白い波が、ところどころに絶え間なく現われては消えてゆく。


 O’さんは?
 海亀は? 

 石を投げて2匹の犬を追っ払ったのは、確かだ。
 その証拠にまだ腕がだるい。
 その後、どうしたのだろう。
 ボケる歳でもないのだが、なかなか思い出せなかった。


 普通は、ここでお土産が見当る筈なんだが・・・・・


 サヤカの荷台に何か乗ってる。
 発砲スチロールのパックだ。
 O’さんからのお土産に違いない。
 それにしては、近代的な包装だった。


 だが、待てよ!
 空けたら、白ヒゲジィさんになってしまうのでは!



 でも、そうなると、私はもう定年になっていて、
 好き勝手なことが出来るのでは・・


 そんな甘い期待を抱く。

 なるようになれだ。
 思い切って、パッと開けた。

 モヤモヤッ。
 白い煙が立ち上る。

 ヤッター!

 何だ! 

 よく見ると、ドライアイスの蒸気ではないか。
 そうだ。
 これは、私が買ったOさんへの生海老のお土産だったのだ。
 昼寝をしていて、すっかり忘れてしまっていた。


 さぁ、早く出発しょう。
 169号を明るいうちに抜けなくてはと、
 急いでサヤカに跨がった。



 それにしても、初々しかったなぁ、O’さん。



 転寝を 太平洋は  のんびりと
  見守りくれる 初夏の日盛り

                  ち ふ



                    
   おわり





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