Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

Twitter @pkcdelta
https://www.facebook.com/GifuNeurology/

ステロイドパルス療法は長期記憶に影響を及ぼす

2005年02月06日 | その他
動物実験レベルではステロイドが認知機能に障害を及ぼすことが知られている.これは海馬やprefrontal cortexに存在するglucocorticoid受容体を介したステロイドの神経毒性が,海馬に影響を及ぼすためと推測されている.実際にヒトにおいてもステロイドの大量投与が可逆性の長期記憶障害を引き起こすという報告があるが,その詳細や,短期記憶・注意力等に与える影響については不明である.
今回,ドイツよりステロイドパルス療法が認知機能に及ぼす影響が報告された.対象は多発性硬化症21名,急速視神経炎9名,健常対照33名とし,ステロイド使用量はmethylpredonisolone 500mg 連続5日間とした(いわゆるセミパルス).検査としてはRey Auditory Verbal Learning Test (RAVLT)のlearning performance,immediate recall,delayed recall,さらにTest for antinational performance (TAP)のalertness,divided attention,working memoryを行った.検査は治療前,治療終了時,終了から5日目に行った.この結果,ステロイド使用群で,唯一,RAVLTのdelayed recallの点数の低下が認められ,治療終了5日目にはもとのレベルに回復していた.
以上の結果は,やはりステロイドが長期記憶の障害を引き起こすことを示唆するものであるが,その持続時間はmethylpredonisolone 500mgで5日以内と短く,臨床的にはあまり問題にはならないのかもしれない.通常,我々が良く行う1000mg,3日間の影響も知りたいものである.

Neurology 64; 3335-337, 2005
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« SLEにおける認知機能障害の予... | TOP | 進行期パーキンソン病に対す... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | その他