Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ドネペジルは多発性硬化症の記憶障害を改善する

2004年11月22日 | 脱髄疾患
現在,本邦で認可されているAD治療薬はアセチルコリン・エステラーゼ(AChE)阻害薬であるドネペジル(アリセプト®)のみであるが,そのドネペジルが記憶・認知障害を合併するMS症例に対して有効かどうかニューヨーク州立大学が検討した.方法はsingle center double-blind placebo-controlled studyで,69症例に対しドネペジル10mgないし偽薬を割り付け,24週後に評価した.症例はRR,SP,PPを含み,IFN-betaを使用している症例はそのまま継続して使用可とした.評価項目はselective reminding test(SRT)におけるverbal learning とmemoryの項目,認知機能検査,患者および主治医の評価など.この結果,ドネペジル群は偽薬群と比較し,SRTのmemory testが有意に改善し(p=0.043),これは年齢,性別,EDSS,MSサブタイプなどの共変量に関わらず有意差は認められた.また患者,主治医ともドネペジル群において有意に記憶力の改善を報告医した(p=0.006およびp=0.036).重篤な副作用は認めなかったが,異常な夢の経験がドネペジル群で有意に多かった(p=0.010; 34.3% vs 8.8%).
 今後,多施設での検討が行われることになると思われる.またアセチルコリン系の賦活がなぜMSにおける認知・記憶障害に有効であるかの機序については良く分かっていない.

Neurology 63; 1579-1585, 2004 
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