Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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PINK1遺伝子(PARK6)変異を持つパーキンソン病の頻度

2004年11月07日 | パーキンソン病
本年4月にヨーロッパのAR-JP 3家系において,染色体1p35-p36に存在するPINK1(PTEN-induced kinase 1)遺伝子の変異が報告された.遺伝子産物であるPINK1はubiquitousに発現し,アミノ酸配列内にミトコンドリア標的シグナルが存在する.機能としてはserine/threonine kinaseと考えられ,培養細胞における発現実験でミトコンドリアに対するストレス刺激に対し防御的に作用することが知られている.PARK6関連ARJPは,臨床的には①幅広い発症年齢,②緩徐進行性の経過,③発症時におけるdystoniaの欠如,④睡眠効果の欠如,が挙げられる.
これまでヨーロッパ3家系以外の報告はなく,その頻度は不明であったが,今回,2つのグループからアジアとアイルランドにおける頻度の報告がなされた.まずアジアにおける,parkinとDJ-1遺伝子異常を持たないAR-JP 39家系について連鎖解析が行われ,8家系(日本3,台湾2,トルコ1,イスラエル1,フィリピン1)が1p35-p36に連鎖した.またアイルランドの報告では290例のPD症例のうち,わずか家族歴を有する51歳例で,新規変異をヘテロで認めるのみであった.以上の結果から,アジアにおいては,PARK6はparkinに次いで頻度の高いARJPであることが判明した.
興味深いのはアイルランドの症例における遺伝子変異の意義である.特発性PD患者がこの遺伝子変異をたまたま有していただけなのか,それともこの遺伝子変異をヘテロで有すること自体が危険因子となるのか,今後の解析が待たれる.

Neurology 63; 1482-1485, 2004
Neurology 63; 1486-1488, 2004
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