Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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気道・気管切開管理とトラブル予防@日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

2018年10月28日 | 医学と医療
標題の研究会の第14回学術集会に参加した.本研究会は神経筋疾患患者さんのQOLにおいて重要な「摂食・嚥下・栄養」の問題に他職種で取り組むことを目的としている.今回は名古屋大学耳鼻咽喉科の藤本保志先生が会長となり,素晴らしいプログラムが組まれた.なかでもシンポジウム「気管・気管切開管理とトラブル予防(座長:巨島文子先生,二藤隆春先生)」は圧巻で,神経筋疾患患者に対する気管切開の問題点からオーダーメイド気管切開チューブの開発,そして窒息事故の対処法まで大変勉強になった.以下にエッセンスをまとめたい.

1)神経筋疾患における気管切開への対応~患者背景による術式選択とカニューレ管理(東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科 木村百合香先生)


・気管切開は通常,急性期疾患が対象であり,閉鎖を前提としている.しかし神経筋疾患ではTPPV,重症誤嚥の吸引ルート,上気道閉塞に対する気道確保などが目的で,閉鎖することはない.長期化に伴う合併症の対策が必要で,疾患ごとの術式の選択が理想である.
・まず問題になるのは,どこを切開するかである.甲状腺という血流豊富な厚い臓器があるためである.高,中,下気管切開があるが,基本は中気管切開である.出血リスクは軽減し,再手術もしやすい利点がある.
・術前リスクの評価が重要で,気管偏位,喉頭低位,パーキンソニズム等に伴う頸部伸展困難,短頸,肥満,血管走行異常などを確認する.ALSでは近年,積極的な栄養管理がなされるため,肥満,短頸傾向となり,気管切開しにくくなっている.
・しかしそれでも重篤な合併症が少なくない.術後合併症は20%程度で生じ,気管孔肉芽腫,自然閉鎖不良,術後出血,皮下気腫,術後感染などがある.気管切開チューブ逸脱,縦隔内迷入は死亡事故につながる.気管食道瘻は気管後壁に穴が開くことにより生じ,原因として,カフ圧が不適切であることが多い.カフ圧を上げるのではなく,カフの大きさで調節することが大切である.
・新しい方法として,輪状軟骨切開術がある.気管孔が高いので気管腕頭動脈瘻を避けられ,また瘢痕狭窄や縦隔迷入のリスクも減らせる.

2)神経筋疾患患者に対するオーダーメイド気管切開チューブの導入(国立病院機構宇多野病院 臨床研究部・神経内科 冨田聡先生)

・患者ごとのオーダーメイド気管切開チューブにより,長期気道管理に伴うトラブルを防げるのではないかと考えた.患者ごとに全長,垂直部分の長さ,曲率などのパラメーターを測定し,オーダーメイドする試みを行っている.
・実際に喀痰吸引やチューブ固定の安定,気管孔周囲炎症,自己抜去リスク,肺炎合併頻度の軽減といった効果があり,既存カニューレで対応困難な場合の有効な方法となる.

3)食べ物による窒息事故への対応(大原総合病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 鹿野真人先生)

・食べ物による窒息事故は増加し,H20からは交通事故死より多くなっている.高齢者が多い.介護施設で多く,訴訟に発展しうる.死亡に加え,重度後遺症も多い.
・対策は予防と救急対処法の2本立てだが,予防は難しく,救急対処法にも問題がある.背部叩打法と腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)がある.緊急時,日本では背部叩打法がメインで,ハイムリッヒ法までは実施されていない.
・いずれも効果のエビデンスは乏しく,乳児や妊婦には行いにくい.ハイムリッヒ法は肺活量の少ない高齢者には向かず,胃破裂などの合併症もある.餅を取り出せるほど強力ではない.まして背部叩打では,背中を殴るくらいでないと効果がないと言われる.
「指掻き出し法」を推奨したい.しばしば「盲目的に指を入れない」と記載されているが,意図的に指による掻き出しを行う.つまり餅などの食べ物は「舌の奥の裏側」にある(図左).正中から指を入れと届かないので,口角から舌の外側にそって指を入れると距離が短くなり届きうる.かつ嘔吐反射が誘発されて吐きだす.2つの方法でダメであった場合,トライする.とくに乳児や妊婦では初めから行っても良い.実際に救命できた症例が少なくない.自分が喉をつまらせたときにも有効.啓発ビデオも作成した.



来年の大会は岐阜で行われます.ぜひご参加ください.


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