Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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クロイツフェルト・ヤコブ病における末梢神経病変

2005年02月12日 | 感染症
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)には,原因不明の「孤発型(sCJD)」,乾燥硬膜移植などで感染する「医原型(dCJD)」,親から子へ遺伝する「遺伝型(GSS)」,および牛海綿状脳症に罹った牛由来製品を食べることで発症する「変異型(vCJD)」の4種類がある.通常,CJDは中枢神経を侵す疾患と考えられているが,「遺伝型」および「孤発型」CJDの一部で,fasciculationや腱反射消失,手袋靴下型感覚障害,筋萎縮などが報告され,末梢神経障害が存在する可能性が指摘されてきた.しかし従来の報告例では病理学的検索が十分行われておらず,とくにプリオン蛋白(PrP)の末梢神経における蓄積の有無や,末梢神経障害との関連についてはほとんど分かっていなかった.
今回,ヒトCJDにおける末梢神経のPrP蓄積についての研究が報告された.対象は8名のCJD患者で,内訳はsCJD 3名,dCJD 2名,GSS 3名(P102L mutation 1名,P105L mutation 2名)であった.sCJDのうちの1名は臨床的に末梢神経障害の合併を認めていた.末梢神経組織におけるPrPの存在を免疫染色,およびWestern blotにて検索した.結果として,sCJD 1名およびdCJD 2名においてdorsal root gangliaの神経細胞や,神経後根や末梢神経の神経線維内に顆粒状のPrP沈着を認めた.GSSや末梢神経障害を呈したsCJDの1例ではPrP沈着は認められなかった.Western blotではdCJD症例において,proteinase K抵抗性のPrPの存在が,dorsal root gangliaや末梢神経組織において確認された.
以上の結果は,sCJDやdCJDでは末梢神経組織にPrP沈着が生じうることを初めて示したものであるが,PrP沈着が末梢神経障害の出現に不可欠ではないことも同時に示しており,その発症メカニズムに関しては今後の検討が必要である.

Neurology 76; 325-329, 2005
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