International Stroke Meeting @ San Franciscoに参加した.一番注目された演題はまだ論文として発表されていないSAINT IIの最終報告ではなかっただろうか.SAINT I(Stroke Acute Ischemic NXY-059 Treatment) は過去に本ブログでも紹介したが,free radical scavenger NXY-059が「世界初の神経保護薬」となる可能性を示した研究である.FDAでの認可を目指し,症例数(とくにt-PA併用症例)を増やしたstudyがSAINT IIなのである.
方法は発症6時間以内の脳梗塞3306症例に対してNXY-059の効果を,primary endpointを発症90日後のmRS(modified Rankin scale)を用いて評価した.さて結果であるが,NXY-059群とplacebo群間でmRSに有意差は出なかった(涙).NIHSSなどのsecondary endpointや死亡率でも有意差はなかった.さらにt-PA+NXY-059併用患者710名と,t-PA+placebo患者715名の比較でもmRSに有意差はなかった.SAINT-Iで注目を集めた再開通後の脳出血合併頻度に関しても,今回は両群間で差はなかった(つまり再開通後のreperfusion injuryに対しての有効性を証明できなかった).大惨敗の結果である.また脳出血に対してNXY-059を用いたCHANT studyの結果も報告されたが,これも効果を証明できなかった.結果,AstraZeneca社はNXY-059からの完全撤退を余儀なくされた.ほかにも日本でphase IIが行われ有効と報告されたastrocyte modulatorであるONO-2506(arundic acid)を用いたRREACT studyや,血小板GPIIb/IIIa受容体抗体であるAbciximabを用いたAbESTT-II studyの結果も報告されたが,いずれも無効であった.何とも学会場は重苦しく,学会を通して反省会をやっているような雰囲気さえ感じた.
脳虚血に対する神経保護療法研究が曲がり角にあることは間違いない.アメリカでSTAIR(Stroke Therapy Academy Industry Roundtable)という戦略会議が始まって以来,2000-2005の6年間で治験が行われた85の神経保護候補薬のなかで,FDAに認可されたものはt-PAひとつのみである.また最近のtrialはendpointを達成できず,中止となるものが多いという状況も報告された.これを受けて,plenary sessionのなかで,神経保護薬の開発に関して,「A new roadmap for neuroprotection(神経保護に関する新しい研究指針)」が提案された.それはphase IIないしIIIの治験に到達する前に,4つのステップをクリアする必要性を提案するものである.具体的には,①動物モデルは有効性を示しただけではだめで,実験の質の高さをアセスメント・スコア(10項目10点満点;peer reviewを受けたか,体温コントロールは適切か,マスク化,ランダム化,適切なモデル,サンプルサイズなど)にて点数化する必要がある.これで質の高さが証明できればヒトでの検討に移る.②まずヒト組織(神経培養細胞,OGDモデル)を用いて有効性を確認する,③つぎに薬剤が脳に本当に到達しているのか,PETにて評価する(例えば薬剤をC11で標識し,治療標的部位となるペナンブラ領域に到達しているかをPET`上で確認する),④さらにTIA後の症例やminor strokeの既往のある症例などでの効果判定する.これらすべてのステップをクリアできれば治験に入ることができるというものである.何とも高いハードルに思えるが,このシステムが導入されれば,たしかに無効な薬剤は早期の段階で除外できることになるだろう.
いずれにしても動物実験で有効性が示されたNXY-059が,ヒトで効かなかった原因をきちんと検討することが大切であろう.NXY-059が効かないとなると,日本が世界に誇る神経保護薬free radical scavengerエダラボン(ラジカット)が本当に効いているのか心配になるのは私だけではないだろう.エダラボンに関してもちゃんとポスター発表があったが,ラットとマウスの脳梗塞での有効性を示したというもので,動物で効いたのだからworld-wideに治験を行い,効果を証明したいという考察であった.本邦ではすでに使われている薬剤でもあり何とも不思議な話であるが,新しいroadmapに従い,上記の4段階をクリアできている薬なのか評価しても良いのかもしれない.
International Stroke Meeting
方法は発症6時間以内の脳梗塞3306症例に対してNXY-059の効果を,primary endpointを発症90日後のmRS(modified Rankin scale)を用いて評価した.さて結果であるが,NXY-059群とplacebo群間でmRSに有意差は出なかった(涙).NIHSSなどのsecondary endpointや死亡率でも有意差はなかった.さらにt-PA+NXY-059併用患者710名と,t-PA+placebo患者715名の比較でもmRSに有意差はなかった.SAINT-Iで注目を集めた再開通後の脳出血合併頻度に関しても,今回は両群間で差はなかった(つまり再開通後のreperfusion injuryに対しての有効性を証明できなかった).大惨敗の結果である.また脳出血に対してNXY-059を用いたCHANT studyの結果も報告されたが,これも効果を証明できなかった.結果,AstraZeneca社はNXY-059からの完全撤退を余儀なくされた.ほかにも日本でphase IIが行われ有効と報告されたastrocyte modulatorであるONO-2506(arundic acid)を用いたRREACT studyや,血小板GPIIb/IIIa受容体抗体であるAbciximabを用いたAbESTT-II studyの結果も報告されたが,いずれも無効であった.何とも学会場は重苦しく,学会を通して反省会をやっているような雰囲気さえ感じた.
脳虚血に対する神経保護療法研究が曲がり角にあることは間違いない.アメリカでSTAIR(Stroke Therapy Academy Industry Roundtable)という戦略会議が始まって以来,2000-2005の6年間で治験が行われた85の神経保護候補薬のなかで,FDAに認可されたものはt-PAひとつのみである.また最近のtrialはendpointを達成できず,中止となるものが多いという状況も報告された.これを受けて,plenary sessionのなかで,神経保護薬の開発に関して,「A new roadmap for neuroprotection(神経保護に関する新しい研究指針)」が提案された.それはphase IIないしIIIの治験に到達する前に,4つのステップをクリアする必要性を提案するものである.具体的には,①動物モデルは有効性を示しただけではだめで,実験の質の高さをアセスメント・スコア(10項目10点満点;peer reviewを受けたか,体温コントロールは適切か,マスク化,ランダム化,適切なモデル,サンプルサイズなど)にて点数化する必要がある.これで質の高さが証明できればヒトでの検討に移る.②まずヒト組織(神経培養細胞,OGDモデル)を用いて有効性を確認する,③つぎに薬剤が脳に本当に到達しているのか,PETにて評価する(例えば薬剤をC11で標識し,治療標的部位となるペナンブラ領域に到達しているかをPET`上で確認する),④さらにTIA後の症例やminor strokeの既往のある症例などでの効果判定する.これらすべてのステップをクリアできれば治験に入ることができるというものである.何とも高いハードルに思えるが,このシステムが導入されれば,たしかに無効な薬剤は早期の段階で除外できることになるだろう.
いずれにしても動物実験で有効性が示されたNXY-059が,ヒトで効かなかった原因をきちんと検討することが大切であろう.NXY-059が効かないとなると,日本が世界に誇る神経保護薬free radical scavengerエダラボン(ラジカット)が本当に効いているのか心配になるのは私だけではないだろう.エダラボンに関してもちゃんとポスター発表があったが,ラットとマウスの脳梗塞での有効性を示したというもので,動物で効いたのだからworld-wideに治験を行い,効果を証明したいという考察であった.本邦ではすでに使われている薬剤でもあり何とも不思議な話であるが,新しいroadmapに従い,上記の4段階をクリアできている薬なのか評価しても良いのかもしれない.
International Stroke Meeting
ラットにです><;
人ではまだ確認されてませんね。
訂正します~!
申し訳御座いませんでした。
脳保護薬(エダラボン)のことを調べている
とやはりこちらのブログへ戻って来て
しまいます(^^;;;
本当に勉強になります。一般ピープルの
私には難しいです~が、しっかりと
拝見しています。
結局、まだエダラボンの治験には
参加出来てない父です。。。
最近はLTTバイオファーマの
抗脳梗塞作用が発表(?)された
レシチン化SODも気になっています。
なかなか医薬品については、情報がオープンに
なりませんね(T△T)
>>製造コストは本当にかからないといわれています
知りませんでした・・・。
ALSでは保険適用外なので、一ヶ月で○十万も
かかると聞いています。
治験が早く終わってほしいです(T▽T)
早くALSの進行がせめて止まる薬品が
出来る日が来て欲しいです~!
効くかどうかきちんと評価できていない薬を医者は使うべきではないのではないでしょうか.それに効果が不確かな薬にしては,薬価が高すぎます(エダラボンはベンゼン環1個の簡単な構造式の化合物で,製造コストは本当にかからないといわれています).エダラボンはいろいろ問題を含んでいる薬だと思います.