ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

『考える日々』池田晶子 ~目が開く窓が開く~

2012-02-29 23:35:30 | 

苦手なものはいろいろあるが、ウィンドウショッピングは極力しない性質である。
何がいやって、まず人の多い所に行って、さらに物を吟味するのはとても疲れるし
そのうえ、こちらが必要ともしていないのに店員に張り付かれたりしたら、最悪である
通常の買い物は、必要な物を書き上げた紙を見ながら超特急だし
行き先も、予め決めた場所以外のいわゆる「寄り道」は、滅多にしない。
もし必要な物を買わなければならない時は、意を決してそれだけを探して歩く。
わき目は振らず、「これは」と思えるような物に出会うまで、しつこく探す。
かと思うと、最初に入った店で「これは」と思う物があれば、あっさり買ってしまったりする。
決めてしまえば、さらにほかの店を見てみようという気は起きない。
そんな私でも、ウィンドウショッピングをする数少ない場所がある。
本屋だ。
小学生のころ、日曜日になると本屋に出掛け、ひがな1日お昼を食べるのも忘れて立ち読みをしていた。
しかも近所の小さい店である。
よくまあ店主は何も言わず、放っておいてくれたことよ。
感謝、感謝、である。
今から考えると、本棚の前で微動だにせず、手当たりしだいに立ち読みをしてはブツブツと独り言を言い
目は爛々と輝き、何が楽しいのか口元がわずかに緩んだおかしな小学生に
何か言ったりしたり出来るような雰囲気ではなかったのかもしれない
店主は強力なシールドを感じていたのだろうな~。
今はインターネットで本が注文できるが、検索には自ずと好みが反映されてしまうし
実際に手に取って見られないため、未踏の世界に分け入るような行動には出にくい。
やはり本屋で実際に本を手に取ってみることで、新しい発見があるのだ


先日、本屋で何気なく手に取った本が、これ。

書名の『残酷』はともかく、『人生論』というのが気に入らなかったし
「あなたはまだ知らないのか?2010年代を生きぬくヒント。」というのも気に入らなかった。
だが、目次を見た瞬間、「バン」とどこかが破裂するような感覚を覚え、迷わず買った。
一気に読み、その後インターネットで池田晶子(以下、敬称略)の著書を可能な限り入手した。
しもやけが悪化してしまった幸運も重なりあまり出歩けないので、読書三昧のこの一週間。
なだいなだ(敬称略)の本を次から次へと読んでいた大学生の頃と同じで
まるで何かに取り憑かれたように読みまくっている。
池田晶子の書いたものを読んでみると、『残酷人生論』の表紙に書かれた
「あなたはまだ知らないのか?2010年代を生きぬくヒント。」というあの言葉は
著者が言わんとするところを私なりに考れば、はなはだ不釣合いで陳腐だ。
誰があんな言葉を入れたのだろう。
著者は2007年の2月に亡くなっており、この『残酷人生論』は
絶版になっている『残酷人世論あるいは新世紀オラクル』の増補新版だと巻末に書いてあった。
どうりで、と納得した。
池田晶子なら、「2010年代を生きぬくヒント」などという言葉は、使わないだろう。


池田晶子の本を読んで、今まで耕していた私の素地に、思索の種が新たに播かれたようだ。
目次を見た瞬間に覚えた、あの「バン」という感覚は、本を読み進むにつれ
私のどこかに窓が開き(いや、私が窓になって「バン」と開いたという方が近いかも)
窓から果てしなく開けた何かが見えた(というより、果てしなく広がるどこかに「バン」と飛び出した)。
これはまずい…
すごい本に、出会っちゃったな



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (ysgr)
2012-03-12 23:13:55
はじめまして
池田晶子さんのキーワードより、こちらのブログに辿り着きました。

私は最近、池田さんのことを知ったのですが
本を読んでその面白さの虜になったというのに
実は5年も前にお亡くなりになられていたことを知り、とても落胆しました。

5冊一気に読んだ私の心の窓は
バンバンバンバンバン・・・

失礼いたしました
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さらに浮世離れが加速 (ぴすけ)
2012-03-13 20:05:51
ysgrさん、ようこそお出でくださり、また、コメントをいただきありがとうございます。
ysgrさんも、バンバンバンバンバンでしたか

池田さんがお亡くなりになっていることは、私は本を買って初めて知りましたし、池田さんのことさえそれまで存じ上げませんでした。
今の状況に関して池田さんならどのように書かれるのかな、とも思いますが、池田さんがお書きになっていることの多くはロゴスであり真理ですから、普遍の理であり誰のものでもありません。
それはすごいことです
2500年も前にソクラテスが考えていたことも、釈迦や道元やウィトゲンシュタインや池田さんや私(池田さん風に言えば誰?ってことになるのかな)が考えていることもそこに行き着き、それは誰のものでもなく、反対に誰のものでもある。
うわ~
現在の私の状況も加味されて、これまでの浮世離れがますます加速してしまいそうです
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