ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

母の歯科恐怖症からの脱出

2016-03-07 23:06:25 | 日常

私の母は今年の4月で84歳になる。
私は歯科治療において、歯が痛くなったことが原因で治療を受けたことがなく
ましてや神経を抜いたこともない。
治療方法の時代の差なのか、母はかつてかかっていた歯科医院で
かなりの歯の神経を抜く治療をされていたらしい。
おそらく、若かった時に神経を抜いたことが影響しているのだと思うが
母は80歳を過ぎてから、歯が欠けるようになった。 
最初に母の歯が欠けたのは4年前のこと。
その時既に母は高血圧と骨粗鬆症の治療のため、長期の服薬を余儀なくされていた。
最初に歯が欠けて、母はおそらく驚いたのだろう。
その時はすぐに近所の歯科医院にかかったのだが、1本、また1本と歯が欠けるうちに
なぜか歯科医院に行くことを渋るようになってしまったのだ。


その理由というのが、かつて母は脊柱管狭窄症が劇症化した時期があり
その時の痛みと、なぜか全く関係のない歯科治療時の姿勢の不安が結びつき
「歯科に行くと腰が痛くなっちゃったら困る」とか
「骨粗鬆症の薬を飲んでいるから、歯科治療はできないはずだ」とか
「痛くなるまで来なくていいと言われた」とか
「どうせ行ってもできることなどないはずだ」とか
「歯が大切だってことはちゃんとわかっているのよ」などと言って
とにかく、歯科医院に行くことを渋る渋る。
これにはいささか閉口した
腰が痛くなるのが不安なら、歯科医院にきちんとそのことを話して
治療台にバスタオルをあてがってもらうとか、傾斜を加減してもらうとかすればいいし
骨粗鬆症の薬を飲んでいても、できる治療はあるし
痛くなってから歯科医院に行ったのでは、それこそ大変なことになる可能性もあるし
治療ができるかできないかは、患者が決めることではないし
歯が大切だとわかっていると言いながら実行しないのは、実はわかっていないのだ
と、私は考える。
昨年、茨城県歯科医師会のお招きで、日立で講演をした時、母は私に同行し
私から耳にたこができるほど歯科医院に行けと言われていることを
歯科医師会の先生に愚痴半分に相談までしていた。
その時も、
「心配なことや不安なことは、なんでもお医者さんに話して
それをきちんと聞いてくれないお医者さんなら、別の所に行けばいいんですよ」
と言われていたのだが、恐怖心の方が勝るのか、その後も放置


私も、それが良いのか悪いのかわからないが、私が勝手に予約して
無理やり連れて行くようなやり方は、母に対してだけではなく、しないことにしている。
こうなりゃこちらの口がどれだけ酸っぱくなろうが、母の耳に巨大なたこができようが
どちらかが根負けするまで言い続けるだけである。
結局、私が同行するということで、やっと母は先週歯科医院に予約の電話を入れ
本日私と通院したのだった。
待合室で待っている間、すぐ隣の治療室で母と医師が話していることが筒抜けで
母は
「娘に叱られて来ました」
などと言っている。
母は歯科医院に行くのが嫌なあまり、欠けた歯が舌に当たって痛かったことを
「このままじゃ舌癌にでもなっちゃうんじゃないかしら」
と、怯えつつ、ずっと我慢をしていたらしい
最近母が、妙に年よりじみた話し方になってしまったなと感じていたのだが、それが原因だったようだ。
欠けた歯に詰め物をしてもらった後の母の話し方は、10歳は若返ったと思えるくらいの変わりようだった。
治療後、わざわざ歯科医師が待合室に来て、私に母の状態を説明してくれた。
欠けた歯の歯根は残っていて、それらは感染症が起きていないこと。
歯根が残っていれば、なし崩し的に歯がどちらかに偏ったり、次々に抜けることはないこと。
残っている歯だけでは食事に支障がある場合、入れ歯を検討しなければならないが
その時は歯根を抜く治療をせねばならず、骨粗鬆症の薬を3か月中断する必要があり
内科の主治医と相談のうえ、治療を進めなければならないこと。
現在、母は、歯が20本以上残っており、それで十分食事ができていることや
年齢的・体力的なことを考えても、敢えて歯根を抜く治療は必要ないこと。
日常的には、口腔内を衛生的に保つ努力をして、何かあったらためらわず相談すること。
以上の説明を聞いて、私も母も、とても安心した。
母は、欠けた歯が舌に触って痛かったため、やはり話しづらかったらしい。
詰め物をしてもらって痛くなくなったことで、話しやすくなったと上機嫌であった。
優しい歯科医師に、丁寧に説明されて、治療も無理なく行われたようで
今後の歯科通院に対しての恐怖感もなくなったとみえる。
「どうしてもっと早く歯医者さんに行かなかったのかしらね
などと嘯いている。
ま、めでたし、めでたし、である。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
母上の気持ち良くわかります (芝刈り爺さん)
2016-03-08 09:22:45
私も、揺らぎ始めて隣の歯を圧迫する親知らずの抜歯をしましたが、いや怖くて怖くて、のばしにのばしました。これは簡単に抜けます、、という言葉はあったものの、1週間腫れたとか、炎症起こして、、、大騒ぎとか、、聞かされてましたから(周りの方の体験です)。ただ歯は、放おっておくと、アドの骨まで化膿したりして、それこそ怖いことになるようで、ありがたい娘の言葉と援助、一緒にいくことなど、高齢者になろうとする私にとっては、羨ましい限りであります。親孝行しましたね!!!ちなみに私は一人で頑張ってきました。あっという間に抜けたみたいで、あっという間に隣の虫歯の神経も、抜かれたみたいで、案ずるより抜くがやすしでした。
好きな物が食べられるように (ぴすけ)
2016-03-08 18:43:34
芝刈り爺さん、芝刈り爺さんでも歯科治療を延ばし延ばしにするのですね。恐怖感が先に立つのでしょうかね。
母を歯科医院に連れて行くまで、もう本当にてこずりましたよ。子供よりたちが悪いなー、なんて思ったりもしました。
歯は本当に大切にしないと、後でとんでもないことになります。
それに、幾つになっても好きな物が食べられることが、どれほどすばらしいことか。
私も8020をめざして、定期的に歯科医院に行って、チェックとクリーニングを受けています。
美容院に行くより歯科医院に行く方が、私は好きです。
また誤字 (芝刈り爺さん)
2016-03-08 19:47:25
アドではなくて顎ですね、アゴ、、、。嫌になるなあ。しっかり見てるんですけど。短時間勤務ですがまた久喜まで通いそうです。
好きな仕事なら (ぴすけ)
2016-03-09 21:26:28
芝刈り爺さん、好きな仕事なら、続けられるのなら、そうした方が良いですね。
短時間でも、あるのとないのでは、全く違う生活になると思いますよ。
だとしても、あと1年間なのですね。

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