ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

上高地(2) 河童橋~明神

2010-08-16 19:47:36 | 旅・おでかけ

河童橋の人ごみを縫って左岸袂に戻った我々は、五千尺ホテルへと向かった。

実は、今回の上高地行の目的は二つあった。
一つは、勤務先の要請で夏季の間上高地に赴任となった知人に、奇特なことに会いに行くため。
二つめは、49年前、両親が新婚旅行の地として訪れた上高地がどのようになっているか
年老いた母でも上高地に行くことができるか、を偵察に行くためだった。
49年前、山を歩いていた父が新婚旅行の地として選んだのが上高地だった。
49年前の新婚旅行は、浅間温泉から上高地に入り、五千尺ホテルに宿泊して上高地を散策
諏訪に抜けるコースだったという。
来年、結婚50年を迎える両親は、このコースを2人で再び訪れたいと話していたようだ。
残念ながら、両親は結婚50年を迎えることなく、今年の2月で父は他界。
母としては、父と共に行くことはできないが、行けるなら行ってみたい地なのだと思う。


五千尺ホテルに入ると、1階の5HORNには長蛇の列
フロントで、13時にレストランを予約した者だと告げると、2階に通された。
レストランThe GOSENJAKUでは3組ほどが食事をしていたが、山姿は我々のみ
一応予約する際にドレスコードを確認し、大丈夫とのことだったが、違和感ありありである
ランチは、五千尺ホテル創業以来変わらぬレシピで作るビーフシチュー
最初口に入れたときは、少々甘味だけが突出しているようで首を傾げたが
食べ進むにつれてソースの奥深さを感じ、パンにつけるとより一層美味であった。
デザートは杏のタルトで、思いがけず大好物の杏を食べられて感激



河童橋周辺の喧騒をよそに、山姿ながら優雅にホテルでのランチを堪能した後は
第1の目的である知人を訪ねに、五千尺ホテルのすぐ先にある上高地ビジターセンターへと向かった。

上高地ビジターセンターはかなり立派な建物で、館内も広々としており展示も充実。
売店では、ビジターセンターでしか手に入らない品も多く、上高地限定商品も販売している。
しかしぴすけはそれらには脇目も振らず、受付カウンターにつかつかと歩み寄り
「埼玉から来たぴすけと申しますが、あさおさんはこちらにいらっしゃいますでしょうか。」
と尋ねた。
お似合いの緑色の制服を着て事務室から出てきたあさおさんとは、約1年ぶりの再会で
生活環境の変化が影響()してか、もみあげが少々白く変化しているのを発見
あちらはあちらでぴすけを見ながら、「髪の毛がまた寂しくなったかな…」などと
月日の経つのを感慨深く感じたかもしれない。
物欲王よろもんさんを売店に解き放ち、あさおさんと少々四方山話をして
ビジターセンターを後にした我々は、ウェストン園地に向かった。


山岳小説の愛読者よろもんさんは、今回の上高地行で、『氷壁』の舞台・屏風岩や
『日本アルプスの登山と探検』を著したウェストンを記念した碑を
訪れることを楽しみにしていた。

ウェストン園地の南端にあるウェストン碑に着いたときには、既に15時を過ぎていた。
本日の宿・明神館には「16時までに入ります。」と予約の際に伝えてあり
予想以上の時間の経過に、少々気持ちが焦った
河童橋までの岐路も右岸を歩いたが、やはり人が多く
河童橋を渡った所でカメラを提げてどこかに向かうあさおさんとばったり出くわし
「あれ~、まだこんな所にいたんですか?もう3時半ですよ
と言われ、焦りモードは全開になった

しかし、小梨平キャンプ場を経て明神へ向かう道を歩く人はまばらで
ほとんどは明神の方から河童橋方面へ歩く人ばかり。

我々は余裕の足取りで16時に明神に着いたのだった。


明神館で宿泊の受け付けと支払いを済ませ、風呂に入って汗を流した我々は
明朝に行う散策のために、夕食まで明神橋方面に偵察に行くことにした。
明神館を出て、明神橋に向かう小道に入ろうとした途端
小道を左から右へ、茶色の小さな丸い塊が走り抜けるのが見えた。
途中で一瞬止まった時に、よろもんさんが「何あれ」と言い
次の瞬間、異口同音に「ヤチネズミだ」と叫んでいた。
「いや~、可愛い可愛いじゃないのもう一度姿を見せてほしいな~
などと願ってみたが、ヤチネズミはその後姿を現すことはなかった。
この遭遇で興奮したぴすけは、過去の野生動物との出会いを滔々と語りつつ明神橋まで歩いた。

明神橋に着くと、橋の向こうに明神岳が堂々と聳えている。

それはまさに「神」の姿だった。
明神橋を渡りながら、明神岳に畏怖の念を感じ、その神々しさに圧倒されたぴすけであった。






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