ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

なだいなだ『人間、この非人間的なもの』

2012-06-09 16:15:08 | 
昨日に始まったことではない。いつからのことなのかわからないくらい、ずっと前からの無力感と失望感は2011年3月11日の激震を境に、少しずつでも緩和・改善に向かうのではないかと思ったこともあった。だが、この1年余りの政治の動向を見ても、我々が首相としている野田佳彦の昨日の会見を見ても緩和・改善されるどころか、よりいっそうの無力感と失望感に襲われ昨夜は得体の知れぬ憤りを抱え、眠りに就く気持ちになかなか . . . 本文を読む

山本修二・編著『岳人備忘録 登山界47人の「山」』

2012-05-12 23:45:24 | 
経験に裏打ちされた実践者の言葉には、重みがある。ここに登場する47人の言葉からは、自然に対して謙虚であることと人間はそもそも自然に対して非力なのだということを認識すべきだ、という共通した思考を読み取ることが出来る。「己をわかっていない人。登山という文化を理解しない人」を「困ったクライマー」として挙げた菊地俊之は「山がそういう人たちをどんどん事故らせればいい」と、それを「極論」としながらも、苦言を呈 . . . 本文を読む

『幸・不幸の分かれ道 考え違いとユーモア』土屋賢二

2012-03-15 17:53:46 | 
いつから土屋賢二(以下敬称略)の文章を読むようになったのだろう。最初に読んだ本も何か忘れてしまったし、何がきっかけだったのかも覚えていない。だが、娘が小さい時に著者の「お笑いエッセイ」なる文章を読み聞かせていたのだからかれこれ十数年来の付き合いということになろうか。当時から、著者の書いた物を読んでくれとせがんだ変な娘はますます磨きがかかり(敢えて「何に」とは言わない)、今では私から本を借りて寸暇を . . . 本文を読む

『考える日々』池田晶子 ~目が開く窓が開く~

2012-02-29 23:35:30 | 
苦手なものはいろいろあるが、ウィンドウショッピングは極力しない性質である。何がいやって、まず人の多い所に行って、さらに物を吟味するのはとても疲れるしそのうえ、こちらが必要ともしていないのに店員に張り付かれたりしたら、最悪である通常の買い物は、必要な物を書き上げた紙を見ながら超特急だし行き先も、予め決めた場所以外のいわゆる「寄り道」は、滅多にしない。もし必要な物を買わなければならない時は、意を決して . . . 本文を読む

『自分の中に毒を持て』岡本太郎 ~親と子のありようを考える~

2011-11-18 21:09:21 | 
『美しく怒れ』を読んでから、岡本太郎(以下、敬称略)の著述に大いに興味を持った私はほかに2冊、岡本太郎の著書を買って読んでみた。1冊はここで御紹介する『自分の中に毒を持て』でもう1冊は『人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている』である。この、『人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている』は、寄せ集めのエッセイ集だが両親のこと、おいたち、渡英・在仏のこと、周りのもろもろのことが書かれて . . . 本文を読む

『美しく怒れ』岡本太郎 ~怒るとキレルは違う~

2011-11-15 23:57:09 | 
私は怒りん坊である娘に付けられたあだ名は、「怒り(いかり)のぴーちゃん」。事あるごとに「あれ、また怒っとる」とか、「あ~あ、テレビに怒っちゃているよ」などと茶化される。しかし、娘に言わせれば、怒るためには膨大なエネルギーが内在していることが必要で怒ることはまさにその膨大なエネルギーを放出することで自分自身が生命力に溢れ、エネルギーに満ちていないと出来ないことなのだそうだ。たしかに、そう言われてみる . . . 本文を読む

北杜夫の死に思う ~おかしさと悲しさと~

2011-10-29 23:13:35 | 
北杜夫(以下、敬称略)の本と出会ったのは大学生の時だ。最初に読んだのが『どくとるマンボウ航海記』で、通学途中の電車の中で読んでいて何度吹き出したかわからないくらいおかしな本だった。 私は今や広漠とした海の気をあびて大いに嬉しくなり、たちまちにして一つの詩のごときものをひねりだした。  これは海だ  海というものだ  ああ その水は  塩分に満ちているブーーーッという具合であるかくして私は、車内の注 . . . 本文を読む

地図の新明解

2011-10-24 22:44:28 | 
山を歩く人であれば、1冊は持っているであろう昭文社の『山と高原地図』。2008年7月発行の『最新登山ガイド日本の山2008』は「2008年版山と高原地図対応!完全保存版」と銘打って、同社から発行されている。私が最も興味を引かれたのは、地図の執筆者が紹介されていることとさらに「執筆者特選情報!」なる枠もあって、執筆者の思考や嗜好が伺える。私も知り合いに、『山と高原地図』の執筆者がおりその方から、地図 . . . 本文を読む

『津波と原発』佐野眞一 ~私たちの知的怠慢を告発する~

2011-09-22 08:47:01 | 
私にとってノンフィクションは、時に人間に光明を見出すこともあれば時に人間の醜さを見せ付けられて打ちのめされる、両刃の剣でもある。世の中の実態を知ることは大切なことなのかもしれないが、欲や怠慢の暴露を読むことは私にとってかなりのダメージになるため、ノンフィクションを選ぶ際にはかなり慎重にならざるを得ない。書店をぶらついていて手に取り、初めて佐野眞一(以下、敬称略)の本を買った。東日本大震災以降「人々 . . . 本文を読む

『百年前の山を旅する』服部文祥 ~先人の足跡に学ぶ~

2011-05-28 23:52:48 | 
この本の著者である服部文祥(以下、敬称略)は、山岳雑誌・『岳人』の編集部員で装備を切り詰め食料を現地調達するサバイバル登山を実践。その山行記を基にした著書に『サバイバル登山家』(みすず書房)がある。サバイバル登山を実践してきた服部が、昔の山人や過去の登山者の記録に興味を持ち彼らの足跡を追体験し、それらをまとめたのがこの『百年前の山を旅する』である。田部重治『甲武国境と雲取山と多摩川』から、明治42 . . . 本文を読む