世の中がコロナの影響で先行き不安だというのに、
どういうわけか、とんとん拍子に話が進んで契約が成立した。
これも人のご縁・・ありがたいことだ。
お姑さんは道沿いの小さな庭先にいつも花をいっぱい咲かせていた。
塀の内側の棚の上には丹精込めて育てた色とりどりのサツキの鉢が並び
外側の花壇には毎年お決まりの赤い大きなバラや青紫の矢車草、
ピンクや白のサクラソウに黄色のマリーゴールドと
四季折々の花を見ながら道行く人とおしゃべりしていた。
道をはさんだ向かい側に車を停めている近くの病院の先生が
「ここだけフランスの家の庭みたいですね」
とお世辞を言ってくれたと嬉しそうに話していたっけ。
お姑さんが79ですい臓がんとわかった時には時すでに遅く末期状態。
インシュリン注射や抗がん剤治療の甲斐もなく、4カ月後に亡くなり、
じーさまはその後5、6年1人暮らし、入退院後は施設に入り91で亡くなった。
そのうち花も減り雑草が生えだすと、ダンナがマメに草ひきをしていた。
でも、主がいない家が建ったままというのは、あまりいいものではない。
どう処分するか迷った時、郵便受けに入っていたのが不動産業者のDMだった。
目に留まったのが毛筆の手書きで書かれた見覚えある名前。
「ん?」・・なんと、印象深い息子の幼な友だちの名前だった。
幼稚園の頃から目がくりくりして利発で活発だった彼。
5年生の時に転校してしまったけど、夏休みに泊まりに来たこともあった。
それ以来疎遠になっていたから、20数年ぶりだろうか。
会社のHPを見ると、手広く手堅く仕事をしているみたいで評判もよさそう。
やっぱり小さい頃からしっかりしていた子は違うよねー
30過ぎに独立して事務所を開き、結婚して4才と1才の子供がいるそうだ。
私を見て「思い出しました!」と人なつこい笑顔があの時のSくんのままだ。
スマートで落ち着いた、立派な社会人になっていた。
買ってくれそうな人の目星がついていたので、そちらを先に打診してもらった。
それは、フランスみたいなお庭だと褒めてくれた先生。
法事や、片付けや、解体するたびに駐車場をお借りしていたので
「先生、この土地買いませんか?」と厚かましくも聞いてみたら、
ニコッと笑って「検討しておきます」 おおいに脈ありと見たのだ😃
だから「売土地」の看板を立てることも、不動産のHPを作る手間もなく、
「何度か行き来するだけのご用聞きだったので楽な営業でした」と
仲介手数料も安くしてもらえた。
コロナ騒ぎで不景気感も日々増す中、「やっぱりやめた」と言われないか
ハラハラしていたけど、無事コトが済んで一安心。
これであと数年残った住宅ローンも一括返済できる。
解体費用を引けばトントンだけど、いや~これはありがたい!
墓前と仏前に線香立てて、両親に報告した。
あの先生が買ってくれたのなら、許してくれるよね・・