日本酒ピンバッジ倶楽部

2021年3月26日、関西に住む日本酒呑み仲間と「日本酒ピンバッジ倶楽部」を発足しました。

櫛羅 千代酒造㈱ 日本酒ピンバッジ

2021-03-02 12:25:29 | 奈良の酒

千代酒造の「櫛羅」です。

 蔵の周りの田んぼのお米だけでお酒を造ったら美味しい酒ができるのではないか?という興味が湧き、自社田で山田錦を栽培したところから『櫛羅』のお酒は始まったそうです。

 蔵は葛城山の山裾「櫛羅」の地にあり、この地の気候風土、砂質で肥料も水も抜けてしまう田圃で育つ山田錦、この地で汲み上げる井戸水を組み合わせて、この地ならではの味わいを大切にして醸されています。

「櫛羅」のピンバッジは、ボトルタイプで一目で「これは!」と感じますね。

「櫛羅(くじら)」という地名は難解地名として知られ、大阪府の最高峰「大和葛城山」標高959.2mの奈良県側にある葛城山ロープウェイ登山口駅から10分程の所に「櫛羅の滝」があります。

 そこに御所市観光協会設置の「櫛羅」の地名説話を紹介した説明板があり、「弘法大師がこの地を訪れ、天竺のクジラの滝によく似ているので、供尸羅(クジラ)と名づけた。 この供尸という字は「供に屍」と書くので良くないといって領主の永井信濃守が供尸の二字を櫛と改めたという。」とあります。

 また、櫛羅(くじら→くじく→くずれる)は窪地や崩れたをあらわす崩壊地名の説もあり、これは葛城山系の湧水や脆い花崗岩地質と「櫛羅の滝」周辺の崖崩れの痕跡などからもうかがえるようです。

 櫛羅の櫛(クシ)は奇、つまり霊異の力を表す古語で、羅(ラ)は接尾語とみると、霊異の神ということになり、櫛羅(クシラ)は鴨山口の神異を崇めた聖なる地、奇邑(くしむら)であるとされます。

 

 「櫛」には、「霊妙なこと、不思議なこと」という意味の「奇(くすし)」や「聖(くしび)」との音の共通性から、呪力を持つもの、魂の宿るもの、頭に飾るものであることから、自らの分身として旅立つ人に手渡す風習があったそうです。

 

 『古事記』には、伊邪那岐命が、妻の伊邪那美命が差し向けた黄泉醜女から逃れるために、櫛の歯を後ろに投げ捨て逃げることができたという記述があります。 同じ『古事記』には、大蛇退治に行く須佐之男命は櫛名田比売を櫛に変えて自分の髪に挿したとあります。

 天皇家では、斎宮として都を旅立つ皇族の少女を見送る儀式で、「別れの櫛」を手ずから髪に挿し、別れの言葉をかけました。斎宮は身内か天皇に不幸があるまで都に帰ることはできなかったのです。 櫛を挿す儀式には俗縁を断つという意味があり、逆に成人式に当たる「髪上げの儀」では、大人社会への仲間入りの象徴として櫛が少女の髪に挿されました。そして、この儀式の直後に婚礼を済ませることもあったそうです。

 

古来より「櫛」という名を持つ神々がいます。

倭大物主櫛甕魂命(三輪山の大物主・幸魂奇魂)

天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(饒速日命)

熊野大神櫛御気野命(素戔嗚尊と言われています)

櫛名田比売

いずれの神も高天ヶ原を追われたり、神武東征に敗れ国譲りしたり、朝廷に逆らった神々ですが、今では、立派なお社に祀られています。

 ひょっとすると、櫛羅の地は、人々と別れて鎮め祀られる地に向かう神々を安らかにお送りする地だったのかもしれませんね。

 この地で醸される酒「櫛羅」はそんな神々に捧げる酒であり、旅立つ人と交わす盃を満たす酒として最も適したお酒なのかもしれません。

 

 親父は、この四月に社会人となり独り立ちする娘に櫛を送る代わりに、「櫛羅」で乾杯しようと思うのです・・・。



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