早起きは三文の徳

善行

 善行と言っても鈴木善幸元首相ではない。つまらん上に、くだらん入りだったね。

 けさ、乗換駅のホームベンチに座っていると(いつもここでインターバルを取り、缶チューハイを飲む)、隣りに座った女のコが、バッグの中に入れたコンビニ袋の開け口に向けて、なにか吐いている。何度も。横目で見ていると、口を離すときには、粘液が垂れている。ヤバいんじゃないかと思っていると、立ち上がってフラフラ歩き始めた。そして突然、四つん這いに転んだ。

 ベンチには他にも人はいたし、都心の地下鉄駅だから往来もそれなりあるのに躓いただけとでも思ったのか、誰も関心を示さない。

 オレはさっきからの様子を知っていたので、ただごとではないと思い、駆け寄った。「大丈夫ですか? とりあえずベンチに座りましょう」。カオ中脂汗だ。「トイレに行きたいんです」。地下ホームにトイレはない。5m先にはエレベータがある。「あそこまで歩けますか?」首を横に振る。「駅員さん呼んでくるのでこのまま待っててください」と言って、たまたま電車が到着時刻だったのか、どっかから現れた駅員に事情を話した。若いヤツはすごくめんどくさそうな顔をして、ほかの駅員に電話していた。バカ丸出しのくせに「救急車はいらなそうです」とか、何も様子の確認もすることなく、本人の目の前でにニヤつきながらしゃべっていた。東京メトロの職員の質は相当低い。「ほかの駅員さん」が来るまで横に座っていた。すると、勤務先で隣に座る女が通りかかって、寄ってきた。チューハイの缶やばいと思いながら、両手で隠しながら経緯を話した。女は次の電車に乗った。

 駅員がなかなか来ないので、「どこから来たの?」。かなり遠いところだ。「どこまで行くの?」など、場繫ぎの会話をしていた。「大学生?」「中学生です」。これには驚いた。カオといい、スタイルといい全くそうは見えない。「◯◯までは何分くらいかかりますか?」と言うので、ホームの柱にある路線表を見に行って、「40分はかかるよ。何かに参加するの? ナントカフェスとか?」と言うと、小さくうなづいた。ごくフツーの服装だった。

 ようやく駅員が来て、車イスでエレベに乗った。「救急車レベルと思いますよ」とだけ言っといた。

 まずはホッとしていると、なんと、中学生は数分後に戻ってきて、また隣に座った。「大丈夫?」「なんとか、なりました。会社はいいんですか?」と心配してくれた。今はインターバルの缶チューハイタイムだからいいんだよ。

「次の電車乗るけど、気をつけてね」と言って席を立った。

 あのコはちゃんと”フェス”に行けたんだろうか。しかし、ホントにかわいかった。

 会社に行くと、隣の女が「さっきのこと、上司に報告しておきましたよ。遅刻すると悪いと思って」と言ってきた。気を使ってくれてありがとう。でも、その辺はどうでもいいんだけどね。缶チューハイ見てなければ。


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