ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/05/19 五月大歌舞伎・夜の部①「石川五右衛門」「京鹿子娘道成寺」

2006-05-29 23:55:56 | 観劇
5/14に昼の部を観てきたら、夜の部を俄然観たくなってきた。ところが予算内の三階席は発売直後に売切れである。そこでしつこくウェブ松竹をチェックして戻りを発見できたのを幸いにしっかりとGET!
1)「増補双級巴 石川五右衛門(ぞうほふたつどもえ いしかわごえもん)」
2001年7月歌舞伎座で猿之助一門の「楼門五三桐」を観ているので、あらすじもよく読まずに観たら人物設定などがけっこう違う。それもそのはずで、石川五右衛門を主人公にした浄瑠璃や歌舞伎作品は数多く作られていた。その数ある五右衛門の狂言のうちから面白い場面をつなぎ合わせたのが今回上演される『増補双級巴』ということだった。今回のあらすじは以下の通り。
石川五右衛門(吉右衛門)は実は大家の落胤だったが実母を殺した養父の次左衛門(段四郎)に育てられた。ところが奉公先から出奔して大盗賊になっていた。天下を盗み取る大望を抱き、呉羽中納言から詔勅を奪い取って偽の勅旨に化け、堂々と足利将軍家に乗り込む。そこへ現れたのは此下久吉(染五郎)。久吉は五右衛門を幼なじみで盗賊の配下で同輩だった友一と気づいて話しかける。二人が童心に帰って話をする(この場面は今回初めて観た)。金をやるから引き取れといっても引き下がらない五右衛門だが、久吉が売りたいといった葛籠に養父の次左衛門が入れられているのを見るとその葛籠をしょって妖術で館から飛び去っていく(猿之助の通し上演の時は二役でつとめた妹が葛籠に入っていた)。大詰めは豪華絢爛たる南禅寺山門での五右衛門の「絶景かな」の名文句や見得、久吉との対峙の末の絵面に決まっての見得で幕。

吉右衛門の五右衛門は公家姿や山門上での姿などもう本当にカッコいい。しか~し、空中に浮いた葛籠から五右衛門が飛び出す“つづら抜け”はヨっコラショッともたついた。猿之助が目にもとまらぬ鮮やかさで飛び出したことが印象に残っているのでどうしても比べてしまう。空中を悠々と引っ込む宙乗りというがその姿勢も何回か変えるのだけどどうも迫力があまりないのだった。4月中はジムで鍛えるときいていたが、団七でのぽっこりお腹といい、継続して鍛えていただくようにお願いしたい。

予想以上によかったのが久吉の染五郎。昨年8月歌舞伎座の「金閣寺」で観た久吉ではまだまだ線が細いなと思ったのだが、今回はなかなか堂々としていた。また、童心に帰る場面、並んで頬杖をついての見得ではなかなかほのぼのした感じが出ていてよかった。次左衛門に段四郎、足利家の重臣三好長慶に歌昇は手堅い感じだが、その弟国長の信二郎がまたいい役をつとめていてよかった。

2)「京鹿子娘道成寺」
東京では襲名披露公演以来14年振りに福助が道成寺を踊るということで、特に今回の趣向についての情報なしに観たのだが、まず所化さんたちが種太郎が一番年長というあまりにも小僧さん揃いなのに驚く。「道行」なし、花子が白拍子かどうかという問答もなし。だからいきなり紅白の幕が上がると烏帽子をつけた花子が舞台中央に登場というのも「そうか~お子ちゃまじゃ、あの問答できないもんなあ」と思いつつ物足りない。

いざ踊りが始まると福助が緊張した表情だし踊りもなんか硬いな~と驚く。「恋の手習い~」からのクドキに入るとやっと動きがよくなってきたのだが、ずっとなんでだろうと思ってしまった。

おっ、衣装が違うところがある!勘三郎襲名時や二月の「二人道成寺」では紫の麻模様だったところが鮮やかな青の桜模様。桜模様の連続にこだわられたのかなあと思った。
だんだんと本性が出てきて鐘に恨みの目を向けるが、うーん、女の目だ~。人間を超えていない。最後、鐘に上がってからも蛇になっていなかった。
「京鹿子“女”道成寺」っていう感じだった。どうも福助はあだっぽい女の役が一番ハマっているというイメージがある。白拍子花子にそのあだっぽさがあったわけではないが、歌舞伎舞踊屈指の大曲だけに、成駒屋の女方として一生懸命踊ってくれたのだろうけれど、まだまだ不安定なんだなあと感じてしまった。歌右衛門への道はまだまだ遠く厳しいようだ。

写真今回公演のチラシの写真を携帯のカメラで撮影。
夜の部②「松竹梅湯島掛額」の感想はこちら


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ハマルと… (かしまし娘)
2006-05-30 09:13:49
ぴかちゅう様、まいど!

五右衛門は、以前歌舞伎座で上演した時、宙乗りが出来ない日もあったとか。やはり難しい技術なんですね。

キングオモダカ(猿之助)のように、場慣れしてない所が、播磨屋のイイところ(笑)

中村福助にハマルとなかなかの底なし沼。

容易に抜け出すことは出来ませんです…。
さすがに見てらっしゃる~~♪ (かずりん)
2006-05-30 19:16:58
さすがに数見てらっしゃるだけあり、すごい~~!

いちいち頷きながら、そうなんだ~~と感心して

読ませていただきました。

私なんて、衣装と舞台と踊りに目が点!で

目!のことまで気が回らなかったです。

な~~るほどねぇ(・・しつこく感心)

終わっちゃったけど、もう一度見たかったです。

皆様TB、コメントありがとうm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-05-31 23:26:48
★かしまし娘さま

>以前歌舞伎座で上演した時、宙乗りが出来ない日もあったとか.....ええ~っ、そんな日はお客さんブーイングしないのかしら~。それとも幕切れでごめんなさいしたのかしら。うーん播磨屋さん、確かに腹筋が弱そうだからな~。

それと、福助丈が虎キチだからって喩えがすごすぎますよ~。ぎくっ、相通ずるものがあるから惹かれあっている?それは「不安定さ」!いい時と悪い時のゆらぎの大きさ!見ているこちらはハラハラドキドキ。これがアブナイ怪しい魅力なんですね~。

★かずりん様

>さすがに数見てらっしゃるだけあり.....そんなに観てないです。勘三郎襲名で一度、そのDVDで一度、玉三郎のTV録画で一度、2月の「二人道成寺」で一度の計4回だけです。

>「一番初めに見たものが・・・(ママ!)」状態.....って幸いかもしれないですよ。2月の「二人道成寺」の後に観たからなあ、不幸な私?

TBありがとうございます☆ (Ren)
2006-06-01 07:18:11
吉右衛門さまの五右衛門~大満足☆

たっぷりとしていてお見事でした。

名台詞や名場面が詰まった演目で

楽しませていただきました。

染五郎さまも美しくてよかったです☆
宙乗り! (お園)
2006-06-01 21:59:31
ぴかちゅう様はおもだかやの五右衛門宙乗りを

観たことがあるのですか~。

それは、比べてしまいそうですね。

吉右衛門、がんばってましたが、

たしかにちょっとモタモタした感じがありましたよね。

染五郎は確かにいい安定感でした!

もっともっと化けてほしいですね。
続・皆様TB、コメントありがとうm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-06-03 01:18:34
★「如意宝珠」のRenさま

吉右衛門の五右衛門、やっぱり見ごたえありました。そして次にいつ観られるかわからないですから観れてよかったですよ。今以上には身体の動きはよくならないだろうし、いい時に間に合ったというのが正直なところです。

★お園さま

そうなんです。猿之助が病気で出られなくなる前の数年を観ることができ、こちらも間に合った感が強いです。歌右衛門とか間に合ってませんから観たことない。

吉右衛門丈は慎重派だと思うのですが、後進育成の本腰をようやく入れてくれたのかなと思います。彼のような大御所が苦手の宙乗りや三枚目で頑張っている姿こそ若手にはいい刺激になるはずです。

染五郎は吉右衛門と仁左衛門にもっと鍛えてもらうと父上よりももっと芸幅の広い逸材に育つはずと期待しています。

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