ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/08/27 納涼歌舞伎千穐楽第三部②勘三郎四役奮闘の「怪談乳房榎」

2009-09-15 23:59:34 | 観劇

「怪談乳房榎」は、「怪談牡丹燈籠」と併録されているちくま文庫版のものを手に入れて読んであった。さらに中公文庫の『圓生人情噺』(上・中・下の3巻、絶版)の中にあったのも読んでいる。
しかしながら、落語の怪談噺とはずいぶんと変えてあるらしい。歌舞伎は歌舞伎として楽しんでしまおう。
8/27に納涼歌舞伎千穐楽観劇した日の簡単な記事はこちら

【怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき) 中村勘三郎四役早替りにて相勤め申し候】
公式サイトよりあらすじと主な配役を引用の上で修正加筆。
絵師菱川重信(勘三郎)には、美貌の妻お関(福助)と、生れたばかりの真与太郎がいる。偶然にお関と知り合い、ひと目惚れした浪人の磯貝浪江(橋之助)は、重信に弟子入り。重信はかねてから頼まれていた高田南蔵院の天井画を描くことを決める。依頼に来た千住茂左衛門(亀蔵)と万屋新兵衛(家橘)と共にその日のうちに出立し、下男の正助(勘三郎)も荷物を持って後から追いかけていく。お関とふたりきりになれた留守番の浪江は、早速に真与太郎を人質にお関をわがものにしてしまう。
天井画の完成が間近となったある日、浪江は正助を騙して義兄弟の杯を交わし、重信の侍時代の名を聞くと自分の親の敵だから一緒に敵討ちを手伝ってくれと強要し、その殺害を手伝わせる。途中、旧悪を知る旧臣の蟒三次(勘三郎)にその悪事を聞きつけられて強請られると、金を渡して正助の口封じを依頼する。
殺された重信は霊となり、住職雲海(彌十郎)らを伴って南蔵院の本堂に現れて画を完成させると姿を消してしまう。
悪業を隠してお関と夫婦になった浪江は、真与太郎を正助の親戚に預けるということにして棄てに行かせる。正助が四谷角筈十二社の滝壺へ真与太郎を投げ込むと、重信の幽霊が真与太郎を抱いて現れ、育てれば祟らないという。改心して重信の幽霊に誓うところを蟒三次が襲い掛かり、二人の死闘となる。霊の助力もあって三次が死に、正助は生き残り、育てていくと誓うところで幕。
勘三郎が菱川重信・下男正助・蟒三次と幕外で三遊亭圓朝になってという四役早替りの大奮闘。最後は圓朝が後日談を語り、勘三郎にもなって歌舞伎座さよなら公演への引き立ても願い上げるという幕切れ。

怪談噺が元とはいっても歌舞伎ではちっとも怖くない。もともと蟒三次という役も圓朝の口演にはなく、役者の早替りを楽しむ舞台になっている。実川延若が得意としたケレン味たっぷりの三役の早替りを勘三郎はしっかり継承したらしい。大汗をかきかきの大熱演の早替りはその都度、客席から感心の声が上がり、吹き替えの役者と変わるところがけっこうわかってもそれはそれとして連携の息が合っていることへの賞賛となる。文句なしの早替りだった。最後にもう一役加えての四役というのはちょっと安易な気がするが、まぁこれもありといったところか。

橋之助の浪江の色悪は本当に魅力的だし、福助が子どもを産んでさらに美しくなった若妻お関の雰囲気をよく出していて好演。この二人のからみはなかなか色っぽくて大好きだ。序幕で福助のお関が浪江と出会う前の茶店のところで茶店の娘役の小山三を誕生日ネタでいじっていたのもご愛嬌。小山三は雀右衛門と同い年ということだが本当に若い娘の役がよく似合うというのがすごいと今回も思ってしまった。

私は今回初見だが、外題の乳房榎に因むあたりが舞台で見られるという話を聞いていてそのあたりも楽しみにしていたのになかったことと、敵討ちの場面がなかったのはちょっと残念だった。まぁ、勘三郎は今回が最後かもということらしいので、若手が継承した舞台などで観ることができるのを楽しみにしておこう。

写真は歌舞伎座ロビーにあった納涼歌舞伎の「怪談乳房榎」の特別ポスターを携帯で撮影したもの。
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